急変
「お買い上げありがとうございまーす!」
「はぁ。良い買い物」
サイコロを転がしながらいう夜の瞬きチェイスアロウ。
第一印象・・・というか闘技場ではかなりビビったが、なんだ。意外と話せるな。
「・・・はぁ。そんなに警戒しないでいい。あなたたちはターゲットじゃない」
「帝国武貴を暗殺しようとした奴がよく言えるな・・・!!」
歯ぎしりするルフェル。
だがチェイスアロウはどこ吹く風だ。
「はぁ、めんどう。私は今、恩赦を受けてここにいる、無罪。」
「それは法律の話だろう?仲間を襲われた私の感情は別だ・・・!!」
「ん。それはそう。」
膨れ上がるオーラと殺気。
「はぁ、めんどうくさい。正直、1Gにもならないし、私もまだ魔術で癒されたとはいえ完治していない。でも、やる気ならつきあう」
「・・・。」
「はぁぁあ。感情はともかく、理屈ではわかっているはず。恩赦を受けた余に武貴であるアナタが手を出すことは許されないし・・・」
瞬足。俺の首に当てられるカギ爪。
「ここにいるアナタ以外が巻き込まれて全員死ぬ。それでも?」
「おいおいおい、ちょっとまってくれよ」
ひきつった声を上げるフォグ。
「おいおいおい、まてまてまて。俺とミラの嬢ちゃんは関係ない。やりあうのは勝手だが、いないところでやってくれ」
「同感。」
おい、お前らだけ逃げようとするんじゃねぇよ。
というかだな。
「ルフェル。事情は分からんが、お前の仕事は俺の護衛だろう?ここはひとつ、俺に免じて引いてくれないか?」
次いで。
「チェイスアロウさん?も。さっき自分でいってた通り、俺たちをやっても1Gにもならないだろう?」
「ふぅ。そもそも余はやる気がない。降りかかる火の粉を払うだけ。」
「・・・ちっ。いいだろう。ここは任務を優先するとしよう」
弛緩する空気。
ふぅ。やれやれ、勘弁してほしいぜ。
「話がそれたが・・・俺に聞きたいことってのは?正直、何か他人が興味を引く内容があるとは思えないが・・・」
瞬間、向けられる「こいつマジか・・・」という目線。
そんなにか?
「はぁ。なるほど。ある意味大物」
どういう意味だ?
「余も含め、あの日闘技場にいた人間はアナタと帝王の拳、そして魔神を見ている。・・・いま、あなたの情報は社会の裏・表を問わず暴騰中」
「まじかよ。」
それ、俺自身が情報量もらえたりしねぇ?
「ごほん!加えて、だ。占星術師が来訪者と魔神のセットを感知したってんで、その界隈は大騒ぎだ。俺も、俺たちも場合によっては河岸を買えないとなと思ってたところだよ。」
フォグも言う。そしてうなずくエルフの嬢ちゃん。ミラっていうのか。
「・・・凶兆が、この戦場に迫っていた。備えは必要」。
「なるほどね、聞きたいことがあるというのは分かった。だが、なんでも答えるってわけにはいかないぜ?」
俺自身、わかってないことも多いしな。
「はぁ、そうだろうね。・・・・はぁぁ。本当に面倒だけど、余は尻ぬぐいをさせた姉に借りも返さないといけない。だから、サイコロを買ったぐらいだけでなく、さらに追加の支払いをする用意がある。
なんなら、余の体でも。」
「はい?」
「はぁっ!?」
「おいおいおい」
「・・・不潔」
とんでもないことを言い出したぞ、こいつ。
「・・・?余はダークタウンの傭兵。必要なら情報の代わりに働くこともやぶさかではない。はぁ。めんどうだけど」
「あんたは、いいかたがまぎらわしいのよっ!!」
真っ赤になって叫ぶルフェル。
度胸あるな。紛らわしいってのは同感だが。
「・・・・・・紛らわしい?・・・ああ。はぁ、あなたの脳がピンクなだけ。余のせいじゃない」
「はぁぁぁあ??さっきのは誰が聞いてもそうだったわよ!ねぇ、みんな!!」
同感ではある、が。
俺は知っている。こういう時は黙っているのが吉だと。
「なんとかいいなさいよ!大体あんたらはさっきから・・・」
その時。
鳴り響く鐘の音。
カンカンカンカン!!
魔王軍襲撃!!繰り返す、魔王軍襲撃!!
・・・・・・なんてタイミングで来やがる。
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