はじめてのおつかい 難易度イージー
「まて、さすがに護衛対象を戦場に連れて行くのは看過できない」
ルフェルが声を上げる。
が、リリノートさんは涼しい顔だ。
「あら。戦場といっても別に最前線に送り込んで戦わせるわけじゃないわ。それに、キョウちゃんがいう稼げる方法、という質問に可能な限り真摯に答えただけよ。
・・・世の中、楽をして稼げるなんてものはないわ。お金で安全は買えるし、その逆も然り。安全で、お金は買えるのよ。」
「だが、しかし・・・」
まぁ護衛としては苦い顔をするよな。
しかしここは、俺も乗るしかない。
「ルフェル、護衛としての懸念はわかる。だが俺も、同行者との契約のため活動をしないといけないというのも、承知だろう?ここは、手間をかけるがのんでくれないか」
「・・・む、む・・・。わかった。だが、草原の補給線までだ。さすがにそれ以降は看過しかねる」
「お話はまとまったかしら?
キョウちゃんはお仕事をするのも初めてだし、まずは簡単なパッケージ運搬からどうかしら?荷物等を紛失もしくは依頼失敗したときの保証として、荷代金の50%を供託金として預かって、運搬物資を渡すわ。
いわゆる、仕入れ費用だと思って頂戴。1人で無理なく運べる範囲だと・・・そうね。200万G分から。どうかしら?」
「・・・物資量はわからないが、100万Gからにならないか?見ての通りまだまだ貧弱な身でね。ちょっと自信がない」
「えぇ、大丈夫よ。じゃ、早速準備させるわね。2時間後ぐらいにまたきてくれるかしら。」
「あぁ、良い関係を気付けることを願う」
「こちらこそ」
2時間、か。
それまでにやることがあるな。ちょうどいい時間の塩梅かもしれない。
「じゃ、いったん失礼する。また2時間後に」
とはいえあまり余裕があるわけではない。
急いで行動するとしよう。俺たちは酒場から立ち去った。
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(冒険者酒場side)
「リリノート、あんたがわざわざ出てくるなんてどうしたよ?あのあんちゃんに何か感じたのか?」
「・・・そうね、見極めのための顔出し、というとところかしら」
詳細は分からないが、帝国上層部から冒険者に対して、手出し無用の通告がでている来訪者。
だが顔を合わせてみてもその理由は分からない。しかしLV1に武貴を護衛につけるなど、明らかに異常だ。
「常識的な範囲で打算的な思考。異国の地でなにかを成そうとする意志。・・・そして何より、死というものに対する、遠い感覚。良くも悪くも、一般的な来訪者というカンジね。
元の世界で、何かが逸脱して流されてきた来訪者とは明らかに違う。・・・キョウちゃん、あなたはいったい、何?」
問いかけに対して返ってくる答えはない。
とりあえず縁はできた。これをつないでいくも切るも、まずはお試し次第だろう。
「ガーボンちゃん。あなたの権限が許す範囲で、彼には良くして挙げて。わたくしは、ギルドマスターに報告してくるわ」
「分かった。そのように、だ」
彼の価値は近いうちにわかるだろう。
なにか具体的な革新があるわけではないが、歴戦の経験上、そう予感するリリノートだった。
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「さて、と。ルフェル、少し聞きたい。戦場で行われる娯楽といえば、いったい何がある?」
・・・おや?
わずかにしかめられる顔。何か変なことを聞いただろうか?
あれか、いまだに危険地帯に行くことが看過できないのだろうか?
「・・・その、だな。」
「うん?」
「戦場というとやはり、精神が摩耗し、戦意が高ぶるわけだ。・・・つまり、その(ゴニョゴニョ)」
「スマン、良く聞こえなかった」
「・・・だから・・・あぁ!もう!!
慰安だ!!慰安!!!娼婦とのまぐわいによる慰安だ!!」
真っ赤になって叫ぶルフェル。
そして周りから集まる視線。ヒソヒソと交わされる声。
ヒソヒソ(おいおい、まだ昼間だぜ・・・)
ヒソヒソ(しかもあれ、武貴じゃないのか?いろんな意味でレベルが高いな)
ヒソヒソ(見たところまだまだ若いのに、いい趣味してんなぁ)
ヒソヒソ(リア充死ね)
・・・なるほど。
OK、わかった。俺が悪かった。
「・・・すまん。そうだ、そうだよな。一番の娯楽といえばそうなるよな。
でもほら、俺も聞き方が悪かったが知りたいのはそういうことじゃなくて、な?どうせ戦場にいくなら、ついでに個人でも利権とぶつからない範囲で仕入れをしていこうという意図でその・・・な?」
慌てて弁明する。
ルフェルも少し落ち着いたのか
「・・・あぁ。わかった。わかったともさ。少なくとも貴殿にデリカシーというものを求めるのは間違いだとわかっただけでも収穫だ。
で、ほかの娯楽か。
私は好かんが、さっきのもの以外だとバクチだな。カード、サイコロ、チェス。何でもいい。手軽に酒を飲みながらできて、かつかさばらないのがメジャーだな。」
「悪かったって。・・・ともあれバクチか、ある意味オーソドックスな流れだな。」
そして勝機もある。
「とりあえずその手の商品を扱っている店に案内してもらっていいか?」
これは思ったより大きな稼ぎになるかもしれないな。
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