第18話 ダンジョン周辺街
宿に泊まった翌日、俺達3人はギルドカードを受け取りに、受付カウンターに来ていた。
「はい、これでギルドカードに関する説明は以上です。大和さんが持っている旧ギルドカードは、こちらで処分させていただきますね。」
「よろしく頼む。」
俺は受付嬢の由香里さんにカードを渡した。
「そういえばカエデさん。ダンジョン素材の換金はされていきますか?昨日は忙しくてそれどころじゃなさそうでしたけど。」
「あっ、忘れてました。じゃあ、お願いします。」
そう言いながら、水龍の素材などを取り出し始めた。
「大量ですね。すべて換金しますか?」
「いえ、これとこの素材は武器強化に使うので、解体場についていきたいです。」
「分かりました。では、解体の山室さんを呼んできますね。」
由香里さんはそう言って、奥の方に走っていった。
「なあ、カエデ。武器の強化って何なんだ?私がダンジョンに潜る前は聞いたことなかったんだが?」
「あっ、大和さんの時代は未だなかったんでしたっけ。簡単に言うと、モンスターの素材で武器の攻撃力を高めたりできます。そして、これはミスリルと言って、武器の強度を上げるだけじゃなく、スキルオーブと組み合わせれば、スキルを持った武器を生み出せます。」
「えええっ。スキルオーブってそうやって使うのか! 1個食べてしまったよ。」
「ふふっ、もったいないことをしてしまいましたね。でも、最初のころは大和さんのように、食べた人もいるみたいですが、人間には効果はありません。あっても、魔力が回復するだけですね。」
「そうなのか、スキルオーブって滅多に見つからないんだよな~。」
「そうですね。それに、スキルオーブは普通の武器に付与すると武器の強度では耐えられないので、ミスリルやオリハルコンに付与しないと使えないんです。」
「なるほど。ちなみに、どうやって付与するんだ?」
「やり方はよく分かりませんが、武器ショップに持っていくと強化や付与をしてくれます。ちなみに、結構時間がかかるので、その間はダンジョンに潜らずに地上で休暇を取るのが一般的ですね。」
「という事は、ダンジョンのもっと先に進むためには、武器強化をやっていかないといけないな。」
「そうですね。他の地底人(地上に戻らずダンジョンに数年間潜り続けている人)の方たちも、武器強化を知らなくてずっとダンジョンに潜り続けてたらしいんですけど、今ではほとんどの人がダンジョンと地上を行き来してるみたいです。」
「そうなると、今までモンスターの素材を集めてこなかったことが悔しいな。肉以外は使い道がないから捨ててしまったんだ。」
「それも、地底人の方たちに共通しているみたいですね。昨日由香里さんからもらった指導マニュアルに書いてました。」
そうやって、2人が話していると、由香里さんがやってきた。
「大変お待たせしました。準備が出来ましたので、こちらについてきてください。」
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解体場に行くと、50歳くらいの筋肉質の男性が工業用ノコギリのようなものの前で待っていた。
「お久しぶりです。山室さん。」
「久しぶりじゃねえか。カエデの嬢ちゃん。 今回も水龍だって?」
「はい。これなんですけど…。」
そう言って、アイテムボックスから再び取り出した。
「おっ!? なかなか綺麗に解体してるじゃないか。 あとは、ちょっとカットするだけで済むな。 それにしても、解体の練習でもしたのかい?」
「いえ、私じゃなくて、こちらの大和さんがやってくれたんですよ。」
「そちらの色っぽいお姉さんがかい? そういえば、やっとパーティーを組んだのかい?」
そう聞かれて、カエデではなく大和が答えた。
「はじめまして。私は吉村大和。 モンスターの解体はスキルで大雑把には出来るんだ。 ちなみに、まだカエデとはパーティーを組んではいないが、相性はいいんじゃないかと思ってる。」
「なるほど、スキルか…。かなりいい筋をしている…。もしよかったら時間のある時に見学に来ないか? もう少し学んだら、解体だけじゃなくて、モンスターとの戦闘にも応用できると思うぜ。 これでもワシは元探索者だったからな。」
「ありがたい提案だな。ダンジョンの攻略のためにもぜひ学ばせて欲しい。」
「だったら、俺はいつもここにいるから、また来るといい。」
そうして、解体が完了した後、大和達は服を購入しに行くのであった。
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服屋さんから出てきた大和達は、かなり疲れた様子だった。
「あ~。これからはブラジャーをしないといけないのか。まあ、地上に帰る途中は動きにくかったから、強くなるためだと思えば仕方ない。」
「そうですよ。それから、次はスカートにも慣れていきましょうね~。」
「カエデ。 おまえ、私を着せ替え人形にして楽しんでるんじゃないか?」
「そんなことありませんよ。これも強くなるためには必要なことです。ルーシーちゃんもそう思うよね~。」
カエデはそう言って、スカートを着せられたルーシーの頭をナデナデしはじめた。
「ーーーーーーーーーー!」
「そういえば、ルーシーちゃんに言葉を教えないといけませんね。しかし、今は何語を話してるんでしょうか?」
「少なくとも、英語や中国語ではなさそうだが、少しづつ覚えてもらうしかないかもな。もし、ルーシーと話せたら、【はいしん】のことも教えてもらえるかもしれない。」
「そういえば、ルーシーちゃんも【はいしん】スキルを持っていたんでしたっけ。」
「ああ、そうなんだよ。じゃあ、夕飯も食べたし、今日は宿に帰ってからDチューブのことを教えてもらってもいいか?」
「分かりました。そういえば、コメント欄も解放しておいたので、そろそろ何個かコメントが来てるかもしれません。 まずは、読み方から教えていきます。」
「よろしく頼む。」
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「大和さーん! アーカイブの再生回数が凄いことになってます!」
「アーカイブってなんだ?」
「ライブ配信後に、動画として保存された物のことをアーカイブっていうんです。それだけじゃありません。どうやら、海外からも見に来ているみたいです。」
「海外からも見れるのか。インターネットって凄いんだな。 ちなみに、どうやって海外から見てるって分かったんだ?」
「それは、ここを見てください。 このコメント欄に英語でコメントが来てます。」
「なるほど。日本語のコメントも多いな。」
「日本語では、当たり前ですけど、本当に配信なのかっていう疑問の声と大和さんとルーシーちゃんについてのコメントが多いですね。 それと、海外のコメントは…。どこの映像制作会社なのかっていうコメントが多いみたいです。」
「えっ、カエデは英語が読めるのか?」
「いえいえ。全然読めませんよ。実は、Dチューブには翻訳機能って言うのがあるんです。」
「Dチューブってすごいんだな!」
「コメントの翻訳だけじゃなくて、翻訳した字幕を自動生成してくれますし、最近ではさらに技術が進んで、音声を自動翻訳までしてくれます。だから、いろんな国の動画を言語の障壁なく楽しむことが出来るんです。」
「そんなことまで出来るのか。現代はすごく面白そうなもので溢れているな。俺がダンジョンに潜る前とは大違いだ。」
「大和さん。俺って言うのは、私といるときだけにしてくださいね。 それと、今度ダンジョン周辺だけじゃなくて、他の街にも行ってみましょう! 食べ物なんかも美味しくなってると思いますよ。」
「それは楽しみだな。武器強化以外にも地上とダンジョン周辺を往復する理由がどんどん増えていくな…。」
「ふふっ。楽しみにしてください。では、私はそろそろ寝ますね。」
「あっ、待ってくれ。最後にコメント欄の操作方法を教えてもらっていいか? 寝る前に読んでおきたいんだ。 それと、コメント翻訳の仕方も教えてくれ。」
「はい。分かりました!」
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