第2話 宣戦布告
クローバー王国の城下町の外の草原に異様な光景があった。
夜の月明かりに照らされるのは、騎士姿の骸骨。
それも数にして、約5000。
そして、その部隊の最前列には、山ではないかと勘違いする程大きな骸骨、「ガシャドクロ」が陣取っていた。
ガシャドクロは、四つ足歩行の姿勢で、背中に黒い狼の外套を来た者が5人。
その5人の顔には、狼の顔のお面をしている。
5人のうちの真ん中にいる者は、金髪のショートカット、黒いドレスに黒い厚底ブーツ姿の「アイビス」が立っていた。
アイビスの右には、黒いスーツを着て刀を持つスミスがおり、アイビスの左には、骸骨部隊を操る黒いスーツを着たルシアが立っていた。
そして、ルシアの左に黒いスーツ姿のイース、スミスの右には、名前は分からないが、赤い髪のツインテール、黒いビジネススーツにミニスカート、黒いブーツを履いた美女が立っていた。
アイビス「ヒノカ、緊張してない?大丈夫?」
赤い髪の美女、ヒノカは無表情で答える。
ヒノカ「む、無理です。帰りたいです。」
アイビス「その調子なら大丈夫ね!この作戦は、ヒノカがポイントだから頼むわね!」
ヒノカは、アイビスの方を向き、ダメだって言ってるじゃん!みたいな顔をしていた。
確かに何が大丈夫なのだろう。
きっと、これが普段のヒノカなのだろう。
アイビス達は、ガシャドクロから降り、門から堂々と城下町に入ろうとする。
ルシア「皆、ここで待機な。」
ルシアが骸骨騎士達に言うと、骸骨騎士達はその場にとどまる。
衛兵「と、止まれ!お、お前達は仮面をして何者だ!ここから先は立ち入り禁止だ!た、立ち去れ!」
門の衛兵は震えながらアイビス達に叫ぶ。
アイビス「あら。こんな骸骨の軍団がいる状況でもしっかり働くなんて、とても優秀ね。でも、邪魔だから寝てなさい。」
アイビスがそう言うと、衛兵は意識を無くしてバタッと倒れた。
アイビス「さぁ、行きましょ?招待はされてないけど。」
アイビス達は、城下町のメインストリートを王城に向かって歩く。
城下町は、王太子指名式の影響で人々はごった返し。
アイビス達を気にする人はいない。
アイビス達が王城の正門に着くと、衛兵の1人がアイビス達の異様さに気づいたのか、声をかける。
衛兵「お前達、ここは王城だ。即刻立ち去れ。」
アイビス達は無視して進む。
衛兵「何だ!お前達は!これ以上近づけば、拘束する!」
衛兵10人くらいが一斉に抜刀する。
アイビス「うるさいな。元々、私の家だっちゅうの。寝てなさい。」
アイビスがそう言うと、衛兵が一斉に意識を無くし倒れた。
アイビス「さて、お父様達は元気かな?顔を見に行くわよ。」
アイビス達は、王城内を進んでいく。
迎賓館の前に来ると、第一騎士団が守衛をしていた。
小隊長「何者だ!」
スミス「主君がわざわざあいさつに来た。通してもらおう。」
小隊長「敵だ!一斉に拘束しろ!」
第一騎士団の兵から黄金のオーラが放たれる。
クローバー王国第一騎士団は、国の精鋭部隊。
オーラが使えない者はいない。が、
アイビス「全く。頭が高いわよ。」
すると、第一騎士団の兵のオーラが消えていく。
アイビス「皆、派手に行きましょ。ヒノカ、ドカンと道を作って。」
いつの間にか、ヒノカの手に赤黒い長剣が握られ、体から黄金のオーラが放たれ、黒い炎に変化する。
ヒノカ「アイサー!さぁ、うちの姫が進むからどいて!ブラックフレイムウォール!」
ヒノカが長剣を振ると、黒い炎は迎賓館の扉まで伸びたかと思うと、壁のように燃え上がりながら左右に広がり、第一騎士団の騎士達をぶっ飛ばした。
ドガァーン
爆発の後、炎の壁の間には、誰もいなくなり、アイビスは優雅に扉に向かって歩を進める。
アイビスが扉にたどり着こうとした時。
ガキーーーーン
アイビスの目の前には、刀を抜刀したジェガン・クロスガードと、それを狼の爪のような攻撃により漆黒のガントレットで受け止めるイースの姿があった。
そして、周囲にバラバラになった扉の瓦礫が落下する。
ガラガラガラ
ジェガン「仕留めきれねぇか。参ったね。黒いワンちゃん達。悪いが引いてもらえねぇかねぇ。」
狼の仮面をはずしながら、アイビスが言う。
アイビス「久しぶりね。ジェガン。分かったわ。言う事言ったら帰るから。」
ジェガン「・・・やはり、アイビスタシア様でしたか。はぁ、何でこうなっちゃうかなぁ。あと、久しぶりだな。イース。そのスタイルじゃ、仮面の意味が無ぇな。でも、強くなったなぁ。」
イース「・・・久し・・・ぶり・・・です。・・・師匠。」
ジェガンは、後方にバックステップして距離をとる。
クリード「何だ!お前らは!ん?まさかアイビスタシア!?死んだはず!」
迎賓館の中にいたクリードが驚く。
アイビス「ご機嫌よう。兄上。魔界からはるばる帰って来ましたよ。生きてて、すみません。」
アイビスは、淡々と告げる。
ジェガン「なぜ、今になって、こんな事を。」
アイビス「復讐よ。当たり前でしょ?胸に手を当てて考えたら?心当たりしか無いでしょ?東の村の虐殺もその一つ。」
イースは、アイビスの言葉を聞いて、狼のような姿勢で、目の前の兵士達を睨む。
ジェガン「・・・。」
アイビス「さて、今日は言う事言ったら帰ります。要求が通らなければ、国を落とします。」
ガイアス「何を言っているのだ。勝手な事をぬかすな!アイビスタシア、反逆者として処刑だ。ジェガン!やれ!」
ジェガン「陛下。お言葉ですが、あなた達を守りながらの戦いになると、この場の半分は命を落とします。国賓もいる中で、それで良いですか?」
ガイアス「くっ!」
アイビス「父上、バカですか?まぁ、良いです。要求は、現王族は、即刻、城を明け渡しなさい。そして、私が新王としてこの国の国王になります。期限は、20日後。以上です。」
ガイアス「何を!」
アイビス「要求が通らなければ、全面戦争だから。私達に勝てるなら良いんじゃない?」
ガイアス「ジェガン!騎士達!アイビスタシア達を逃がすな!即刻、死刑だ!」
ジェガン「陛下、それは悪手ですよ。まぁ、命令なら仕方ないか。」
ジェガンや騎士達からオーラが発せられる。
スミス「俺やるか?」
アイビス「ダメ!あんたやったら皆死んじゃうじゃない!イースお願い!」
イースは頷くと、地面に手をついた。
ジェガン「行け!攻撃がくる前に仕留めるぞ!」
ジェガンと騎士達が走りだそうとした瞬間。
ガガガガ
城が、王都が、地面が上下に揺れ、地面にヒビが入っていく。
イース「・・・「土竜」。・・・それじゃ、師匠。戦場で。」
アイビス達は、オーラを放つと飛び上がり、ルシアが召喚した骨竜にのると、王城を飛び去った。
ジェガン「はぁ、少数精鋭ってか。こりゃ、参ったね。陛下、捕まえるのは無理です。」
ガイアス「くっくそ!戦争だ!全騎士団を召集、ギルドにも応援要請を!来賓の皆様も国に戻り、同盟に基づいて応援をお願いしたい。反逆者を討つぞ!」
ガイアスは苦虫を噛んだよう顔で叫ぶのだった。
才能無かったから、筋トレしてたら世界最強に!?2部 @kiti310161
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