続・スキルを確認します

ミヤが持っているスキルは


・アイテムボックス

・鑑定

・身体強化

・錬金術(分解)

・言語理解

・集中/没頭


以上6つ。


『アイテムボックス』は空間にアイテム、物を入れる事ができるスキルだ。つい先程もフェンリルが空間からエリクサーを取り出していたが、それと同じ物をミヤも持っていた。


「ミヤは魔力が多いから、私よりもたくさんの物を入れる事ができるよ」と言われたので、試しにその辺りにある小石や草を色々入れたり出したりを繰り返し試してみた。

ついでにフェンリルからもらったエリクサーもアイテムボックスに入れておいた。


アイテムボックスは鑑定や身体強化とは違い、ミヤが手にした物、触れた物を『アイテムボックスに収納する』と意識するだけで使えた。出すときも『アイテムボックスから取り出す』と意識するだけで取り出せる。


とても便利なスキルだ! と、ミヤは喜んだが、


「アイテムボックスが使えることは他人に知られないようにするんだよ?」

「え? どーしてでしゅか?」

「アイテムボックスは大量の魔力がないと使えないスキルなんだ。知られてしまってはあの女神を自称している異世界人にミヤの存在を知られてしまうかもしれない。そうなれば魔王の頃のように捕まって魔力を吸われてしまう可能性がある」


それ絶対ダメなやつじゃん! と、考えているミヤにフェンリルは更に、


「それとね、どこの世界にも悪い事を考える者が一定数居るんだ。そういう者たちがミヤを攫ってアイテムボックスを悪い事に使わせようとしたり、他のスキルも悪用させようとしたりする可能性もある」

「そんにゃの、ぜぇったいにイヤでしゅ! ぜぇったいに誰にも言いませぇんっ!」


ふんす、ふんすと、鼻息を荒くしてギュッと口を閉じる仕草を繰り返すミヤに、フェンリルは「ふふっ」と笑った。



『錬金術』は、『分解・抽出・合成・凝固/凝縮・変容・賦活・調和・浸透/融合・再生』があり、ミヤの『錬金術(分解)』は、錬金術の初歩スキルで、物質を分解するスキルだった。

スキルを特訓し続ける事でたくさんの術が使えるようになる。


「錬金術は他のスキルと違い、魔力を消費するスキルなんだ。そのせいか魔法の使い方にとても近い」

「まほー…!」

「ミヤは魔王だった時に『クリーン』と『転移』の魔法を使ったね?」

「あい」

「錬金術は『クリーン』や『転移』の魔法を使った感覚を思い出して使うと良い。

 物を『分解する』イメージを頭の中で鮮明に思い浮かべる感覚だ。

 魔法は何よりイメージが重要なんだ。本来は呪文も必要ない」


あの『クリーン』と言う呪文は、世界崩壊後に魔法が使えなくなってきた人々がイメージや意識を強化するために唱えるようになった物が習慣化した物らしい。

そういった意識強化の習慣が長い時間をかけて『呪文』として認識されるようになってしまい、今の時代では魔法は呪文を唱えて使うものだと思い込まれている。


「この世界の人間なら魔法は誰でも使えるもので、イメージさえできればどんな魔法も使えるし、極端な話だけれど新しい魔法を作る事もできる」

「え? ちゅくれるでしゅか?」

「そうだよ。しっかりとしたイメージさえ出来ればね。ただし、自分の魔力に見合った物しか作れない」

「ほぇ~~…」


そこでフェンリルは悪戯を思いついたような笑い方をして、


「宇宙世界の知識を持った『魔力の王』のミヤならきっと新しい魔法を作れるよ」

「えっ……」


それを聞いてミヤは小さな口を真一文字に閉じて、黙り込んでしまった。




(そ、それは… ちょっと、いや、かなり危険なのでは…? だって……、ウランやプルトニウムの核分裂反応を理解していたら、原子爆弾を魔法で作れちゃうってことじゃ…)


さぁ…と、ミヤの顔色が青くなる。


もちろんミヤはそんな物を作る気などさらさら無いが、知識としては知っているのだ。

地球での長い入院生活中はネットサーフィンが日課だったのだ。

自分の病気の事を調べる息抜きに、ヒマな時間をやり過ごすために、ネットの海に飛び込んでそれなりの知識や雑学をインプットしてしまっている。


「ふぇ、フェンリルしゃま、あの、安易に新しいまほーちゅくりゅのは、危険だと思いましゅ……」

「うん、ミヤならちゃんと分かっていると思っていたよ。それに、ミヤは危険な魔法を造ったりしないだろう?」

「はい、じぇったいちゅくりましぇん。ちゅくっちゃダメでしゅ」

「危ない魔法を作ろうとする者は、今のミヤのように危険だからと否定も拒否もしないんだ。自分が造りたいから造ってしまう。けどミヤはそうではないと思っていたから」

「え…? わたしなら?」

「君は善良な人間だよ。でなければ、5人の人間を守って死んだりしなかったさ」


フェンリルの言葉にミヤは自分は善良なんかではないと否定したかった。

ヲタクだし、オジサマ好きだし、ケモにも目覚めてしまいそうだし…。

自分は俗物の塊のような人間だと思っている。


けど、ミヤは生まれ変わったばかりだ。

生まれ変わってまだ2日も経っていない。


(なら、今生は善良な人間になろう…なるべく…、そう、なるべく…)


前世の記憶を持ったままなので、『ヲタクの業』が顔を出す場面も出てくるかもしれないので、はっきり言い切れないが、なるべく良い人間(龍人)であろうと思う。


「けどね、ミヤはまだ魔法を使ってはダメだよ。だから錬金術を試すのも今は辞めよう」

「え? まほーダメなんでしゅか?」

「今はまだね。魔法を使う前に、『魔力循環』を覚えてもらう必要がある」

「まりょくじゅんかん?」

「身体の中の魔力を操作して、ミヤの身体の中に出来てしまう『魔力溜まり』が出来ないようにしたり、消したりするんだ」


フェンリル曰く、魔力過多症の疾患の多くは『魔力溜まり』が原因で起こると言う。

呼吸ができなくなるのも、この『魔力溜まり』が気管を塞いだり、肺を縮めたりするために起こる。


ちなみに今はエリクサーがこの魔力溜まりをすべて溶かしてくれた状態だ。

だが、薬の効果が切れれば『魔力溜まり』が体中にどんどん出来てしまう。


魔法を使う時、魔力は動く。


平時でも魔力は身体の中を血液と同じように全身を巡っているのだが、魔力を使うと体内の魔力が体外に排出されるため、大きく動くのだ。

外に出した分、体内の魔力量が減るため全身を巡る魔力の動きも早くなる。


『魔力溜まり』が大量にある者が魔法を使うとどうなるか。


「『魔力溜まり』も大きく動くんだよ。息が出来なくなったり身体に激痛が走ったり、時には内臓が破裂する場合もあるんだ。大きな魔力溜まりが頭に集まったりしたら…頭が、脳が爆発する事もある」

「ひぇ…っ」


ミヤは思わず自分の頭に小さな手で触れた。


「だからミヤは本当に気をつけなければいけないよ? 魔法はいいと言うまで絶対に使ってはいけないよ? いいね?」

「あいっ…! って、あぇ…?」



さわさわ…、ペタペタ…。 あうれぇ?



「きゃみが……?」

「あ」



ミヤは此処でやっと、自分の頭に髪がないことに気付いた。

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