003.邪神は異世界で遊びたい
「異世界だぁ?またべたな展開だな」
「好きでしょう?べた、王道。展開が使い古されていることは否定しませんが、ネタがこすられ続けるのはそれなりの理由があるのですよ」
・・・まぁ、そうだな。
物事は「誰も思いつかなかったこと」というラベルにまざって、「誰かが一度は思いついたけど、やらなかった」ことがある。
つまり、奇をてらう必要はない物事というのも存在する。その区別ができないと失敗するというのは副業起業(大失敗)で文字通り、身に染みるほど学んだ。
「つまり、あれか?王道に剣と魔法のファンタジー世界で、魔王でも倒せってか?」
「やーほら、導入の流れは王道でも、コンテンツとしてはそれだと楽しめないと言いますか?知識の海に消えていったその手の物語って、数千・数万ではきかないですし?」
「それな」
世の中には1件の成功の裏に、数千・数万件の失敗例と打ち捨てられたやつが転がっているわけだ。ソースは俺。
「と!いうわけで!!人生転落してお金に振り回されてこんなところまで落ちてきたキョウさん!あなたには「お金の力」で異世界を切り開き、魔王を倒してもらいます!!。まぁ別に倒さなくても良しですが。パチパチパチ~!」
「はぁ?金の力だ??」
何やら話の流れが怪しくなってきたぞ?
「そう、お金の力!そもそも力とは何か?
剣や身体能力、軍事力といった【武力!】
魔法や科学、理論力といった【知力!】
交渉や話術、人に言うことを利かせられる力といった【権力!】
そしてそして!それ単品では意味がなく、でもすべてに対して代替できる【財力!】
ほかにもいろいろありますが、ズバリ今回のシナリオは【財力!】つまりお金の力で遊ぼうというわけです」
「いやまてや」
遊ぶっつったか、こいつ?
「イエス!ぶっちゃけまー、神も邪神もこう、娯楽が足りないと言いますか。ありきたりな人生、ありきたりな物語、それを覗き見て職務をこなすだけだというのは退屈なんですよね。と、いうわけで!そんな退屈をしのぎぐための【プレイヤー】として選ばれたのがキョウくんです!やったね!!」
「どの辺に、やったね要素があるんだよ」
「や。だって。さっきも言いましたけどキョウくん、死にましたし、仮に生きていても死んでるよーなもんじゃないですか。それなら異世界転生して、好きに生きてみませんか?」
・・・それは。
「キョウくんに限らずですが。人間、全てを失って、何の価値もなくなる人がいます。神様ポイントとしては、そんなセルフ苦行な世界で何やってんだろうなー?と思いますがそこはそれ。
いいですか?
全てを失った。全てが無価値だ、ということを悲観する必要はありません。
何もないがゆえに、あなたは自由なんです!!」
・・・・・・。
・・・・自由、自由か。
「はい!自由です!
あなたはのたれ死ぬ自由がある!
全てをやり直して働き、平和に生きる自由がある!
現状を変えようとあがき、変えられず、搾取され続ける自由がある!
法もモラルも投げ捨て、奪う側に回り、いつか奪われる日をおびえて生きる自由がある!
そして何より、さらにあなたは今、見知らぬ場所で未知に挑む自由もある!
あくまでボクはその【自由】に新たな、そしてボク自身も楽しめる選択肢を提示しているにすぎません、どうですか」
「とりあえずおまえが人を惑わす邪神だというのは分かったよ。」
「心外ですね。真実しか語っているつもりはないのですが」
「だから余計にタチが悪いって話だよ」
でもそうか・・・自由。
自由か。そんな風に考えたことはなかったな・・・
なら、俺は・・・
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