第2話 世界を、そして自分を知ろう

 時は流れてはや3年。

 俺は3歳とは思えないほどに頭が発達していた。

 もうこの国の言語は話すだけでなく、ある程度は読めるようになり、この世界のことを調べられるようになった。


 まず、この世界のことを大雑把にいうと、異世界転生ではよくある、中世ぐらいのヨーロッパのような世界に、魔法が存在している。ついでに魔物も。

 剣と魔法のファンタジー世界だ。

 今いる国はアスラ王国という王国で、ライン帝国と小競り合いしてる感じらしい。


 うん、定石だね。


 ほかにも国はあるけど、そのうち紹介しようと思う。

 

 魔法に関してだが、適性は5段階らしい。前世の学校の評価みたいだ。

 俺は土の適性が2で、風の適性が5だから、土の魔法は苦手だけど、風の魔法はかなり得意らしい。

 使ってみようと思って、魔力とか感じようとしたら、普通にあった。

 試しに、そよ風が吹くイメージで魔力を放出しようとしたら、ちょっとだけ空気が動いて、俺は気絶した。

 3時間ぐらいで起きて、また使って、気絶して、また使って、と繰り返していたら、ちょっとだけ長い時間空気を動かせた。

 多分、使えば使うほど魔力量?は上がるってことだと思う。

 気絶するまで使うのは精神的にかなりきついが魔法を使うためには仕方ない。

 まあ、こっちは毎日練習するとして、一番気になっていたものについてだ。


 あのステータス画面の「概念」とかいうやつ。

 これは、簡単に言うと固有能力みたいなものらしい。

 生まれつき決まっていて、持っている人はあまりいないレアなものだ。

 具体的な数字はわからないが、歴史に名を遺す魔術師の中でもあまり概念持ちはいなかった。

 「概念」というからには、その概念の範疇で何かができるとか、やりやすくなるとかなんだろうな~と思っていたら、歴史上の魔術師は、普通にその概念の範疇で魔術とは全く別の力を使っていたらしい。全員、自分の「概念」の範疇で思いついた力をオリジナルの魔法っぽい感じで使っていたそうだ。


 つまり俺は、思いつくものすべてを偽れるということか?

 まあでも、歴史上の魔術師はその力を使うのに魔力が必要だったっぽいから、空気をちょこっと動かしただけで気絶する俺が使える魔術なんて、たかが知れてる。

 ちなみに、あのステータス画面は他の人には無いらしい。

 転生の特権的なやつかな?


 「とりあえずのことはわかったし、鍛錬でもしますか。」



 ♢ ♢ ♢



 現在3歳の俺のルーティンはこんな感じだ。


 1.目覚めてご飯を食べる

 2.家にある本を読む

 3.筋トレする

 4.概念を考える

 5.魔術(概念)を考える。


 こんなにやってる3歳児はなかなかいないだろう。

 両親も俺が3歳でまともに喋れて字も読めるのに驚いて後ずさってたし。

 まあ、こんな3歳児がいたら普通に気持ち悪いか。

 それでも、早く派手な魔法を使いたくて懸命に鍛錬する。


 ちなみに、今は剣を振っている。父さんがそれなりに剣を使えるらしくて、見様見真似でやってたら、危ないからやめなさい、て言われた。

 それでも剣を振っていたもんだから、父さんも諦めて簡単なことから教えてくれるようになった。

 俺はしゃべれるようになってから母さんに文字を教えてもらって、自分で読めるようになってからは、家の本を片っ端から読み漁り、母さんや父さんに聞きながら、知識を増やしていった。

 父さん的には、剣よりも勉強をしてほしかったみたいだが、なんだかんだ嬉しそうに教えてくれる。

 前世と違って、魔物が蔓延るこの世界では、武力は必要だった。

 そういうことも考えて、母さんはやりたいことは全肯定してくれた。

 母さんは元学者で、魔法についてもかなり知識を持っているので、派手な魔法への道はだいぶ近くなったと思う。

 家は貴族ではないがそれなりに裕福であり、生きるのにあまり苦労はしなかった。

 それでも、魔物の発生はよく聞くし、ほとんどの所は治安が悪いので、まったく外には出してくれなかった。


 まあ、家でもまだまだ読み終わってない本はあるし、魔力量は増えてきたっぽいけど人に知られたら面倒そうだし、しばらくは家で我慢しよう。


 「そろそろ魔物とか見てみたいな~」



 ♢ ♢ ♢



 今日は、久しぶりに家を出て街を歩けた。もちろん、両親と手をつないで。

 今住んでいる町は、王都から少し離れてはいるが、それなりに人口が多く、裕福な人も多く暮らしてる。

 表立っては治安がいい方の町だろう。

 結構屋台とかもあって、とても美味しそうな匂いがする。

 とびきり食欲をそそる串焼きみたいなのを見てたら、父さんが買ってくれた。


 なんて家族に恵まれたんだろう。


 そんなことを思いながら食べていると、すぐ横の路地裏に続いていそうな細い道に、小さな銀髪の少女が立っていた。

 ボロっぽいフードをしていて、顔は全く見えなかったが、俺が食べているのをじっと見つめていたので、それを差し出した。


 「食べかけだけど、いる?」


 少女は一瞬目を見張り、手を伸ばしかけたが、すぐ引っ込めて首を振った。

 そのとき、俺は少女が自分の気持ちを偽っているのがわかった。

 いや、確信を持てた。

 単純に、行動とか、表情とかからのものではない。まるで、五感のように、自然と、当たり前に分かったのだ。

 変な違和感があるが、こうしていては俺が不格好なので、無理やり押し付けて、さっさと両親の元へ戻った。

 振り返ってみると、もう、そこには少女はいなかった。

 両親には、一応、褒められはしたし、人を助けるんだぞ、と笑顔で言われたが。

 しかし、このときも、両親が自身の気持ちを偽っているのが分かった。


 「これは、概念の力なのか、いや、俺の洞察力がすごいのか」


 このときにも、偽っていることが分かった。


 「自分で自分の偽りに気づくってなんだよ. . . . . .」

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