第19話 シリウスおじいちゃん3、夜のシリウス劇場


ミルダは、

凄くびっくりした。


だって、

あの二人が。

あんなに長時間いるのを、

始めてみたのだ。


そして、

ホークは、

牙をなくし、

いつもの、ぽやーっとした、

青年に戻っていた。


ミルダは、

シオルお手柄だったね!と、

撫でながら、

アトラスと笑ったけれど、


すべてが、

夢のようだった。


そして、

わんわん泣いてしまった。


おじいちゃん。

良かったね。


でも、

きっと、

また、


…。


はあ。

手すりの見積書出さなきゃ…。

急に、現実に引き戻されてしまった。


床には、

しぼみはじめた、白い風船が転がっていた。


◆◆◆


俺は、

自分で自分が、

ますますわからなくなった。


でも、

人助けが出来た喜びに、


…。 


くらくらする。

頭が痛い。


アトラスが俺に訪ねた。

『大丈夫か?』


だ、

だ、

だいじょうぶだ、


えっ、

誰が?


うわ、、、


迷惑をかけた、

森の皇国神殿のことが急に思い出されて、

俺は、恥ずかしくて、

両手で顔を覆った。


そして、

ミルダに、

俺の代わりに、魔法封書を飛ばして欲しいと、

自分からお願いした。


すると、だ。


ミルダの母が、

俺に言ってくれたのだ。

「代わりにやりましょうか?」

「慣れてるんです。」


そういって、

わざと頭を抱えて、

はー、やれやれとした。


ぷっ。


あはははは!!

周りで聞いていたオーディエンスが、

大爆笑していた。

みんなが集まってくれた。


ちび竜たちもいた。

彼らはちょっと、

怒っていた。

俺が、悪役を演じたからだそうだ。

そーだそーだと、

まるで自分のことのように揉めていると、


「わかってねーなー!」

「切られ役が、いちばんむずいんだぜ!」

と白いちび竜が、ドヤっていった。

おおーっとみんなが感心した。


あっ、と思った。


彼は、よく本を読んでいる、

森の診療所に来る子だ。

今日は、竜医院に来てたのか。

今日の彼は、顔色が良かった。

ぽかぽかしていた。

こんな元気な彼を始めてみた。


ぷぷっ。


意外とクチが、悪いんだな。


「宙返り、凄かったぜ。」

「ドラゴンミントンやばかったよな。」

と、

彼らは、

俺たちの話題で、

たいそう盛りあがってくれた。


今日はもうへとへとだ。


そう思うと、

シリウスのマネージャーを名乗る、中年男性が近づいてきて、

こそっと耳打ちをした。


そして、


 またたのむ


と、かかれたメッセージカードをくれた。

封筒には、

お小遣いも入っていた。


多いか少ないか、

よくわからなかったので、

ミルダに渡した。


「好きに使ってくれ」


ミルダは、

俺に、豆茶を淹れてくれると言った。


ああ。

俺もそれがいい。

そう思った。



ミルダは俺に、ゲストルームを貸してくれた。


小窓から夜空を見ながら、

豆茶を飲んだ。


そして、

彼は今頃、

何してるんだろうな?と思った。


メッキにまみれた、

瞳の下には、

巨大なブラックホールがあるのだろう。


ミルダが、

ひょいっとやってきて、


「え、これから夜の部だよ?」

と、こともなげにいった。


う、

う、

嘘だろ?!ほんとに?


何でも、

「闇の回廊」向けの

夜のシリウス劇場が、

これから始まるらしい。


そ、

そうですか。


俺は、

ギブアップとばかりに、

布団を頭まで被って、

ぐうぐう寝てしまった。



このことが、

ちょっとした事件になってしまうとは、

このときは、

思いもよらなかった。


(続)

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