side:邪神ちゃん

「んふふー。なかなか刺激的なお出かけになったねー?」


自身の権能を使ってこっそりプレイヤー・キョウのぞき見をしていた邪神ちゃんはひとりごごちだ。


(んー・・・とーはーいーえー。現地の魔物や魔族にやられてしまうなら、それはそれで運がなかったとしてしかたがないけどもー。あの来訪者が襲撃してくるのは、セーフかなー?アウトかなー?


ボク的には今回は何とかなりそうだったから介入しなかったけど・・・どうするべきかなー。)


確かに自分はキョウを気に入っている。

依怙贔屓・・・というか、特別扱いをしている自覚も、ある。


だが、、だ。

生きる以上、死ぬこともあるだろう。負けたのなら払い戻しをしなければならない。それが最低限守るべきルール、遊びの品性だろう。


とはいえ、襲ってくる敵に自身と同格のものが関与しており、遊びの邪魔をするというのなら話は別だ。


(とりあえずは保留かなー。あの来訪者を神族が後押ししているなら、ボクも手を出す。でもそうじゃない、純粋な来訪者であるなら、そこは強いものが勝つ。・・・うん、それでいこうかー。


なかなか、退屈しなさそうじゃないか!)


そう、実際にこの世界に来てまだ1日。

だがそれでも、様々な収穫があった。


帝国の特記戦力、武装貴族とその最高峰、8柱武貴。

王国の特記戦力、王宮魔導士。

裏社会・ダークタウンの逸脱者級。


そしてのぞき見した範囲でも、逸脱級が最低ラインとなる魔王軍、そして自身が関与していない来訪者。


おもちゃ箱としての収穫と期待値は上々だ。

それに。


「ふふー。労働、行商で稼ぐという形から、アクシデントによって生じた未知の物品を利用しての、特許・権利収入かー。確かにそれは、稼げるかもねー」


だが。

当然、未知なる技術。ましてや軍事利用できるようなものとなると、様々な勢力が表・裏を問わずに手を伸ばしてくるだろう。

はたしてキョウに、それを跳ね返すことはできるだろうか?


「おもしろいねー!おもしろいよー。どーなるかなぁー」


そんなことを考えていると、ノック音。


「だれだいー?」


「失礼いたします!帝国皇帝陛下、ならびにヴェルモンド様の命題で伝令をお持ちいたしました!よろしいでしょうか?」


「おぉ!良いタイミング。待ってたよー。どうぞー」


「はい!」


入ってくる伝令兵。

受け取った手紙の内容は・・・


「・・・・・・なるほどー?中央商業都市にて、帝国と王国のトップと面談、か。」


「はっ!あなた様とのお話合いは世界の明暗が分かれる、ということで。一国だけでは・・・とのことでした。」


「なるほどー、なるほどー。・・・うん、ボクは今、すっごく気分がいいんだー。そういう意味でもよいタイミングだねー。一つ、伝言を任されてもらえるかなー?」


「はい、承ります!」


「うんうんー、一言一句、間違いなく伝えてねー?


こちらの要求が満たされるなら、魔神戦争の遺産・・・【未踏地域】について。


どうかな?」


「・・・!!確実に、お伝えいたします!」


「よろしくねー。とりあえず、キョウが戻ってきたら中央商業都市に向かうよ。物資やら地図やらの手配は、任せてもいいのかなー?」


「はい!後ほどお届けいたします。・・・では、失礼いたします」


(さて。とりあえず返ってくるのを待とうか。面白くなりそうだねー)



こうして、異世界の長い一日は終わった。

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