最終話:イヴのプレセントは、この私。
朝、起きてから真白もゼゼットも一言も口をきかなかった。
そして真白はゼゼットを無視したまま学校へ出かけて行った。
天界に帰っていくゼゼットを見送りもしないまま・・・。
ゼゼットは真白の気持ちが痛いほど分かっていたので何も言わなかった。
そしてついに神様が、この間のように神谷家にやってきた。
「巫菜女ちゃん・・・お世話になりました」
「おいしいご飯もありがとう」
「今日まで楽しかったよ・・・ほんとにありがとう」
「元気でね、またいつでも遊びにいらっしゃい」
「真白とはいいお友達でいてやってね」
「巫菜女ちゃんも元気でね」
ゼゼットは巫菜女ちゃんにお礼を言って真白じゃなく巫菜女ちゃんに
見送られながら神様と出て行った。
ゼゼットは結局、神様に連れられて天界に帰って行った。
真白はぽっかりと心に穴が開いたようだった。
(あの図書室での出会いから今日まであったことはなんだったんだろう)
(俺は夢を見てたんだろうか?)
なにもかも終わってしまえば一瞬の出来事のように思えた。
ゼゼットの存在自体、幻のようだった。
真白は男だけど、それほど打たれ強いほうじゃなかった。
授業も耳に入らずゼゼットのことを思ってため息ばかりついていた。
多分、このままだと真白はゼゼットと失った痛手がトラウマになって
ゼゼットロスで苦しんだだろう。
その心の傷をうめる手だては見つからないまま・・・。
ゼゼットが去ってから一週間が過ぎた。
そして今日はクリスマスイヴ。
ゼゼットのいない、恋人のいないイヴ。
イヴだって言うのに好きな彼女とも一緒に過ごせないのか・・・。
放課後、真白は学校の図書室にいた。
ゼゼットと初めて出会った、この図書室。
もしかしたら、またゼゼットがどこかから落ちてくるんじゃないかと
期待した。
でも何分待っても何時間そこにいてもそんなことは起こらなかった。
真白は広い図書室を見渡して、ひとつため息をついた。
そして、諦めて図書室から出て行こうとした。
するとその時だった。
後ろから声がした。
「マー君・・・」
そう聞こえた気がして真白は足を止めた。
たしかに、そら耳じゃなくマー君って呼ばれた気がした。
真白は、まさかと思って後ろを振り向いた。
するとそこに、なんと白いサンタの衣装を着たゼゼットが立っていた。
「ゼゼット?まさか?・・・どうして・・・?」
「どうして私がここに、いるのかって?」
「それがね、神様がね、ゼゼットが一度天界へかえって来た時点で私の
汚点は払拭された・・・だからもう君は自由だって・・・」
「自分の好きなところへ行きなさいって、神様が・・・」
「だから迷わず戻ってきちゃった・・・」
「でも、よく俺がここにいることが分かったね」
「天界にはね大きな水瓶があって、それが鏡になっててね下界を映し出して
「誰が今、どこにいてるか鏡に問いかけるとその人のことを水面に映し出して
くれるの」
「だからマー君が私と初めて出会ったこの図書室にいるって知って・・・」
「そうか・・・」
「でもゼゼット・・・よかった・・・もう二度と会えないと思ってたから・・・」
「心にもないこと言ってごめんよ・・・見送らないとか勝手に帰れとか・・・
あんなこと本心じゃなかったんだ 」
「だけど、ゼゼットを見送ってたら、きっと俺は耐えられそうになかったよ」
「分かってたよ・・・マー君の気持ち痛いほど」
「私とマー君との心の糸はちゃんとつながってたんだよ 」
「私、今、めちゃ欲しいものがあるの」
そう言うとゼゼットは真白に駆け寄ると彼に抱きついてキスした。
彼女はいつかの時と同じように真白とのハグとキスが欲しかったのだ。
「あれ、ゼゼット背中の羽は?」
「地上で生きていくのなら羽はいらないだろうって神様がとってくれたの 」
「もうどこへも行かないからね・・・私は一生マー君のものだから」
ゼゼットは満面の微笑みで真白を見た。
「でも、なんでサンタの衣装なんか着てるんだ?」
「今日はイヴでしょ・・・マー君へのサプライズ・・・クリスマスの
プレセントは、この私だよ・・・この衣装のままエッチして?」
「まじでエロいっちい天使」
真白はもう一度思いきりゼゼットを抱きしめた。
「ちょ、ちょっと・・・苦しいってば」
「あ、ごめん、抱きしめてないとまた天界に帰っちゃいそうで」
「じゃ〜ずっと抱きしめてて・・・」
「ゼゼット・・・」
「マー君愛してる・・・彼女が天使なんてめっちゃレアなんだからね」
「大切にしてね」
「大切にするよ・・・俺の命に代えて・・・」
ゼゼットの瞳からは嬉し涙がこぼれ落ちて差し込む日差しに照らされて
キラキラ輝きながらダイヤモンドに変わった。
おっしまい。
ご多分に漏れず堕天使もエロいのが定番。 猫の尻尾 @amanotenshi
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