side:???
北部草原のさらに北。
魔王軍の元野営地には血の海になっていた。
そこにたたずむ白衣の集団は、異世界にそぐわぬ異様さを醸し出していた。
「・・・ふむ。起動テストはこんなものかしら。」
理知的な、だが冷たい声。
白衣の研究者が戦場にたたずむ。戦場にて返り血の一滴も付いていないその白衣は、綺麗すぎるであるがゆえに違和感を感じる。
「主任。データチェック終わりました。残存魔力40%、外付け兵装は全損ですがこれは当初の見積もり通り。予定通りにいけます」
「そう。全滅させておいてなんだけど、流石は魔王軍、といったところかしら。」
「ええ。我々も、残弾が心もとないですからね。・・・主任は予定通りに?」
「そうね。このまま南下するわ。あなたたちは撤収作業を進めなさい。可能な限りサンプルを回収して、我々の痕跡を残さないように。」
「かしこまりました!」
撤収作業を指示する、主任。
だが・・・
「<風漸の拳>!!」
腕が振るわれることによって発生する風の刃。
だが、黒い鋼鉄の腕に遮られ、白衣の研究者たちに届くことはなく弾かれる。
「あら?まだ息があったの。意外だわ。」
「この野営地を預かった賞として、犬死するわけにはいかぬ・・・貴様らは何者だ。」
それは、異形。だが流暢な言葉を話し、目には憤怒で消え切らない理知の色。
紫の体に深紅の鎧を纏う魔族の将は、傷だらけになりながらも立ち上がる。
「ピー・・・推定LV86。損傷率70%以上。勝率80%」
「あら。それでも20%負けるのね。やはり驚異的だわ。」
「・・・何者かと聞いている!!」
余裕を崩さぬ主任、吠える魔将。
ゆっくりと微笑みながら、女は語る。
「そうね。私は遥かなる土地からの来訪者、そしてその一族たち。目的は魔力という力と資源の収集と、そして帰還。でも、本当に欲しいのはその先」
「・・・その先だと?」
「ええ、そうよ。あなたたちにはこういえば分かるかしら。あの時代の戦争の続きが、再び始まる。」
瞬間。
襲い掛かる魔将。
「貴様ら!!いったい何を知っている!!!いったい何をする気だ!!」
「なんでも」
風邪の力を纏った魔族の剛腕が、黒い鋼鉄にぶつかる。
ダメージを与えられた気配はない。
「(ゴーレムか??いや、違う。だが今は・・・!)お前たち!こいつらとさっきまでの言葉を一言一句、本部に伝えるのだ!!これは最上命令だ!!!」
その魔将の言葉を受けて死体に紛れ込んでいた飛行能力をもつ魔族数名は立ち上がる。
「・・・・・・ゴブウンヲ!!」
飛び立つ数匹の魔族。
だが、1匹を除いて不可視の何かに撃ち抜かれる。
「主任、申し訳ありません。逃がしました」
「かまわないわ。この後の予定によっては私たちの存在が露見するのは既定路線。だから、知られてもかまわない内容を話した。」
唸りを上げる黒鉄の塊。
「それより、目の前の脅威を排除しておきましょう?」
「魔族を舐めるなよ、来訪者よ・・・!!」
その日。
魔王軍野営地は壊滅し、生きるものは誰もいなくなった。
「さぁはじめましょう?魔法のような科学の世界を。科学のような魔法の世界をつくりあげるのよ」
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