side:魔拳の騎士ルフェル

・・・平凡だ。

ミドウ・キョウ。LV1。魔神の(推定)契約者。


8柱武貴の筆頭、帝王の拳・ヴェルモンド。同じ拳を使って戦うものの頂であり、一族の当主でもある彼からの直々の監視依頼。それが私がここにいる理由だ。


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(ノック)

「失礼します!魔拳の騎士ルフェルです。お呼びとお聞きしました。」


「入れ。」

響く重厚な、決して大きくなく、覇気のある声。


「失礼します」


応接ソファに座すは、この国の・・・いや。

世界の頂点の一角。


白銀の全身鎧、2mを超える長身。

8柱武貴・筆頭、帝王の拳・ヴェルモンド。その威容は衰えるどころか、ますます研ぎ澄まされているように感じる。


「よく来てくれた。まずは座れ。」


「いえ!立ったままで大丈夫です!」


「・・・そうか。だがまぁ、もし座りたくなったら言え。そうなる可能性が高い」


そうなる可能性・・・?

疑問に思う私に、声を掛けられる。


「呼び出した理由だが。直接任務を与えたい。」


「・・・!!光栄です。」


任務。

尊敬すべき、拳の頂からの。

これは、期待されているのだろうか?


「あぁ、すまない。これは俺からではない。」

その言葉に私は落胆する・・・が、


「さらに上。皇帝陛下からの任務となる。」

仰天する。


「・・・!?陛下!陛下からですか!?


ですが、私は、武貴の末席とはいえ、まだまだ未熟者です!そんな大命を受けられる身分では!」


「キサマの自己評価は分かった。だが、それは今は関係ない。大切なのは皇帝陛下はそう思っておられないということだ。そしてこの話を持ってきている以上、それは俺も同意見という意味だ。」


「・・・恐縮です」


「よし。キサマに依頼するのは、とある人物の護衛と監視。ただしこれは帝国の、いや、場合によっては世界を左右する任務だと思え。」


「護衛と監視、でありますか?・・・正直、それで世界が左右されるとは・・・?」


「実は帝国の占星術師により、魔神の来訪が確認された」


「・・・!」


「その顔、理解したようだな。そうだ。護衛と監視対象は、その魔神とともにこの世界に降り立った来訪者であり、おそらくは契約者である。


貴様の任務は魔神と敵対しないよう、その来訪者にちょっかいをだす愚か者を防ぐ盾となり、また可能なら動向を探ること。・・・・・・できるな?」


とんでもない大任だ。

思わず膝が笑い、座り込みそうになる。


だが、自分のあこがれであり目標である当主様に、無様な姿は見せられない。

膝に力を入れ、立ち続ける。


「任務、拝領いたしました!魔拳の騎士ルフェル、命を賭して励ませていただきます!」


「・・・ほう。やはりキサマは見所がある。期待しているぞ」


そうして私は、送り出された。


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だがふたを開けてみれば拍子抜けで、護衛対象は武貴はおろか冒険者ギルドの新入りにすらはるか及ばないレベル。

確かに護衛が必要だという意味は分かるが、魔神が気に入る理由が分からない。


と、考えていると声を掛けられ、意識が引き戻される。


「ルフェル、申し訳ないが少し外に出たい。同行の手間をかけるが、いいかな?」


「・・・危険地区でなければ構わない。それが私の仕事だから気にする必要もない。だが、魔神殿はいつ城からの知らせが届くか分からない。できれば残ってもらいたいのだが・・・?」


「んー?んーんーんー。まー、構いませんよー!キョウくんにいっつもべったりってのはなんだかですしねー。でも、常に引き離されるのはこまりますからねー?」


「・・・ご理解いただけて助かる。部屋の外で待っている。準備ができたら声を掛けてくれ」


・・・・・・ふぅ。

敵意が今のところないのはわかる。だがやはり、魔神と同じ部屋にいるのは息が詰まる。もっとも、こんな薄壁1枚、同じ部屋の中にいるのと変わらないのだろうが。


「・・・来訪者 キョウ。見極めさせてもらうぞ」



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