冒険者酒場
「ルフェル、待たせたな。」
部屋の外で待つ彼女に声を掛ける。
彼女は気にした様子もなく。
「かまわない。ところで、何処にいくつもりなんだ?」
「そこを、相談したい。知っての通り俺は来訪者でね。世間一般的な世相や情報収集、コネをつなぐ場所と言ったら、どこだい?」
「それなら、冒険者酒場だな。文字通り、冒険者が集まる酒場でギルドも併設されている」
知識インストール
冒険者⇔名前さえ登録すれば誰でもなれる、何でも屋。冒険と名が付くが、その実態は低ランクであれば日雇い労働、中ランクでモンスター退治、高ランクになって初めて未知との遭遇と対策が対象となる。
ランクはFランクからSランク、最下位は一般人と同レベル、Bランク以上が逸脱者、Sランクが英雄級です。
「・・・なるほど、ならそこにいってみるか。ちなみに、護衛として来訪が【推奨できない場所】ってのもあるかい?」
「この町周辺なら2つだな。一つが、ダークタウンだ」
知識インストール
ダークタウン⇔どの町にも存在する、町の裏側・スラムの総称。
様々な裏社会勢力や違法物品などが並ぶ危険地帯。反政府主義や指名手配犯、犯罪組織なども立ち並ぶ。
「なるほど。もう一つは?」
「北の草原地区だ。ここは戦争の前線に近い。魔王軍と小競り合いが生じている地区だ。」
「了解した。それは近づかないほうがよさそうだ。」
・・・いまはまだ、な。
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(冒険者酒場)
扉を押して入ると、一瞬視線が集中する。
たむろしていると思しき冒険者たちのささやき声が聞こえる。
ヒソヒソ(おい、あれ、武貴だぜ・・・?)
ヒソヒソ(ああ、しかも「拳」だ。おそらくあれが噂の若きエリート)
ヒソヒソ(魔拳の騎士ルフェル、未来の8柱候補、か・・・)
「・・・なんだか目立ってるな。ルフェルってもしかして有名人?」
「いささか注目を集めていることは否定しないが、よく聞いてみろ。貴殿の注目度もなかなかのようだぞ?」
ヒソヒソ(魔拳の騎士といっしょにいるにいちゃん、どっかで見聞きした風貌だな)
ヒソヒソ(ほら、あれだよ!闘技場で、ヴェルモンドの旦那が絡んでたっていう・・・!)
ヒソヒソ(マジか。王国・帝国双方から手出し無用とお触れが出てる・・・?何者なんだ)
「・・・確かに俺もみたいだな。」
「ああ。目立つことを求めるものもいるが、実際にはそれほど心地よいものではないという典型例だな」
まったくだ。
視線とヒソヒソ声をかき分け、バーカウンターに座る。
店主は筋骨隆々で、だか柔和な目をした大男だ。彼がマスターだろうか。
「いらっしゃい。初顔のあんちゃんに、ルフェルの嬢ちゃん。うわさは聞いてるぜ。」
「いい噂だと良いんですけどね。とりあえず、無職のキョウです。よろしく」
「マスター、ご無沙汰だ。挨拶が遅れてすまない」
「キョウ、ね。よろしく。俺はマスターのガーボン。冒険者酒場の現場責任者だ。で、ルフェルの嬢ちゃん、気にする必要はねぇよ。武貴として正式に認められて色々忙しかったのは聞いてる。しかもウェルモンドの旦那のお気に入りともなれば忙しさも察して余りあるぜ。」
「・・・ま、その話はまたいずれ。とにかく今の私は、キョウの護衛だ。基本的にはいないものとして扱ってくれ」
「あいよ」
その時、香る香水の匂いと足音が一つ。
「あらー?面白そうな話をしているわね。もしよければわたくしも混ぜてくださらない?」
振り返るとそこには、踊り子が立っていた。
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