雑貨屋と銃

「ここだ」

案内されたのは雑多な商品を取り扱う雑貨屋。いかにも何でも屋、という風情だ。


「いらっしゃい」

外観の想像に違わぬ、年老いた店主が迎え入れてくれる。とはいえ、接客などが特にあるわけではなく、新聞を読んでいる。いいね、この雰囲気。


「さーて・・・何があるかな」

バクチというのは古今東西、何もサイコロやカードだけで行われるものではない。例えばチェスだっていいし、くじ引きだっていい。時には独楽や、銃の中に弾が何発残っているのかですらギャンブルになりえる。そんなことを考えていると、ある商品が目に留まった。


「これは・・・?銃?なんでこんなもんが。」


およそ中世のファンタジー世界には不釣り合いな、リボルバーと呼ばれる銃だ。雑貨屋に転がっていてよいものではないと感じるが、俺がおかしいのか?

と、思っているとルフェルはあきれたかのように言う。


「なぜときたか。貴殿がそれを言うのか?」


「どういうことだよ?」


「俗に科学、と呼ばれる技術は、貴殿たち来訪者がこの世界に持ち込むものだ。別にこの世界に来るものは、珍しいが貴殿が最初というわけではない。」


「・・・なるほどね。」


技術の流入、か。

魔法という新たな概念がある世界で、不釣り合いなもの。人・・・というよりは未知な人材が、技術が、知識が、世界にとって敵か味方かもわからない段階で流れてきているわけか。そりゃナーバスになるよな。


ま、今はいい。


「おじさん。この雑多な諸々と、この銃?ってやつ、弾はあるか?あるなら一緒に包んでくれ。」


「はいよ。弾は5発、その他諸々は・・・合わせて240Gだ。払えるかい?」


「高ぇなおい。まぁ、しょうがないか・・・。」


金を払い、旅に使えそうな背嚢とバクチに使えそうな諸々、そして銃をベルトに差し込む。いささか危険だが、護身用と考えれば悪くないだろう。


「なぁルフェル。この世界で銃って、どの程度の立ち位置の武器なんだ?」


「そう・・・だな。ピンキリだ。一般的なレベルの兵隊であれば、当たり所がよければ倒せる。だが、逸脱者以上になると、武器の性能と使い手次第だ。だが・・・」


「だが?」


「・・・過去、来訪者であるにもかかわらず銃の力で武装貴族の地位を得て、今の尚その一族が武貴8柱の座についているものもいる。


鬼哭の魔弾フロスティ。帝国最高戦力の一人だ。」


「それは、それは・・・。」


この超人が個人の力で君臨する世界で、銃という限界を超えられず鍛えられもしないものを使って最高戦力、ね。やはり世界は未知にあふれているな。


「興味はある、が今の俺にはどうしようもないことか。・・・うっし、仕入れも終わったし、冒険者酒場から物資を受け取って早速出発しようぜ!目指すは北の草原地帯だ。」


「はぁー。護衛だからしょうがないとはいえ・・・くれぐれも無茶はしてくれるなよ。」


「わぁってるよ。頼りにしてるぜ。」


こうして俺は、初の行商を終えるために北の草原に向かうこととなった。

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