第16話
ああ、このまま負けてしまうのか。やっぱり僕たちには零を倒すことはできなかったのか...
頭の中に絶望が満ちていき、足は鉛のように重くなった。視界が揺れ、世界がどんどん遠ざかっていくような感覚に陥る。周りにいる仲間がまるで赤の他人のように聞こえた。
僕は上の空になった。
だが、それでも——僕は諦めない。
心のどこかで、まだ抗う気持ちが残っていた。
冷たい感覚を振り払い、意識を集中させる。再び能力を発動させようと指を動かそうとするが、制約を受けて目から血が流れる。
「...!」
目の奥が鋭い痛みに襲われ、視界が一瞬暗くなる。しかし、力を振り絞り、意志を燃やして立ち向かう。仲間たちのため、葵のために、今こそもう一度能力を使わなければならない。
心の中で、仲間たちの顔を思い浮かべる。彼らの笑顔、戦った日々、そして今この瞬間。絶対に負けられないという強い思いが、痛みを上回った。
「戻れ!」
叫び声と共に、指を勢いよく振って能力を発動させる。その瞬間、周囲の空気が震え、まるで時間が止まったかのように感じた。
仲間たちの意志が、僕に力を与えてくれる。もう一度、全てを巻き戻し、彼らを取り戻すために。この痛みを乗り越えて、必ず零を倒してみせる。
その瞬間、再び時間が流れ始め、仲間たちの目に光が戻ってくる。僕はその流れに乗り、もう一度立ち上がる。全てはここから始まる。しかし、これを逃せばもうチャンスはない。
僕は後ろから迫ってくる長い剣を再び避けた。「ここまで戻れたか」と心の中でつぶやき、零が動揺している一瞬の隙を見逃さず、彼の背後に素早く回り込む。
瞬時に手を伸ばし、波動を生み出すと、視界が閃光に包まれ、周囲の空気が震えながら波紋のように広がっていく。零の体に直撃したその力に、彼は驚愕の表情を浮かべ、まるで嵐の中の葉のように吹き飛ばされていった。
零は奥にあった建物の壁に叩きつけられたが、体勢を立て直すことなく、落ち着いた表情で手を僕に向けて構えた。次の瞬間、彼の掌から波動が放たれ、空気が震えるほどの衝撃が僕に襲いかかる。
だが、僕もすぐに全身の力を込め、零の波動に対抗するように自分の波動を放つ。
二つの力が空中で激突し、激しい衝撃波が周囲に広がる。地面は割れ、爆発したかのように砂ぼこりが舞い上がった。静寂が広がる中、その場の空気が一瞬だけ張り詰める。しかし、砂煙の中から低い笑い声が響き渡り、薄く笑みを浮かべた零の姿が現れる。
彼は無造作に肩の砂を払い、その銀色の瞳で僕をじっと見据える。
「なかなかやるじゃないか、人間。」
零の口元に浮かんだ笑みは、余裕と挑発が入り混じっていたように見えた。そしてそれはまるでこの戦いを楽しんでいるようだった。
「だが、勝負はすでに決まっている。お前の足掻きも、無駄に過ぎん。」
その冷ややかな声は、戦場の冷たい風のように心を切り裂く。
「それはこっちのセリフだ、零。」
僕は彼の言葉を無視し、静かに返す。
「ふっ...好きに言ってろ。」
零は楽しげに鼻で笑い、再び構えを取りながら言った。
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