第2話 ユニークモンスターとの戦闘


 (初めて遭遇するモンスターとの戦闘だ。)


 アイテムボックスから刀を取り出した。


 相手を正面にとらえながら、距離を保ち、相手を観察する。



 (俺の腕を切断した爪と、尻尾に注意しないといけないな・・・。)


 そう考えながら、スキルを発動する。


 俺の特殊スキルは、【マッサージ】。


 一見、戦闘向きのスキルではないように思うかもしれないスキルの練度を高めていくことで、戦闘向きの能力を開花させていた。


 スキル【マッサージ】の能力の1つが、《ツボ可視化》である。


 その効果は、人やモンスターなどの様々な物のツボを見ることが出来るというものだ。


 そして、この能力では疲労緩和のツボだけでなく、相手の弱点のツボを見ることが可能だ。


 この能力を活かして、俺はモンスターと戦っている。



 —《ツボ可視化》


 能力を発動すると、黒い瞳が紅く光りだした。


 (こいつの弱点は・・・。まあ、想像通り頭と尻尾だな。)


「グルアアアア」


 相手の一撃が致命傷になると考え、警戒しながら観察し、相手が攻撃してくるまで待つことにした。


 相手はしびれを切らし、一直線に襲い掛かってくる。



 「っ!?」


 俺は、モンスターの突進を横に飛び避けた。



 「想像以上のスピードだな。それに、足音がほとんどしないから、反応するのが難しい。」


 突進を避けられたモンスターは、大和に対する警戒心を一層強くしているように見えた。


 そして、大和を中心に円を描くように走り出し、隙を伺うようにしていた。



 「こいつ、頭がいいな。正面からの攻撃が通用しなかったから、学習しているようだ。」



 —グルアアアア!


 俺の視界の左側から、再び正面から突進してきた。


 (いまだ!)


 爪での攻撃を避けながら、相手のスピードを利用し首を刀で跳ね飛ばした。


 (やったぞ!)



 スキルのおかげで正確な一刀を繰り出すことに成功した。


 その瞬間だった。



 「うっ!?」


 蛇のような形をした尻尾が、大和の右腕に噛みついてきたのであった。


 噛みつかれたまま地面を引きずられ、壁に投げつけられた。


 右腕はボロボロの状態で、体の全身に痛みを感じたが、即座に体制を立て直し2つ目のポーションを使った。



 「こいつ・・・。 首を切り落としても、ピンピンしているな。」


 大和の正面には、首が無くなったことなど意に介さず、蛇の尻尾をこちらに向けて警戒しているモンスターの様子が見えた。



 「しかし、尻尾さえ切り落とせば何とかなりそうだ。」


 そう呟きながら、次の行動を考える。



 —グルアアアア!


 距離は離れていたが、視界の右側から伸びてきた尻尾が襲い掛かってきた。



 (こんなところまで届くのか!)


 なんとか下にしゃがみながら避けて、鵺の方に目掛けて走り出した。



 —ズザザザザ!


 もう一度尻尾での攻撃が大和を襲うが、相手の足元にスライディングしして潜り込むことに成功した。


 そして、通り過ぎた瞬間に立ち上がり、下から尻尾を切り飛ばした。



 —ドスン!


 すると、モンスターの体は横に倒れ、動かなくなった。


 そして、見たことのないアイテムをドロップした。



 「なんだ、これは? 金色の天秤てんびんか?」


 そう呟いて、鑑定用の眼鏡を取り出そうとした瞬間だった。



 「————————。」


 戦闘中は気づかなかったが、まだ女の子の声が聞こえていた。



 (かなり近いな。先にあちらに行ってみよう。)


 いつもの俺ならアイテムを鑑定してから一息ついて、自身の負傷具合を確かめていたのだろう。


 なんせ、蛇のような尻尾に噛まれたのだから、毒の心配をするのが普通だろう。


 しかし、この時の俺は、頭に直接声が響くという現象への好奇心が勝ち、少女の声がする方へと歩き出した。




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