第3話
………二年後………
「美琴、今日は帰んの遅いから」
「わかりました」
「敷地は出んなよ」
龍宮会霧島組若頭、
彼の奥さんとなり平和な時間を過ごした。
「いってらっしゃい、棗さん」
「ああ、行ってくる」
棗さんは私の唇へとキスをして、組の人を数人連れて家を出て行った。
「美琴様が来て若頭も丸くなりましたよ」
「そうなんですか?」
組の人に付き添われながら自室に向かって歩く。
「あなたのことをずっと探してましたから。出会われたのは東京だということで探すのに苦労しました」
「どうして私を探してたんですか?」
「聞いてないんですか?」
ここに来てもう2年。
でもまだまだ知らないこともある。
組の人とは会話も多くなって、生活するのも慣れてきた。
何より棗さんが愛してくれる。棗さんがいなくても組の人が必ずいてくれる。
こんな素敵な世界があるなんて知らなかった。
自室に向かう途中、枝分かれする場所で足を止めた。
綺麗な梅の花が咲き誇る庭に目を引かれる。
「そちらは組長の縄張りです。一歩たりとも踏み込んではなりませんよ」
「すごく綺麗な庭ですよね」
「えぇ。残酷な程に美しいですよね」
残酷?
確かに綺麗な庭ではあるけど……
「美琴様、貴女はこのままでよろしいのですか?」
「……どういうことですか?」
「いえ。胡蝶にならないことを願っています」
それはいったいなんだろう。
「それでは私はここで。何かありましたらお声掛けください」
…………
……
その日の夜。なかなか眠れずに部屋を出た。
棗さんは帰ってこれないらしく、起きて待っていても無駄。
でも今日は酷く寒くて一人でいたくない。
その時、シャリッと音が耳に届いた。
台所に向かう途中で背後を向くと、そこには白い衣に包まれる少女がいた。
「うめ……」
そう呟く少女は花に手を伸ばし小さく笑む。
透き通る声に透き通る肌。
どこから彼女は来たのだろう。
どこから彼女は……
「こんなところにいたらダメ、だよ」
「ぇ……?」
「囚われたらもう二度……」
少女の手が梅の花に触れる寸前、私の視界は黒くなった。
「美琴様! なぜ部屋から出てるんですか!?」
「え……?」
「失礼します」
「ッ……!」
その瞬間、体が宙に浮かんだ。
何が起きてるのかわからない。
でも、聞き慣れない男の声がする。
「
「みこ、とと一緒、おはなし」
「蝶華の願いでも無理だ」
「リトいなくなるから寂しい。だから、みこと、とおはなし、したい」
「ダメだ。
「はい」
口元に布のようなものが重なり、私の意識は遠のいた。
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