偽りの魔術師

メチル

幼年期

第1話 転生


 ザ―――――


 何も聞こえない。


 ザ―――――


 いや、何か聞こえる。これは雨?


 ザ―――――   ピキッ


 そのとき、激痛が走った。


 「おギャーーーーー!!!」


 赤ん坊の泣き声が聞こえた気がするが、そんなのはどうでもいいぐらいに痛い。とにかく痛い。叫ぶのは抑えられないぐらいに。


 「おギャーーーーー!!!」



 ♢ ♢ ♢



 一旦整理しよう。

 とりあえず覚えているところから思い出す。


 俺は、いつも通りに友人に会いに家を出た。

 その友人とは高校からの付き合いだが、それなりに家が近く、あまり友人の少ない俺にとっては一番仲が良かったと思う。

 その友人は友達が多く、人当たりのいい奴だと思っていた。まあ、たまに金欠がどうのこうのと言ってくるから、金を貸してやったことは何回かあり、いつかはちゃんと返してくれると思っていた。ちなみに俺はそこそこ稼いでいたから、生活に困るほどではなかった。

 頑張って買った車に乗り、友人を迎えに行くと、そこには彼女がいた。

俺が最近仲良くなれた人だ。車を買ったのも、彼女や友人とのこういった時間を楽しみたかったためであった。

 その日は、普段はあまり行かない山に行き、キャンプをする予定だった。

 車を降りて、落ちるとかなり危険な崖のような急斜面を見ながら歩いていると、彼女に車のカギを貸してほしいと言われた。忘れ物をしてしまったらしい。

 一緒に戻ろうと思ったが、すぐに取りに行くというし、友人も急斜面を見ながら待っているというので、待つことにした。

 そして、急斜面を再度、注意しつつ深めにのぞき込む。


 ドンッ


 背中に強い衝撃を受け、斜面のほうへ落ちていく。


 後ろをとっさに振り返ったとき、友人がにやりと笑うのが見えた。

 そして悟った。


 自分は騙されたのだと。


 俺の車を手に入れるために、俺を突き落としたのだと。


 車の中には貴重品が入っており、金に目をつけていたのだろう。


 そう思ったころには、強い衝撃と共に、目の前が真っ暗になった。


 ああ、俺、死んだのか。


 などと思っていると、気づけばさっきの激痛。

 それで何とか耐え抜いて今に至る。


 うん、訳わからない。


 まあ、しゃべろうとしたら、「おぎゃー」とか「うあー」とかいう声が出るし、目が見えないし、触ってくる誰かの手が異常に大きいことから考えて、自分は赤ん坊に転生したのだろうということはわかった。

 転生なんて信じられないが、多分当たっているだろう。

 それともう一つ不思議なことがあった。

 それは、目の前にある画面。所謂ステータス画面だ。


 え、さっき目が見えてないって言ったじゃん、と突っ込まれそうだが、実際に見えているわけではなく、真っ暗な中に浮かび上がる感じでわかるのだ。

 そこにはこう書かれていた。


 名前;ノール・リューゲ

 年齢:0歳

 Lv:1

 適正

  火:4

  水:3

  風:5

  土:2


 概念:偽り



 俺の名前はノール・リューゲというらしい。覚えておこう。

 思った通り、年齢が0歳だ。つまり、転生したってことがはっきりした。

 Lvが存在しているし、適性の欄からみて、前世でよく見た異世界転生って奴だろう。

 この適正は、5までしかないが、どうなんだろうか。まあ、魔法が使えるなら、かなり楽しみだ。

 問題は、この「概念」とかいうやつ。全く見当がつかないが、「偽り」という言葉はとても引っかかる。

 前世ではさっき言った通り裏切られて死んだからだ。

 俺は、前世の友人だった奴みたいに噓つきの最低な奴になってしまうのか。

 そう思うと、虫唾が走る。

 とにかく、これのことを調べようと思う。


 「. . . . . . うあー」


 いつになったら目が開くのだろう. . . . . .




――――あとがき――――


 読んで下さりありがとうございます。

 紹介文でも書いたようによくある感じのやつです。

 次回はこの世界の説明がメインで、ストーリーが動くのは4話ぐらいからだと思います。

 もし気に入っていただけたなら、今後も読んでいただけると嬉しいです。

 よろしければ、他の作品もご覧ください。

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