初めての狩り・二回目
チュートリアル区画から最初の街へと戻ってすぐ、俺は提案した。
「とりあえず幾つかプランは思い付いたけど、まず買い物したい。ノンと違って武器や防具を揃えないと、経験点稼ぎすら厳しそうだ」
「ほえ? なんで?」
「【噴出力】の数値が伸びにくいからだよ! 盾とか鎧とか……なにか物へ伝わせなきゃ、身を護るのにも苦労しそうだぜ」
一応、【噴出力】の数値を伸ばす予定ではあるも、おそらく力関係は最後まで変わらない。
これは強弱でなく特性と見做すべきで、受け入れていくしかないだろう。
「ボクも武器や防具があった方が良いかな?」
「むしろノンは要らないと思うぜ? 『オーラ総量』に連動して『基本出力』は増えていくようだし、ノンは+%ボーナスまで乗るだろ?
なら小細工不要! いわゆる脳筋ビルドでOKじゃないか」
『脳筋』という響きに凄く不満そうだったけど、しかし、なにも言い返してはこなかった。
……このゲームのAI、かなり性格判断が上手いなぁ。ノンにピッタリの適正だし。
そんな風に無駄話をしながら大通りを冷やかし歩いていたら、ようやくに目当ての品物を発見できた。
「やっぱりだ! 銃器も売ってる! しかも安いのが!
異能力もので銃器を使う登場人物がいるの、前々から不思議だったんだけど……あれって俺みたいな事情だったんだろうな」
露店で
「……どういうこと?」
「ノンだったらオーラを放つ技の方が強いだろうし、コスパ良く習得も可能だと思う。なにより実物が要らないしな。
でも、俺だと遠距離攻撃は、射出機構に頼るしかないようだし――
もちろん気弾とかじゃなく、実物へオーラを込めなきゃで――
そこまでやっても手許から離したら、すぐにオーラが霧散しちまう」
「ああ、だからピストル?」
「……ハンドガンだよ、ノン。
銃器なら込めたオーラが霧散するより先に、相手へ弾が届くだろうからな。俺でも遠距離攻撃できそうだ」
「それで
「まだ、そこまでの予算がない。異常に貧乏だけど……チュートリアル周回での集金対策されてんのか、これ?
というか『自作の』もなぁ……色々と
とりあえずハンドガンを試してみるべく、一番安いのを買う。……これは伝説ともなった
そのうち『特注品の』で『愛用の』な『特別弾』へ買い替えるとしても、実物に頼ったスタイルでは、長所と短所を併せ持つことになりそうだ。
「防具は? 最低でもコートが欲しいって言ってなかったぁ?」
「とてもじゃないけど防具まで予算が回らない」
悲惨な現状報告へ難しい顔を見せつつ、ノンはノンでオープンフィンガーグローブを試着していた。
やはり格闘スタイルなら欲しいだろうし、ノンも初心者用の支給品だけでは賄いきれないか。
「……あのさ、ハルト? ボクらって、すぐにでも金策始めた方が良いんじゃない?」
「……だな。とりあえず狩り行ってみっか」
そういうことになったのに――
大した成果を挙げられなかった!
さらに弾切れで買い付けへ戻るしかなくなってしまう。
「
「よ、よく分かんなかったけど、なんか上手くいかない!?」
ノンも同意してくれたが、しかし、狩場のギミックは言語化できなかったようだ。
「それに不味い!
「逃げた『虹色鳥』へ、狙いを外しまくってなかった!? そんな狩れてないよね!?」
「だって、この銃! 弾が真っすぐ飛ばねぇんだもんよ!
ノンだって『叫びゴブリン』を手早く処理しないから!」
「あ、あれを素手で触るのヤダ! ばっちい!」
珍しく女の子らしい不満を口にする。……だけどグローブ越しならいいのか?
「しかし、舐めてたぜ……ドロップの不味い『叫びゴブリン』は、
会敵必殺で皆殺しの脳死プレイじゃ上手くいかないようなってんな」
「うー……なら、どうすんのさぁ」
「そうだな――
一、相手の挙動なんか無視してしまえる超戦闘力で処す
二、『虹色鳥』が逃げようと、確実に倒せる遠距離攻撃方法を確保
三、『叫びゴブリン』とかの邪魔者に絡まれないよう、忍びながら狩る
かな?」
しかし、まだ異能は習得したくなかったし、かといってアイテム類で解決も財政的に難しい。
まあ少なくとも経験点は入るから、しばらく貧乏生活に耐えるようか?
「四、初心者向けのクエストで稼いでからリベンジ
ってのもあるぜ、
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