第19話 《翻訳》 ルーシーとの会話


 翌日、十分な睡眠をとったカエデは、ヤマトとルーシーがいる隣の部屋に来ていた。


 「大和さーん、ルーシーちゃーん。おはようございまーす。」


 「おはよう。」「ーーーーーーーー。」


 「大和さん、凄く眠そうですね。」


 「ああ。もう少しで【はいしん】の能力が解放されそうなんだ。もうちょっと待っててもらってもいいか?」


 「ええ、もちろん大丈夫です。」


 ギルマスから呼び出しを受けていたが、夕方くらいまでなら大丈夫だと聞いていたので、しばらく待つことにした。


 「ちなみに、何を見てるんですか?」


 「Dチューブの翻訳機能を触っているんだ。コメントと字幕、音声翻訳を触っているとスキルの能力が上がっていくような感覚がするんだ。」


 と言いながら、大和は空中をタッチしていた。


 「あれ、スマホからじゃなくても操作できるんですか?」


 「ああ、気づいたら空中に画面が表示されるようになってたんだ。それと、こっちにはカメラもいるぞ。」


 大和はが指し示した方向を見ると、空中に羽の生えたカメラが出現した。


 「あれ、ダンジョンに潜ってる最中にカメラなんかありましたっけ?」


 「それが、このカメラは透明にもなるんだ。」


 「なるほど。それなら、モンスターにも狙われなくて安心ですね。」


 「じゃあ、翻訳を使ってみるから、そこで待っててくれ。」


 「分かりました。」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 「あっ!」


 しばらく待っていると、突然大和が大声を上げた。



 「どうしたんですか?大和さん。」


 「ようやくスキルの能力が解放されたみたいだ。」


 「早いですね。 やっぱり、地上でもずっと使い続けられるスキルはいいですね。 ちなみに、どんな能力なんですか?」


 「翻訳だ。」


 「えっ、翻訳? それなら、今でもDチューブを使って出来るじゃないですか。 ハズレ能力ですかね。」


 「いや、これは今一番欲しかった能力だ。 ルーシーの言葉も翻訳できるかもしれない。実は、昨晩ルーシーの動画を撮影して、Dチューブの翻訳機能を使ったんだが、どの言語にも当てはまらなかったんだ。」


 「という事は、やっぱりルーシーちゃんは地球以外からやってきたってことですかね?」


 「それは、今から本人に聞いてみるしかないな。」


 「緊張してきました。ルーシーちゃんの言葉が分かれば良いんですけど…。」




 大和は、緊張をほぐすように、息を吐いてからスキルの能力を発動した。


  《翻訳発動!》


 『ルーシー。俺の言葉が分かるか?』


 すると、ルーシーは驚いた様子でこう言った。



 『あ、あなたが何て言ってるか分かるようになったわ。どうして?』


 『おおっ、翻訳成功だ! ルーシー。これは、君も持っているスキル【はいしん】の能力だ。』


 『なんですって!? 【はいしん】ってそんな能力だったのね。』


 『その様子だと、やはり知らなかったようだな。』


 俺がルーシーと話していると、カエデは頭に?を浮かべながらこう言った。


 「あのー、大和さん。私にはルーシーちゃんの言葉が分からないんですが?」


 「そうなのか。それなら...」

『ルーシー。【はいしん】というのは、俺たちの現在の様子を他者にも見ることが出来るようにするスキルなんだ。それだけじゃなく、翻訳という能力で、他の言語も話るようになるみたいだ。使えるか試してくれ。』


 『分かったわ。試してみる。』



 「大和さん。なんて言ったんですか?」


 「【はいしん】の効果と翻訳について説明した。スキルの能力を開放するには、まずどんな能力があるかを知っていると習得する時間が早くなると聞いたからな。」


 「そうですね。昔からある方法ですね。」


 そうして、しばらくするとルーシーが話始めた。



 『あ、あ、あー。聞こえているかしら。』


 「大丈夫だ。聞こえているよ。」


 「あれ、思ってたよりお上品な話し方ですね…。」


 『なによカエデ。今はこんな見た目だけど、本当は立派な大人なんだから。』


 「ぷっ。なんだか背伸びしている女の子みたいで可愛いです。よーし、ナデナデ…。」


 『やめなさい! 私は大人なんだから…。あっ、やっぱりこれ気持ちいかも…。って、そうじゃないわ! ヤマトもカエデも私を子ども扱いして~!』


 「一瞬、撫でられて気持ちよさそうにしてましたね。かわいい~。」


 「カエデちゃん。これでもルーシーは、もともと俺と同じくらいの身長の女性だったんだぞ。 まあ、今は子供っぽくて可愛いのは認めるが。」


 『やっぱり、ヤマトも私を子ども扱いしてるんじゃない! も~!』


 「すまない。この話は置いといて、君に聞きたいことがあるんだ。」


 『ふーっ。そうね。私の方からも聞きたいことがあったのよ。ここって何所なの? 私はミンサヒール王国のダンジョンに潜っていたはずなのだけど...。』






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