第4話

……… chiyoka ………



 どうしてここにいるのかは覚えていない。


 ただ覚えているのは酷く暗い場所から、リトが助けてくれたこと。


 でもそれがいつのことかは分からない。



蝶華ちよか、梅の花のお茶だよ」


「うめ……?」



 初めて淹れてくれたお茶は泡く綺麗な色をしていた。



「知らない? 梅の花は冬の終わりに咲くんだよ」


「ここにある……?」



 顔を上げてリトを見上げる。


 目があったリトは今までで一番笑った。



「冬が終わったら咲いてるよ。蝶華」


「うん……」



 リトは温かい。


 今もまた私の体を包み込んで温めてくれる。



 私の名前は蝶華ちよか


 リトが教えてくれた名前。


 リトはこの家の偉い人。



「蝶華様、お食事をお運びしました」



 襖が開いて、ルキがご飯を運んでくれる。


 ルキはリトの言うことを聞く人。



 部屋にご飯が運ばれて、布団から抜け出した。


 その時に左手首と左足の鎖がぶつかって大きな音が鳴る。



 そのたびにルキは悲しそうな顔をするの。



「ルキ、泣かないで」



 ご飯の前に座り、ルキに手を伸ばす。


 でも手は鎖に繋がれて、ルキには届かない。



「……蝶華様、ありがとうございます。俺は大丈夫ですよ」



 やっぱりルキは泣きそうだ。


 何が悲しいのかは分からないけど、ルキが泣きそうなのは嫌だ。



「いただきます」



 リトに教えてもらった食べる前の挨拶。


 箸を持ってルキの作ったご飯を食べる。

 ルキの作ったご飯はすごく美味しい。



「ルキ、ありがとう」


「蝶華様の笑顔が見れるだけで幸せです。こちらこそありがとうございます」



 ありがとう。


 この言葉もリトが教えてくれた感謝の言葉だった。

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