夜の瞬き

『おっとー!!チェイスアロウ選手、炎の檻に呑まれた!!


いや、檻というよりこれは、フィールド全体が超高温の炎です!!


これは、カールベルト選手が決めたか??』


盛り上がる観客と司会。

そして炎が収まったとき、立っていたのは炎の歪カールベルト。


『カールベルト選手が、立っています!!


どうやらチェイスアロウ選手は跡形もなく燃え尽きたようです!!


これが王国の特記戦力の実力か!?


勝者、カールベルト選s』


刹那。

影から延びる、カギ爪。

貫かれる、赤のドレス。


「・・・がっはぁ!?」


「つかまえたぁ」


影から這い出る、チェイスアロウ。

前身は焼け焦げ、ボロボロな様相。だが戦闘不能には、程遠い。


「・・・影に身を・・・潜める能力・・・!!」


「はぁ、そうさぁ。とはいえこんな往来の場でスキルを使ったら、奇襲性がなくなっちゃう。商売あがったりだよなぁ」


「知って・・・いたさ。だから、逃げ込む・・・影を・・・生じさせないよう、全てを炎で・・・照らした・・・!!そのはずだ・・・!」


「はぁ、なんていうかさ、異名って自分の手口を示してるみたいでやだよね。誰がつけてるのかなぁ。・・・それはそれとして、確かに影はなかったよ。炎も原理としては光の一種で、光ですべてを照らされると影は消滅するからね。


でも残念。

余は自分のスピードで、衣をやぶってとっさに袋を作り、内側に影を作り出したのさ。ま、それでもギリギリだったけどね」


言いながら、胴を貫いたカギ爪を捻る。


「種明かしはこれでいいかなぁ。じゃ、死のうかぁ」


そして引きちぎる瞬間


「おまえ・・・もな!!」

吹き出す、火炎!!


「・・・・っつ!!」

炎を防いでいた防具は、ない。飛びのくチェイスアロウ。


「ぐううぅぅう」

燃えさかる腕と体。だが、回避はかろうじて間に合い


「はぁ。このっ!!」

「ゴホ・・・お前は・・・私が連れていく・・・」


再度ぶつかる、爪と炎。

だが


「ぐぅうぅう・・・!」

身を守る防具はなく、燃える体。


「ガッ・・・!!」

胴に穴が開き、限界まで行使した魔導と体。

血が吐き出される。が、傷口を焼くことによる止血と、なにより戦闘を続ける意思。


『止まらない!!止まらない!!!


耐火防具を失い、半身を焼かれたチェイスアロウ選手!!しかし持ち前のパワーとスピード、そして影に入り込む能力はまだ健在!!


穴が開いた胴を焼いて止血し、ふらつきながらも猛攻を続けるカールベルト選手!!だがこちらも、炎による蜃気楼を作り出す精密性は失われている!!執念で立っている!!戦っている!!


勝つのはどっちだ!!』


「スキル<沈影>!!」

再び、影に潜るチェイスアロウ。


「(はぁ、時間は、余の味方だ・・・!!このまま時間経過で弱るのを待つのも良し、影から奇襲するのもよし、だ!!)」


それは、遅延戦術。

だがそんなことは、カールベルトも承知で


「・・・大規模・・・マジック!!<太陽の種火>」

巨大な炎のたいまつにより、照らされる闘技場。


「はぁ!?なんの、つもりだ・・・?」


「・・・影に潜む、能力は・・・出口となる影が、存在しないと出られない。・・・違う?ゴホッ。


その力、果たして無リスクで陰に潜み続けられる・・・?

違うわよね。なら、最初からずっと・・・攻撃が当たらない影にいるはず・・・魔力か、呼吸か、それとも時間制限か・・・何らかの制約があるはず。


私が闘技場の影を消し続けられるのが長いのか・・・それとも・・・私の賭けが外れて・・・倒れるまであなたが影に潜み続けられるか・・・勝負よ・・・!!」


「この・・・!!」

まずい。この賭けは・・・まずい!!


瞬間。

砕けるたいまつ。


「「はぁ?」」


「そこまで。」


闘技場に降り立つ、2mを超す長身の全身甲冑。


「・・・あなた、は。」

「はぁ。とんだ大物がきたなぁ」


帝国、最高戦力。

8柱武貴、第1柱。


帝王の拳・ヴェルモンド・LV100。

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