北部草原の傭兵たち

結論から言うと、あっけなく北部草原には着いた。


野営のテントが重ねられ、物資倉庫と防護壁画積み重ねられた前線基地だ。

物資の運搬引き渡しもあっけなく終わり、いまは休憩中だ。


「ルフェル、お疲れさん。どの程度休んだら戻る?」


「疲れるようなことなどしていない。せいぜいが散歩と、血と肉が詰まった風船を何十個か殴り砕いた程度だ。私に急用何ぞ必要ない」


「おっかねぇ。」


綺麗なツラをしていてもバーバリアンか。くわばらくわばら。


「いい度胸だ。貴殿なんぞ、私がその気になれば破裂した風船にできるんだぞ。試すか?」


「オーライ、俺が悪かった。勘弁してくれ。」


前世で身に染みて学んだことがある。

怒りを発する女性に対しては、素直に謝ったほうがいい、ということだ。


「フン。まぁいい。・・・警護という兼ね合い上、あまりこの場にとどまるのは好ましくない。貴殿の用をさっさと済ませ、離れよう」


「もっともだな。俺も長居をしたいわけじゃないし了解だ。」


さて、さっさと物を売りさばいてしまおう。


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「よう、そこのフードのじいさん。いいもん揃えてるよ!買ってかないか。」


「誰が爺さんじゃボケ。まだ40代だ」


「まじかよ、見えねぇ」


黒フードの、いかにも魔術師ですと言った風貌のじいさん・・・もといおっさん。

そして一緒に歩いているのは・・・エルフか?なんだか凝視されている気がする。気のせいだろう。


「おまえ、本当に商売する気はあるのか。・・・なんだ?バクチに使う道具か?」


「あぁ、ご入用じゃないかな?」


「まぁ確かに、暇な戦場だがよ・・・」


やれやれ、というリアクションをみせる魔術師。

と、そのローブの裾を引っ張る、推定エルフ。何事かとかがんだ魔術師に、エルフは耳元でささやく。


「(フォグ、フォグ!!)」


「(ああん?なんだよ、どうしたよ)」


「(彼、私の占いで出た来訪者)」


「(・・・まじかよ、何でこんなとこにいやがる)」


向けられる二人の視線。

いったいなんだ??


「(ミラ嬢ちゃん。確か占いではLV1っていってたな、その来訪者。直に見てもそうか?)」


「(そう。しかも、今は魔神の気配もない)」


「(・・・やっちまうか?)」


「(ダメ。あっちを見て。)」


「(あっちだぁ・・・?げ!?)」


「(こっちを見ている高レベルの、推定逸脱者がいる。おそらく護衛)」


「(・・・・・・OK。となると、プランBでいくか)」


再び向けられる2つの視線。

なんなんだ。


「よぉじいさん。買わないならもういいか?」


「爺さんじゃねぇっていってるだろ。・・・あー、俺はフォグ。お前さん名前は?」


「キョウだ。」


「キョウ坊ちゃんね。どうだ、いっちょ取引と行かないか?」


「買うのか?」


「いや。だが俺はこれでも顔が広いほうでね。買いそうなやつらを連れてくることはできる。客を紹介する代わりの取引ってやつだ。どうだ?」


「・・・内容は?」


金か?


「俺と、こっちのミラ嬢ちゃんの質問に答えてほしい。


「なるほど、ね。」


さっきの視線はそういう意味か。


「いいぜ、取引成立だ」


「はぁ。その話、興味深い」


突如背後から掛けられる声。


「・・・っ!?」


振り返るとそこには。

闘技場で激戦を繰り広げた猛者。夜の瞬きチェイスアロウが立っていた。


「・・・キョウ!!下がれ!!」


割り込むルフェル。固まるフォグとエルフの少女。


「はぁ。落ち着く。余がその気なら、もう死んでいる。・・・余も、話を聞かせてもらいたい。・・・それと、サイコロはある?」


・・・・・・どうやら刺激的な話し合いとなりそうだ。

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