第1幕 闘技場
010.都市への門
帝国辺境都市カローパット、南門。
「よう兄ちゃん、観光か?それとも商売か?なんにせよ、いい時期に来たな」
門番衛兵が気さくに声を掛けてくる。
「いい時期ってのは?北の草原地帯では戦争をやってるんだろ?とてもじゃないがいい時期とはいえないんじゃないか?」
「おや?兄ちゃんその辺知らねぇのか。じゃあ、仕事として説明させてもらうな。」
親切な衛兵である。
「まず、観光という意味なら目玉は【闘技場】だ。まぁこれもコテコテだが、今は戦争中でな、いわゆる【逸脱者】同士の戦いが見られる」
知識インストール⇔逸脱者
LV50を超えるものの総称。
ちなみに一般人がLV1~5、戦闘を生業とする一般平均が20~30、80を超えるものは英雄とよばれます。
「・・・なぜ、戦時中だと逸脱者があつまるんだ?」
「いわゆる【徴兵】と【恩赦】だ。前者は、賞金などを餌に高レベルの参加者を呼びかけ、軍に徴兵・・・というかスカウトする。
後者は指名手配されている高レベル犯罪者に対して、強さを示せば罪を免除する代わりに戦争に戦力としてぶち込まれれば恩赦する。そういった名目で参加者を募る流れさ。ついでに賭けも盛り上がって、その上がりが戦費に賄われるって寸法よ。」
「なるほど、合理的だ。で、商売としては?」
「それもシンプルで、人も物も何もかも足りねぇ。兄ちゃんに何か技術やノウハウがあるなら相場より高い金がとれるし、なくても健康な体があるなら物資の運搬で稼げる。そーいう話よ。」
「こっちも承知した。丁寧にどうも。」
「いや、いい納税者になってくれ。トラブルはご免だぜ?」
門をくぐり、町に入る。と、そこで話しかけてくる邪神。
「キョウくんー、キョウくんー。取引、の続きだよ。キミがまず見るべきは、闘技場での対戦。逸脱者同士のバトルでだよ!」
「あぁ?なんでよ?」
正直、こちとら平和な元日本人。野蛮な殺し合いになんて興味はない。
「それはだねー。今後、どーするにせよ、【世界のレベル】というものを、知識だけではなく実感として知っておくべきだとおもうからだよー。
・・・これは冗談じゃあない。【ボクが楽しむために必要だと思う知識】としての、心からの忠告だよ」
・・・なるほど?
・・・・・・なるほど。腑に落ちないことは、ある。そもそも戦うつもりがない俺が、なぜ闘技場なんて言う場所に行く必要があるのか。
だが、チートというルールに沿った、邪神自身からの心からの警告。
これを無視する心臓は、俺にはない。観戦自体にさしたるデメリットがないのであれば、素直に言ってみるべきだろう。
「わかったよ、宿を確保してまずは闘技場だ。行ってみようじゃねぇか」
「ええ!わかってもらえてうれしいよー!
キミは知るだろう。本当の意味でここは、異世界だということを」
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