魔力循環
転生2日目にして、衝撃的なお金持ちとなってしまったミヤだったが、なんとか気持ちを持ち直して魔力循環を学ぶことにした。
「今のミヤは薬のおかげで『魔力溜まり』はないけれど、『魔力溜まり』がある状態で『魔力循環』をすると身体に痛みが出るんだ」
「……頭ばくはちゅ(爆発)しましゅか?」
「高速で魔力を動かせば内臓が破裂したり、脳が爆発してしまうかもしれないけど、そんな速さで魔力を動かす必要はないからね」
先ほどの頭が爆発する話を聞いてから、少しだけ魔法や魔力を使うことが怖くなってしまっているミヤ。
だが、魔力循環がどんな物なのか、ミヤには覚えがあった。
魔王だった頃(あ、今も魔王か)、教会の地下の部屋で見たあのメモ帳。
魔心を中心に魔力が体内を巡っているあのイラストがミヤの記憶に鮮明に残っている。
「魔力循環できそーでしゅ」
「うん?」
身体の中の魔力を一定方向に流し、全身を巡らせるイメージ。
深呼吸を一つしてから、目を閉じてあのイラストに自分の身体を重ねるようにしてイメージを膨らませる。
あのドロドロの血液に覆われた魔王の魔心を思い出す。
そこから黄色の管が全身に伸びていて、そこを魔力が通っている。
(んん…? めっちゃ重いな…)
ずずず…、ずずず…という効果音がつきそうな重たい何かが身体の中を動き始めた。
これが魔力かと、その感覚をすぐに覚える。
重いのは多分、魔力が多すぎるせいだろうと、ミヤも自分の中の魔力がどれほどか、なんとなく掴めた気がする。
想像していたよりずっと重たい感覚だった。
だが、それもそうかとも思うほど、ミヤの身体の中は魔力でパンパンだった。
魔心から常に魔力が作られ続け、それが小さな身体の中に無理矢理送り込まれ続けているのだ。
これでよく身体が爆発しないなと不思議に思う。
ぎゅうぎゅうに詰め込まれたような魔力を動かそうにも行き場がないほど詰まっているので重く感じる。
全身を巡らせるにはまだまだ練習が必要な印象だったが、少し動かすだけなら今のミヤにも出来た。
ずず、ずずず…、ずずずず……。
(うん、ちゃんと動かせているっぽい)
「フェンリルしゃま、できてましゅか?」
「あ、あぁ…。うん、できているよ。ちゃんと動いてる……正直、こんなに簡単に出来ると思っていなかった。スゴイよ…」
本当に関心している様子のフェンリルにミヤはと子供らしい照れくさそうに顔で笑って見せる。
「きょーかい(教会)に居た時に、魔力循環のことが書いてたメモちょーを見たでしゅ。字は読めにゃかったけど、絵が描いてあって、たぶんこのことだろーなーって」
フェンリルは本当に驚いていたのだ。そして、関心もしていた。
フェンリルはミヤに魔力の動かし方はもちろん、魔力の感じ方も教えていない。
(過去にメモ帳を見ただけで、こうもあっさり出来てしまうとは……、いや、この子は魔王だった時にすでに魔力操作が出来ていた。おそらくそれも要因だね……)
魔力循環は魔力を
栄養が流れる白い管を手足のように動かしていたあれが、魔力操作によるものだとミヤは分かっていないが、そのような事がすでに出来ていたので自身の魔力を体内で動かすくらいは出来てしまってもおかしくない。
フェンリルはそう考えた。
(魔法を使わせないと魔力が動くとはどんな感覚か分からないかもと危惧していたが……。ミヤに魔法を使わせずに魔力循環が出来た事は喜ばしい)
流石は『魔力の王』と言ったところだろうか。
『古代の魔力の王』も魔力
(今世の『魔力の王』も素晴らしい才能を持っているのかもしれないね)
フェンリルはその後も魔力循環の訓練を続けるミヤを静かに見つめ続けた。
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