第9話
二人で歩いていると突然、肆が異変に気が付いた。
「ん...??」
肆が小さく呟いた瞬間、周囲の空気が微かに変わった。
何かが迫っている... そんな感覚が僕を覆った。
辺りは異常な静けさに包まれ、遠くから重々しい鐘の音がかすかに聞こえてきた。
「肆、何かおかしいぞ…」
その言葉を口にした瞬間、突然——カン! 甲高い音が響き渡り、天地がひっくり返るように視界が歪んだ。
気づいたとき、僕たちは裁判所のような場所に立っていた。
瞬間的に周囲を見回すと、圧倒的な威圧感を放つ巨大な石柱が立ち並び、空はどんよりとした灰色の雲に覆われている。壁には無数の目がこちらを見下ろしているような彫刻が施され、不気味な雰囲気を漂わせていた。
肆も僕の隣で目を見開いていた。
「ここはまさか...裁判所...?」
カン!
再びガベルの音が鳴り響く。前に見える裁判官席には、一人の男が僕たちを見下ろしていた。彼の目は血のように赤く、光を反射している。そして、それはまるでその視線が僕の心の奥を突き刺すかのようだった。
「ようこそ、ろん。そして、肆。いい雰囲気のところ申し訳ないが、これから罪人であるろんの罪刑を決める裁判を開始する。」
弐は静かに、しかし重みのある声で言い放った。
僕の心臓は鼓動を速めた。
その者の声には冷たさが宿り、圧倒的な権威を感じさせる。
彼の目は僕たちに向けられ、まるでその視線が内面を透かし見ているかのようだった。
「どういうつもりかな、弐。」
肆は真剣に、そして怒りの感情を込めてその疑問を彼に投げかけた。
弐...今まで会ってきた神の中で最も強いはずだ。それは、この場に足を踏み入れた瞬間から感じ取れる圧倒的な雰囲気で確信に変わっていた。
「ろん、下がってて。」
彼女にそう言われて僕は彼女の手を放して、後ろに下がる。
今更なんだが、肆の能力はなんなんだろうか。参の能力は重力を操るっていうものだったので、肆の能力はそれより下なのか?いや、そもそも神の強さは能力の強さで決まるものなのだろうか。
わからない。何もかも。
でも、今は彼女に頼ってみよう。
「肆よ、ここでは一切の能力の行使は禁じられている。私もお前たちもだ。」
彼は冷徹な言葉を口にした。
「知らないわよ!」
肆は怒りをぶつけるように前に進み、彼に向かって左手を添えた手をかざした。
すると彼女の手の周りに緑色をしたエネルギーらしきものが集まり、瞬間的に空気が震えた。
だが、それらは一瞬で消え去った。まるで彼女の力が吸い込まれるかのように、何も起こらなかった。
「なっ...?!」
肆は驚きの声を上げ、自分の手を見つめた。何度も力を込めようとするが、反応はない。彼女の能力が、まるで無かったかのように封じられていた。
「ここでは、一切の能力の行使は許可されていない。」
弐の赤い瞳が僕たちを冷たく見下ろし、彼の圧倒的な支配感がその場を支配していた。
「それではこれより裁判を開始する。」
弐は冷静にそう言い放った。
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