VS 魔王軍 一般兵
突然だが。
この世界の人族は、圧倒的に強い。
元々の世界基準の一般人がLV1~5程度だとすると、この場にいる戦いを生業とする冒険者や傭兵は最低でもLV20。群の正規兵となるとLV30以上。
逸脱者とよばれるルフェルやチェイスアロウに至ってはLV50以上だ。それにもかかわらず魔王軍との戦争は終わる気配を見せない。
「くそ・・・なんだってこんな時に」
唇をかむルフェル。
まずい…!この状況で野営地を離れるのは自殺行為だ。だが、守り切れるだろうか・・・?
「はぁ。面倒だけど仕事」
考えているとチェイスアロウは動き出す。
「キョウ。ルフェル。悪いことは言わない、ここにいる。戦うのは・・・はぁ。面倒だけど、余たちの仕事。」
「ちっ、そうだな。いくぞ、ミラ嬢ちゃん」
「・・・ん。」
戦いに向かう傭兵+2。
俺にできることはないのか・・・?
「はぁ。悪いことは言わない。ここにいる。余も話を聞く前に死なれると困る」
「そうよ!私もあなたを守らないといけないの。ここにいなさい」
「・・・わかったよ。」
だが。
「どうせ逃げられないなら、遠目から眺める程度は、いいだろ?今後のためにもだ。」
「はぁ。好きにする。ルフェル、死なせないようにする。」
「あんたに言われるまでもないわよ・・・!!」
「はぁ、そう。・・・じゃあいく。」
言うが早いか影に潜り込むチェイスアロウ。駆け出すフォグとミラ。
「じゃあな。またあとで生きてたら会おうぞ」
「ん。」
・・・さて。
とんでもないことに巻き込まれたが、落ち着くまで待つしかない、か。
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(戦場)
「くっ!!・・・なんなのよ一体!!」
戦場で傷だらけになっている剣士・スロー。盾は傷だらけになり、満身創痍だ。LV20があっという間にこうなる戦場に、場の危険度がうかがえる。
「野郎ども!もっと気合い入れな!!このままだとみんな魔族どもの夜食だよ!!」
「うるせぇ!!てめぇも気張りやがれ!!」
「おう、正規軍の連中が来るまで持ちこたえるぞ!!」
場にいる魔族は、人族の10分の1の数にも満たない。使役された魔物が散発的に存在するが、それでも数の差は倍以上も人間が有利だ。
それにもかかわらず、押し切れない。
「・・・ヨワイ」
魔族に前線が薙ぎ払われる。
赤い筋肉質の体、鋭い爪と牙に角。なにより力押しだけではない、技術と知性を感じる動き。
魔王軍一般兵 LV54。
「キサマタチ、ナンダ?ワレワレヲ襲撃シ、オイタテタクセニコノ弱サカ?」
「襲撃・・・?なんのことよ」
ほんとうになんのことだ。
そんな作戦はなかったはず。
「・・・マァ、イイ。キエロ」
振り被られる大棍棒。
やられる・・・!!
「はぁ。間に合った。」
瞬間、切り裂かれる魔王軍一般兵。重症・・・だが仕留め切れていない。
「下がる。・・・はぁ。面倒だけど余が相手する。あなたたちは傷の手当と、魔物たちの相手を」
「援軍・・・助かるわ。」
けが人を連れて魔物を駆逐しながら撤退する傭兵たち。
「はぁ・・・。フォグ、ミラ。急造メンバーだけど、援護を。体が癒えていない余一人だとまずい。」
「あぁ、任せな!」
「・・・ん、援護する」
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(遠方野営地)
「(あれが・・・魔王軍)」
この世界で人族は、決して生態系の頂点にいるわけではない。
それを、俺は知ることになる。
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