スキル確認します
朝からゴブリンに襲われるというイベント後、人心地ついたのでミヤのスキルの特訓が始まる。
「ミヤ、そろそろスキルを使う練習をしよう」
「あ、あい!」
「まずはミヤにどんなスキルがあるかを確認だ」
「あいっ!」
「ふふっ」
真剣な顔つきで元気に返事を返すミヤが可愛らしいので、フェンリルは緩みそうになる顔を堪えるのに必死だ。
「リューエデュン神様から『鑑定』を自分にかけなさいと言われているのを覚えているかい?」
「あい! 覚えてましゅ!」
「その『鑑定』のスキルで自分の情報や状態を確認できるんだよ。
自分の手や足元をしっかり見て、『鑑定』と口にしてごらん。
そうやって『視る』ことが出来るようになったら、口には出さずとも意識するだけで出来るようになるからね」
「あい! わかりました!」
ミヤは自分の両の手のひらを見ながら、「鑑定」と唱えた。
「ぅえ!? え、へ?」
ミヤの目の前に、大量の情報が文字となって広がった。
■□--------□■
土
どこにでもある普通の土
■□--------□■
土・上質
上質の土
■□--------□■
ヘンリ草
雑草
■□--------□■
グリュー草
雑草
・
・
・
と、自分を鑑定したはずが、他の情報が大量の文字になって目の前に広がってしまっている。
ちなみに文字はすべて日本語だった。
「余計な情報がたくさん出ただろう」
「あ、あい。土とか草とか…」
「慣れない内はそうなるのが普通だよ。焦らず、自分の身体にだけ集中してごらん」
「あ、あい」
フェンリルにそう言われ、ミヤは自分の手のひらにだけ意識を集中させた。
そうしてどれくらい経っただろうか。
しばらくすると、ミヤの目に一つの情報だけが見えるようになった。
■□--------□■
ミヤ(龍人族)
3歳
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状態異常: 魔力過多症(重症/緩和中)
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スキル: アイテムボックス、鑑定、身体強化、錬金術(分解)
特殊スキル: 言語理解、集中/没頭
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加護: リューエデュン神の加護、宇宙神の加護
■□--------□■
「み、視えーー! あっ、みえ、あぁっ」
意識の集中が切れた瞬間またもやミヤの視界に土や草の情報が入ってくる。
(うぅ、難しい…!)
「始めの内は一つの物だけを視るというのになかなか慣れないんだ。特訓すれば欲しい情報だけ視れるようになるし、逆に一度に大量の情報を瞬時に得て理解できるようにもなるよ」
「にゃるほど…」
かなりの集中力が必要なスキルだ。
『視る』のを辞めた瞬間、一気に疲労を感じたほどだ。
(てか、スキルってこんなにたくさんあるんだ…。てか、宇宙神様からの加護まであった!)
ありがてぇ、ありがてぇと、ミヤは小さな手のひらを擦り合わせて天に祈った。
そして、『状態異常: 魔力過多症(重症/緩和中)』の文字。
今生で患うと言われていた疾患。
こいつかぁと、その文字列を見て少し気になった事がある。
「あにょ、わたし今しゅごく元気なんでしゅが、魔力かたしょーはどーなってるんでしょうか?」
「あぁ、今はミヤに飲ませた薬の効果で一時的にだが全快している状態だよ」
そういえばと、ガインに薬を飲ませてもらったと言う話を思い出した。
一時的にとは言え、あの死にそうな状態から快復させるほどの薬があるのかと関心した。
「魔力過多症の横に『緩和中』とあるだろう? それが薬の効果が効いている状態だよ」
「もしかして、薬で魔力かたしょー治せましゅか?」
「いや、残念だけど『治す』薬はないんだ。ミヤの症状が落ち着いているのは一時的なものなんだよ。それにあの薬は、今のこの世界では作れない」
「……古代の薬でしゅか?」
「その通りだよ。古代にあった薬草や、獣の素材が必要なんだ」
なるほど。それじゃ薬には期待はできない。
(だから自分の力でなんとかするしかないんだね。よし、こういうのは諦めが肝心。頑張ってスキルを伸ばそう!)
ちなみに、宇宙神の加護によりミヤは『言語理解』と『集中/没頭』と言う特殊スキルを持っている。
この2つのスキルはフェンリルさえも初見のスキルだった。
おそらく、宇宙神様独自のスキルだろうとの事だ。
「私の『鑑定』によれば『言語理解』はあらゆる言語を理解できると出ているね」
「うちゅー神しゃまが、どんな文字も読めるし、言葉も聞き取れりゅって言ってました」
「ほう、素晴らしいねそれは」
ミヤも素晴らしいスキルだと思っている。
(魔法とか文化とか歴史とか、あと物語の本とかも読んでみたいな)
文字が読めるなら本もたくさん読めるはずだと、スキルのおかげでこの世界での楽しみが増えている。
「『集中/没頭』は『集中』は物事への集中、『没頭』はマイナススキルになるね」
「まいなしゅ?」
「スキルの中にはね、『◯◯/△△』のように2つが『対』になるスキルがあるんだよ。ミヤのこのスキルは『集中』と『没頭』のどちらを使うか選んで使うんだが、『/』の後ろに来るスキルはマイナススキルになる」
「まいなしゅって事は悪いスキルでしゅか?」
「私の鑑定でもそこまでは分からないんだが、言葉の通りの効果なら『没頭』は時間を忘れてしまったり、周りが見えなくなってしまうんじゃないかと思うよ?」
「にゃるほど」
『集中/没頭』のスキルについては魔力消費もないようなので、後日に試してみようと言うことになり、まずは早速、身体強化を試すことにする。
「それじゃ、身体強化を使ってみようか」
「あい!」
「身体強化の発動は意識の切り替えをイメージして発動させるんだ」
「ん?」
「なかなか説明が難しいんだが、自分の身体が今までとは別のものに変化するという意識を強く持ち続けるんだ。意識の切り替えをするとも言う。みな、最初のこの切り替えがうまく出来ない。切り替えが出来るようになっても継続する事も難しい」
「んーーー…」
要は意識を切り替え続ければ良いのかと考えた。
切り替えと言われてミヤが思い浮かべたのは『スイッチ』だ。
壁に埋め込まれているアレだ。部屋やトイレの電気を着けたり消したりするスイッチ。
そのスイッチが入っている、つまりオンの状態になればスキルが発動し続けると考えてみる。
「まずはやってみてごらん。『身体強化』とはっきり口にするとスキルを発動させるという意識が強くなるよ」
「あい!」
頭の中で『身体強化』と言うラベルがついたON/OFFが切り替えられるスイッチを思い浮かべる。
「いきまっしゅ! 『身体強化』!」
(スイッチ・オン!)
カチッと言う音が耳元で聞こえた気がした。
「…………ありぇ?」
できた? できてる? 何も変わってない気がすると、ミヤは目の前のフェンリルを見れば、
「その場で上に飛んでごらん?」と言うので、
「えっと…、ジャンプ!」
と、座っていた岩から腰を上げ、そのまま真上に垂直跳びの要領で飛んでみたら驚いた。
「ひゃっ!?」
先ほどまで見上げていたはずのフェンリルの頭の上までミヤの小さな身体が飛び上がっていた。
「ひぇぇ?!」
「おっと!」
ビックリしすぎて空中でバランスを崩してしまったが、フェンリルがミヤの真下に風を起こし、ふんわりと着地させてくれた。
「凄いよミヤっ、一度でできるなんて!」
「ふえぇ~~~…、ビックリしました……」
「身体強化の意識の切り替えは、最初はみな全くできないんだよ? 初めてで成功するなんて……本当にすごいよ」
「え……、えへへぇ~」
(褒められた! 嬉しい! 誰かに褒めてもらうなんていつ以来だろう!)
ニヤけてしまう口元を小さな両手で隠すように笑う。
そんなミヤの姿にフェンリルの眼尻もついつい下がってしまう。
「身体強化を使えば、内蔵を含めた全身が強化されるんだ。身体が動かない時や、息が出来ない時は迷わず使うんだよ。ミヤは特に心臓や肺を強化することを意識するといい」
「あい!」
「このあと、ミヤには『魔力循環』も覚えてもらうが、それができるようになるまでは、薬と身体強化で過ごそう」
「ん?」
「おそらく、魔力循環をしながら眠らないと眠っている間に呼吸が止まってしまう可能性がある」
「寝てるあいだに…」
そう言われて地球で入院していたころも、寝てる間に酸素濃度が低下して夜中に集中治療室に移動していた事が何度かあったことを思い出した。
「ミヤにこれを渡しておくよ」
「なんでしゅか?」
「
「ばんのーやく?」
そう言って、フェンリルがアイテムボックスから虹色の液体が入った小瓶を2本取り出す。
「魔力循環が使いこなせるようになるまではこれを飲んで眠りなさい。量はそうだね…1晩なら1/4ほどで大丈夫だろう」
「にゃるほど! 8日(よーか)で魔力循環を覚えるでしゅね!」
「その通りだよ。計算も速いんだね、流石は宇宙世界の子だ」
「え~、えへへぇ」
宇宙世界と言うより、日本の教育の賜物だとは言わないでおく。
せっかく褒めてもらえたのだから、そのまま受け取っておく。
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