side:夜の瞬きチェイスアロウ

「(はぁ。魔術で癒されたとはいえ、完治度は60~70%。良くて互角、サポート込みでやや優勢、か)」


ぶつかるカギ爪と棍棒。

スピードはこちらが、パワーは相手がやや有利、といったところか。だが、生意気にも動きを先読みしているのか、合わせてくる。


「オマエ、スコシツヨイ。」


魔族のパワーをもって振り回される大棍棒。

えぐれる大地。これが一般兵のレベルだというのだから恐れ入る。


「嬢ちゃん!受け取りな!」


フォグから投擲されるポーション。治癒とスピードアップか。今はありがたい。


「ん。占星術<星の輝き>」


魔王軍一般兵の目の前に現れる小惑星の模型。

瞬間、影に潜る。


「グワッ!!」


光を放つ小惑星模型、思わず目を背ける魔王軍。


「はぁ、隙あり、だ!」


ヒット&アウェイで影に潜る。

一撃では仕留め切れない。が・・・


「魔術<火の弾>!!」


続いてフォグの炎の弾丸が襲い掛かる。

・・・・・・炎の歪カールベルトに比べるとお遊びのようなレベルだ。だが、牽制程度にはなる。


「グオォォ!!ナメルナァ!」


後衛組に向かって突撃する。まぁ、そうくるよな。


「ん!!占星術<土星の壁>」

「ちっ!魔術<土壁>」


防御を展開する二人。加えて


「おかえしだぁぁあ!!」

突如横合いから突っ込んでくる青い髪の剣士。さきほど装備を破壊されていた傭兵だろうか。ともあれありがたい。


「チッ!雑魚ドモガ!!」


「はぁ。隙ありだ」


背後の影から飛び出し、切りつける。


「グゥゥウウ!!マダマダダァ!」


全身を使ってぶん回される大棍棒。


「ぐっ!」

「きゃっ!」

「・・・っつ!!」


吹き飛ばされる後衛2名と乱入の剣士。

紙一重で回避するチェイスアロウ。そしてカウンター。


「グァア・・・!チクショウ!!」


「はぁ。とどめ」


「・・・スキル、<狂化破壊>」


「・・・まずっ!」


膨れ上がる筋肉。異形な体から放たれる攻撃。

その時。


飛来する銃弾。


「はぁ。とどめ」


肩口から切り裂かれ、倒れる魔王軍の一般兵。


「はぁ。つかれた。・・・・・・さっきの弾丸は・・・?」


野営地に目を向ける。


「はぁ・・・ま、それも聞けばいいか」


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(野営地サイド)


「【スキル オン!】・・・弾丸の速度と命中」


------ローディング

■■■■■■■■■■■■

弾丸の速度と命中補正


見積もり:1,000,000G(100万ゴールド)

■■■■■■■■■■■■


とっさにチートで支払いを行いフォローに入った俺。

だが、遠距離の攻撃速度と命中補正で100万G。とても乱用はできないな。


「なるほど。それが、あなたのチートってわけ。」

ルフェルが声を掛けてくる。


「あぁ。隠す必要もないからな。金を使って、スキルや知識を手に入れる能力。・・・だが、少なくとも戦闘では決して世界をひっくり返せる力じゃない」


「・・・そうね。すでに弾が込められた武器の補正1発で100万G。しかもあなたが見た通り、逸脱級には不意打ちで牽制程度にはなれど、その程度ね」


「そうだよなぁ。・・・まぁでも俺が金を稼ぎたい理由は、理解してもらえただろう?」


「そうね。」


危険だ。

ルフェルは考える。確かに、大きな戦果を出すことはできない。だが裏を返せば。

LV1が、お金を用意すれば逸脱級に牽制ができるという事実。


なにより、その能力の汎用性。

組み合わせる知識や技術、人員を考えると世界を変えることも決して不可能ではない。


「(とはいえ・・・自分のお金を使い、能力が私にバレることすらいとわずフォローに入る善性。悪くはないわね。報告は上げるけど、要観察といったところかしら)」


ルフェルは考える。

いや、場合によっては人類の切り札ともなりえる可能性を秘めた力。だが、今はまだ、それも含め素材だ。


未来はまだ定まっていない。

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