異世界の上澄み
「・・・なんだ、これは」
俺は観客席で、見えない戦いを観ていた。
「どーだいー?わかったかなー?これが、【逸脱者】さ。」
人間の動体視力を超えて動く、黒。
だがその黒を、炎という実態を持った幻でカウンターして焼き、さらに不可視な場所から突如現れる炎。
戦いを知らぬキョウにとって目の前の光景は、理解を超えていた。
知識インストール⇔王宮魔導士
王国が誇る特記戦力の一角、様々な体系が集まった魔導士の最高峰。
一般的な魔導を術として行使するものを「魔術師」、星読みの力を占いや召喚術として行使するものを「占星術師」など、様々な区分があります。
「最高戦力の、一角。こんな奴らが何人もいるのか・・・」
「そーだねー。ま、赤い彼女。正直、逸脱者としては真ん中らへんってとこじゃないかな?仮にも魔族と戦争を繰り返している国家の戦力、そんなに底が浅いはずはないかなー」
「・・・裏社会なんて掃き溜めに、それと渡り合える奴がいるのかよ」
「うんうんうん、そーだねぇ。それだけ世界は歪ということだよー。ま、今は観戦しようよ」
そうだな。
だが、結果がどうなるにせよ、色々な見積もりは変えないといけないかもな。
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回る、回る、回る。
刻む、刻む、刻む。
神速の脚力と、人知を超えたパワーとカギ爪。
正に獣人がなせる神速の戦闘に、闘技場はキズだらけだ。
『チェイスアロウ選手、高速でフィールドを駆け回り無差別攻撃だ!!
炎をかわしつつ、姿が見えないカールベルト選手を見つけるべく爪をふるいます!!
おそらく実体が消えているわけではないカールベルト選手は果たしてどうなる!?』
「はぁ。闘技場、という場所が不利だったね。キミの魔法の効果範囲は分からないけど、闘技場というフィールド制限がなければ、余のほうが不利だったなぁ」
とはいえ。
地形は味方するが、LV差は13。
一般的な戦争剣士と、正規軍程度には開いたLV差は、決して無視できる差ではない。
「あら。負けるのは地形のせいだと言いたいの?思ったより女々しい男ね」
「はぁ。何か勘違いしているみたいだけど、余は女だよ」
「・・・それは。ごめんなさいね」
緩やかな会話。
弛緩した空気が漂う。
だがそれは、油断にあらず。両者が「戦闘」という行為を、「日常の行い」として行っているという所作である。
「(ルールによって縛られているがゆえに、移動範囲が狭い地形。いつかは捕まるわね)」
それは、常軌を逸した熱温度とコントロール。
炎の熱により蜃気楼を人為的に作り出した炎の歪、カールベルトは幻影に紛れ実体を隠し、生じた炎で分身を、そして反撃に転じる。
だが。
「はぁ。確かにすごい熱のコントロールだけど、その程度の炎じゃあかすり傷だなぁ」
それは、獣人ゆえの特性か。
いや、それにしても度が過ぎている。カールベルトの炎は、「その辺の魔導士・魔術師」のレベルをはるかに凌駕する。
「・・・・・・その装備、耐炎かしら。ちょっと非常識なレベルね」
「はぁ。余の種族は毛皮で氷に強い分、ほかの属性で攻撃されることが多くてさぁ。だから、その対策はしている。当然だろう?」
「・・・そうね。悔しいけれど」
「そこかぁ!」
刹那。声の発生源に振るわれるカギ爪。
引き裂かれる実体。・・・・・・・だが。
カキン!!
弾かれる、カギ爪。
「!?」
想定以上の防具性能!!だがそれよりも着目すべきは、魔力で編み込まれた見えない鎧!
「取った!カウンターマジック、<炎の檻>!」
足元から吹き上がる炎。
だが、速度が足りない。
「あたらないよぉ」
「でしょうね!」
足元から吹き上がる炎に気をとられた、刹那。
「大規模マジック、<炎の檻>!」
それは、布石。
「はぁ!?フィールド全体から!?」
「あなたは速い、熱に強い。でもそれなら、ダメージが入る量で、フィールド全体を覆いつくしてしまえばよいだけね。・・・地形が、悪かったわね」
起動から蜃気楼を作り出す熱量の炎。
戦いが始まってから現在まで、隠れていただけにあらず。
炎を生み出し続け、そしてそれを魔導に編み込み続けていた。
そして夜の瞬きチェイスアロウは吞み込まれる。
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