第2話

 とうとう話してしまった。これ話が終わったときに俺と灯は一体どういう感じになっているのか俺には到底想像つかない。


 もしかしたらついさっきまでの姿が信じられないくらい灯に嫌われてしまうかもしれない。 

 もしくはまったく意味なく、俺が惨敗してる可能性もある。今まで何度か灯の上に立とうと密かに挑戦していたのだが、俺の覚えている限りすべて負けている。


 惜敗はない。


 どんな返事が返ってくるのかと目をつむりながら待っていると、ベッド方向からはぁはぁ、と息の荒い呼吸音が聞こえてきた。


 荒い…?


「え…やっと、考えてくれたの?私との結婚」


 ん?今聞き捨てならないセリフが耳をかすめたような…いやぁ、さすがの灯でもそこまで度が過ぎたことをいうわけがない。

 少しずれているところがあるとはいえども、全然常識人の範疇である。


 …いや、無理があるな。確実に言っていた。と。間違いない、俺はそこらのラブコメ主人公ではないのだ。

 普通に考えてラブコメ主人公たちはおかしいよな。どれだけ都合がいい時に難聴になるんだよ。


「結婚?!」


「え、違うの?」


「違うにきまってるだろ!そもそも俺たち兄妹だし、結婚は無理だ」


「私たち本当は…なのに…」


「すまん、なんていったんだ?」


「ううん、いい。まだ私だけの秘密だから」


「秘密…?」


 そんな言い方をされては気になってしまう。自称ブラコンである灯曰く、『私の身の回りであったことは全部兄さんに話てるよ?』らしい。

 うん、改めて灯のブラコン具合に頭が痛くなる。


 少しは自分のプライベートを大切にしてくれないとお兄ちゃん、心配で寝込んでしまうかもしれない。


「それで兄さんがそんな真面目な顔してどうしたの?もしかして結婚じゃなくて、お付き合い?それとも…はっ、分かったよ兄さん」


 何をにやにやしているんだ灯は。この灯の顔はいたずらなことを考えているときの顔だ。

 今まで何回目にしてきたか。絶対に数えられない。


「私とエッチなことしたいんだね?なら早く言ってよ~。いつでも迎え入れられる準備ができるんだからさ~」


「いや馬鹿か。んなわけあるか!」


「ふふ~、まあそうだよねー。兄さん奥手だもんね」


「そういう話じゃねぇ!」


「はは、兄さん元気だなぁ」


 まずい、いつの間にか灯のペースに乗せられている。これじゃ、いつまで経っても本題に入れない。


 もう無理矢理に俺から話を進めるしかない。


「俺な、灯には自立してもらいたいと思ってるんだ」


「自立?しなくても兄さんと私がそろえば完璧じゃん」


「そうかもしれんけど、それとは別なんだよ」


「どういうこと?」


 これは理解してもらうのに結構な時間を要するなたぶん。


「俺もそうだけど、灯も学校生活があるだろ?その中で青春を送ってほしいって思うんだよ」


「学校は学校で充実してるよ?」


 いやいや、充実してるなら休み時間毎に俺の教室に来ないだろ。毎時間灯が来るせいでクラスの男どもから紹介しろ、とせがまれるのだ。それが非常に面倒。


「なら彼氏の一人や二人作ってるのか?」


「…それ本気で言ってる?」


 突然周りの空気が数度下がったような気がした。


「当たり前だ。灯には幸せになってもらわないとだからな」


「じゃあ余計なお世話なんだけど。彼氏とかいらないから」


 普段からは信じられないほど冷淡な声でそういう灯。だがそんなことでひるむわけにはいかない。


「そんなわけないだろ。俺の仲いい女子が言ってたぞ。そいつは灯と一緒で昔は兄と結婚したいって思ってたらしいんだけどな。中学生になったころから兄じゃなくて周りの男子が気になるようになったって」


 これは事実談だ。昨日聞いたばかりの新鮮収穫したばかりの情報。


「で?」


「え?」


「それは一個人の話でしょ。その人がそうだからって私がそうだとは限らないじゃん」


「そ、それはそうだけど…」


「っていうかさ、兄さん。仲いい女の子なんていたの?私、初耳なんだけど」







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 注]ヤンデレではありません

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ブラコンな妹をブラコンから脱却させるために全力で努力する話 ミナトノソラ(旧:湊近) @kaerubo3452

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