第3幕 北部草原 激突する魔王軍

草原道中

「はぁっ!!」


掛け声とともに繰り出される拳。

潰される魔物。


みたところ、オーソドックスな小型の動物に牙や爪を加えた小動物。ごくまれに出現する人型の小型の魔物。あれは、ゴブリンか?


それらがルフェルの拳に危なげもなく粉砕される。


「・・・さすがだな、と言っては失礼か?」


「そうだな。こいつらはせいぜい、LV5~10。成熟した個体でもLV15程度だ。たいして私はLV53。苦戦するわけがない」


「なるほどね。そりゃ安心だ。」


「貴殿な・・・。私の任務は護衛ではあるが、タダで行商の手伝いをすることではないのだぞ」


ジト眼でにらまれる。

が、運が悪かったと思ってあきらめてほしい。俺は俺で、気遣いしている余裕はない。


「ところで聞きたいんだが。普通、ルフェルのLVを雇おうと思うといくらぐらいかかるんだ?」


「任務の内容にもよるが・・・一般的なD~Cランクの冒険者パーティで日に10~20万G。私か、私の同格あたりになるBランク冒険者だと50万Gだな。」


「へぇ、それはそれは。俺は贅沢なことしてるんだな。」


再びため息。


「はぁ。そうだ、その通りだ。リリノートが貴殿に運搬任務を任せたのもそれが理由だろう。武貴が護衛についている以上、荷物の持ち逃げなんて成功するわけはなく、また道中の魔物程度にてこずるわけもない。貴殿が稼げるということにウソはないが、冒険者酒場、ギルドにとってもおいしい話というわけだ」


「なるほどねぇ。世界は変わっても、コネってのは大事なんだな」


コネ、人脈。運。

残念ながら前世でおれは恵まれなかったものだ。不足が生じているところに物や事を供給する。そんな当たり前の稼ぎが、コネの有無だけでこうも変わるとは、何ともやるせない。


「私からもいいか?・・・・・・貴殿はなぜ、ここまでして金を稼ごうとする。かつて世界を滅ぼしかけた魔神と異世界に来訪し、その日のうちに武の、暴の洗礼を受ける。


その後、信用できるかもわからない護衛・・・というか気が付いているだろう?護衛という名目の監視を引き連れて、戦場に向かう。一言でいうと異常だよ」


そうか。

そうだな。

事情を知らないものからしたらそうかもしれない。


「ルフェル。俺はな、死にたくないんだ。


この世界で、前の世界ではできなかった何かを成し遂げたい。だが、そのなにかもわかっていなければ力もない。


だが、そのなにかを見つけた時。弱者としてだれにも顧みられず朽ち果てることが内容に金がいるんだ。わかるか?今の俺にとって、金を稼ぐということが生きるということなんだよ」


まぁ、先立つものが要るという以外にチートで使うというのもあるけどな。そこまでは言わなくていいだろう。


「そうか。貴殿は、スクワッドを作るつもりなんだな」


「スクワッド?」


「同じ目的に向けて活動するチームのことだ。そしてチームとは、皆が強い必要はない。前線で戦うもの、後方で補給や補助を行うもの。さまざまだ。貴殿の向きが広報というだけでな」


「スクワッド・・・スクワッドか。いいねえ。


金で作り上げるチーム。マネースクワッドか」


何気ない道中の会話の中で、俺はこの世界でやるべきことが見えた気がした。

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