冒険者酒場のガーディアン

青いショートボブ、露出の多い踊り子衣装。

そして何より、力を感じるアクセサリーの数々。妖艶で、美しく。それでいて触れ難い魅力という矛盾を両立する女が立っていた。


「リリノート、貴殿か。あまり面倒ごとをもちこんでくれるな」


「そうだぜ。キョウのあんちゃんは新顔なんだ、いささか刺激が強すぎる」


「あら?二人してひどいのね。貞淑な私は傷つくは」


・・・てい・・・しゅく??

少なくとも、格好と立ち振る舞いだけではとてもはそうは思えない。


「・・・なにか、失礼なことを考えていないかしら?」


「いえ、何も。」

どいつもこいつも心を読むんじゃねぇよ。


「そう?まぁ、いいけど。・・・あらためて初めまして。私は黄金の流水リリノート。ここの冒険者酒場のガーティアンよ。」


知識インストール

ガーディアン⇔冒険者酒場における、ナンバー2であり武力担当。

通常、冒険者酒場の支部では支部長の下にガーディアン、さらにその下に現場責任者のマスターが付く形式で運営される。


「(つまりここには、この支部のナンバー2と3が揃っているわけね・・・警戒されてるなぁ)」

だがまぁ、ここに至る経緯を考えればそれもやむなし、だろう。ここはむしろ好機ととらえよう。


「あー・・・マスター。とりあえず、飲み物を。耳が早い方なら知ってるだろうがいろいろな意味で、俺はここに来たばかりでね。おすすめを、3杯。マスターが飲んでも平気なら4杯貰おう」


「あいよ。」


「あら、わたくしにもおごってくださるの?」


「キョウ、私はさっきも言ったが護衛だ。いないものとして扱ってくれて構わない」


「まぁまぁ。」


4つの盃がおかれる。

これは、ワイン・・・?か?


「じゃあ、キョウのあんちゃんのお言葉に甘えて!新しい出会いに乾杯!!」


「「「乾杯!」」」


どうやらこれは、ワインとぶどうジュースを混ぜたものなようだ。

なるほど、おすすめ、ね。


「リリノートさん、マスター。酒飲み話のレベルで、いくつか話を聞かせてもらえないか。もしギルドの規定として問題がないなら、情報量も払わせてもらう」


マスターはリリノートさんに目配せをする。


「ええ、いいわよ。ルフェルちゃんの護衛対象であるということと、奢ってもらった分は加味してお話をさせてもらうわ」


「・・・ちゃんはやめてくれ、ちゃんは」


苦い顔をするルフェル。

だがリリノートさんはスルーだ。俺も流させてもらおう。


「実は、着の身着のままでね。何とか可能な限り、稼ぐ必要があるんだ。・・・もちろん、楽して稼ぐ話を教えてほしいなんて無茶を言うつもりはない。


だが、ここは戦争中だろ?南門から入るときに衛兵さんからも、稼ぎ時だという話を聞いた。冒険者酒場と利益を分け合える形で、なにか仕事はないか?」


「なるほど、ね。・・・ねぇキョウちゃん。戦争状態になると必要になるものってわかる?」


「必要になるもの・・・?戦力とか?」


「それも確かに大事。でもそれは、腕に覚えがある冒険者や傭兵が提供するもので、キョウちゃんには無理だわ。それはわかるわよね?」


「・・・ああ。」

悔しいがその通りだ。


「戦場に必要なものは大きく分けて3つ。


一つが「食料」。端的にいうと水と食べ物系の物資ね。飲まず食わずで戦えるものなんて、そうはいない。


二つ目が「武器」。これは整備用品も含むわ。それこそ、伝説級の武器・防具でないと欠けずに戦い続けるなんてのは無理。だ


そして最後に、娯楽。・・・嫌な話だけど戦場はストレスがたまるわ。それを発散させるものが、必要。


そして冒険者酒場としては、一つ目と二つ目を魔物や採掘資材で集めることができる。必要なのは、それを戦場に運ぶ人手」


そう言って俺の瞳をのぞき込み、言った。


「どう?私たち冒険者酒場にとっても、ギルドとしてメリットがある提案よ。運搬人と行商人、やってみるつもりはある?」

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