第8話 はらつい・孕ませましたがなにか? ~勇者パーティ内で女性メンバー全員を口説いて回った最強チートの俺が、リーダーにばれて追放? だが、もう遅い~

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↓「第01話 いやいや、それはお前のセリフではないだろ」

「そろそろ、魔族の勢力下を大分進んだと思うがどうだろう?」




 俺は小高い山に駆け登り、高い木を見つけて辺りが見渡せる枝の上に立つ。そこで、目に望遠魔法をみょんみょんとかけて、辺りを見渡す。すると、一尾根越えた平原に、炊飯する煙が幾つも立ち上っている。




「こんな所に炊飯する煙? 王国連合軍はここまで進行していないだろうから、魔族側の亜人の軍勢が駐屯しているのか?」




 そこで俺は考える。ここから遠距離広域魔法を撃ち込んで殲滅してやっても良いが、もしも王国連合軍だったら困る。




「直接行って、確認してみるか」




 俺は、姿の消える隠蔽魔法と物音をたてない遮音魔法をかけて、木から飛び降りて、炊飯の煙が上がる場所へと向かう。本来この様な偵察任務はネイシュの担当ではあるが、実の所、ネイシュより上手く行える自信はある。俺はアソシエの様に単体・広域問わず、攻撃魔法を使えるし、ミリーズの様に回復・支援魔法も使いこなせる。そして、ネイシュの様に隠密・偵察・罠解除などお手の物である。




 そもそも、団体行動があまり好きではなく、ソロ活動を行っていたので、本来であれば、担当を割り振って行う事を自分ひとりで行っていたからだ。一般人であれば、一つ極めるのに膨大な時間と労力を必要とする所ではあるが、異世界転生するときに再構築された身体はホント高性能であり、様々な技能の習熟が驚く程早い。


 


 だから、一人になった今も別に大変だとは思っていない。逆に仲間を気にせず。無茶苦茶出来る。俺はちょっとした解放感を味わっていた。




「そろそろ、見えてくるな…なんの軍勢だ?」




 俺は立ち止まって、森の中から、軍勢の様子を伺う。すると、豚を人間にしたような亜人であるオークの姿が見えてくる。




「オークかぁ…」




 俺は少し落胆の声をあげる。オークの軍勢は煙の数とここから見るに千人ぐらいの軍勢であろう。ここから攻撃魔法を叩きこめば、容易く全滅させる事が出来る。


 しかし、一般人にとって大規模であるが、軍隊や俺達にとって小規模の、しかもオークの軍勢を全滅させた所で大した手柄にはならない。


 俺はうーんと頭を捻って考え込む。




「ボスを捕まえて、情報を吐かせるか」




 俺は隠蔽魔法をかけたまま、オークたちの駐屯地へ近づく。遠くから攻撃魔法をしかけてはボスまで倒してしまうからである。




 駐屯地の中に入ると、自分たちで作った物か、それとも人類から奪った物かは分からないが、粗末な武装をしたオークたちが、せわしなく野営の準備をしていた。




「おっ、炊飯はしているが、まだ飯は食ってないようだな」




 炊事担当のオークが忙しなく、パンを焼いたり、なんだか分からないスープを作ったりしている。




「丁度いい、スープに毒を仕込むか」




 そう言って、俺は思い出しながら魔法を使う。魔法が完成した所で、スープを調理している近くの物を落とし、調理しているオークがその落ちた物に気が向いている隙に、スープに魔法で完成した毒を仕込む。




 この魔法は俺が編み出したオリジナル魔法で、最初は眠気が出てきて、そのうち完全に眠り込んでしまう。そして、眠ったまま死に至る魔法なのだ。これはこうした軍隊の食料に仕込む為の魔法で、直ぐに死んでしまっては毒がばれて、全員食べなくなってしまうので、わざと効き目を遅くしたものだ。だから、後はゆっくりと待てばいいだけ。様子を見ていればよい。




 そうしていると、出来上がったパンとスープを大盛にして、一人のオークが何処かに運んでいく。




「よし、これだな。こいつの後についていけばよい」




 亜人の習性からすると、食事は先ず初めにボスの所に持っていく。だから、こいつの向かう先は俺が探しているボスだ。




「あたりだな」




 思った通り、給仕のオークは天幕の一つに入っていき、中を確認するとオークたちより一回り二回りでかいハイオークがいた。おそらくこいつがボスだ。




 ハイオークは渡された食事をがつがつと食い始める。そして、天幕の外でも、皆、食事を始める音が聞こえる。あとは一時間程待てば、皆、眠り始め、そして死に至るだろう。




 そして、一時間後。オークの軍勢はボスを含め、一人残らず眠り込んでいた。俺は探知魔法でオーク達の状態を確認した後、ボスのハイオークに拘束魔法をかけ、引き続き解毒魔法をかける。ボスまで死なれては情報を聞き出せないからである。




「おい、起きろ」




 俺は地面に横たわるハイオークの頭を蹴り飛ばす。ハイオークは解毒魔法と俺から蹴りを食らった事で、眠りから覚醒し始める。




 そして、眠りから目覚め、隠蔽魔法を解いた人間である俺の姿と、自分自身が拘束されている事に気付く。




「おいおい、騒ぎ立てても無駄だぜ。お前の仲間は既に、毒であの世行きだ。お前には誰の助けもないぜ」




俺のセリフにハイオークは、蒼ざめながら顔を歪ませる。




「くっ!殺せ!」




ハイオークは俺を睨みつけながら言う。ん?なんだそのセリフ…




「いや、お前は殺さない。お前には色々と情報を吐いてもらわねばならないからな… 嫌だと言うなら、その身体を痛みつけるまでだ」




俺は拷問を仄めかして、ハイオークを脅す。




「我が肉体をどれほど痛めつけ、辱め様とも、我が心だけは自由に出来ぬ! 決してくじけないぞ!」




「なんで、オークであるお前が女騎士みたいな事言ってんだよ!」




「さぁ!殺せ!」




 なんだか嚙み合わない会話に段々腹が立ってきて、俺は剣を抜く。そして、少し脅す為に肩の辺りを少し刺す。




 ぷつり




「いやぁ~!! 痛い! 血! 血がでてるぅ!! 痛い! 痛いよぉ~! ママん! 痛いよぉ~! 助けてよ~! ママぁん!!」




 刺した瞬間、先程の毅然とした態度とは打って変わり、ハイオークはまるで、転んでケガをした幼児の様に泣き始めた。




「おまっ! なんだよ! くっころとか言っておきながら、ちょっと刺したぐらいで泣き出して!」




「だって、だって… こんな奥地で戦ったことなんか無いから、怪我したことも無いし…」




 なんだよ、こいつ。こんな奴がここの大将やっていたのかよ… 逆に魔族側の人材が心配になって来たわ…




「まぁ、どういでもいいや。そんな事より、お前の持つ情報を洗いざらい吐いてもらうぞ」




俺の言葉にハイオークは、それはそれは見事な服従の姿勢を示した。


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↓「第02話 追放は仕方ありません」

 さて、なんで俺が一人で魔族の勢力下にいたかと言うと話は少し前に遡る。


俺はパーティーのリーダーである勇者ロアン・クラースに重大な話があると言われて、ロアンの部屋に行ったことから始まる。




「イチロー… 君は追放だ」




俺の目の前の、金髪碧眼の精鍛な顔をした青年が俺に告げる。




「理由は分かっているよね?」




目の前の青年、勇者であるロアンはその瞳を細めて、そう訊ねる。




「さぁ…知らないな…」




なんとなく、理由は分かるような気がするのだが、そうであって欲しくない気持ちで、ロアンから視線をそらせながら俺は答える。




「ふぅ… 君という人は全く… みんな! 入って来てくれるか?」




ロアンはふぅと溜息をつくと、隣の部屋に繋がる扉に向かって声をかける。


すると、三人の少女がぞろぞろと部屋の中に入ってくる。




一人目は、セミロングのローズヘアーで、少し釣り目の赤い瞳。魔導士のアソシエ。


二人目は、明るいオリーブのゆるリッチウェーブのおっとり銀眼の聖女ミリーズ。


三人目は、アッシュなエアリーウルフボブの感情を感じさせない緑眼。スカウトのネイシュ。




三人の視線は全て俺に集中する。




「こ、これはどういう事なの!」


「これは困りましたわぁ~」


「ネイシュ…どうすればいいのか分からない…」




三人がそれぞれ、俺に訴えかける。




「僕はね… 男女関係については、あまり煩く言いたくない。パーティー内の仲が良ければそれでいいと考えていた… だが、しかし…」




ロアンが怒りに肩を震わせながら、拳を握り締める。




「全員を妊娠させるとは! どういうつもりなんだ!!」




ロアンの怒声が部屋の中に響き渡る。




 あちゃ~ やっぱり、そうだったのか… 最近、お腹が大きくなってきているとは思っていたが、俺はその可能性から逃げる為、あれは食べ過ぎで太ってきていると、自分に思いこませていた。まぁ、彼女らの食べ過ぎと思いながら、俺が彼女達を何度も頂いていたのではあるが…




「どういう事なの!イチロー! 私だけを守るのではなかったの!! どうして、ミリーズもネイシュも妊娠しているのよ! ねぇ!答えなさいよ!!」




 そう、怒りを露わにして叫ぶのが魔導士のアソシエ。


 彼女は貴族の出て、勝ち気で気位の高い少女であるが、優秀な君だけを守る騎士になりたいと言えばコロリと落ちた。大きくもない小さくもない丁度良い大きさの胸、普段は勝ち気だが、夜は受け身の身体は、大変、おいしゅうございました。




「なんで妊娠しているのと申されましても、イチロー様が、毎日、死に直面しているなかで、生の実感が欲しいと申されまして、わたくしと致しましては迷える子羊を放っておく事はできません… それでイチロー様を受け入れ、そんな事を何度も繰り返しておりましたら、授かってしまいました」




 包容力があるというか、人が好過ぎるふうに答えるのが聖女ミリーズ。


 彼女は大神殿で聖女と呼ばれる人間であるが、魔族との戦いの為、パーティーに加入したらしい。人からの頼み事は断われない性格で、試しに彼女の言うように、毎日の戦闘でいつ死ぬか分からないから、生きる実感が欲しいと迫ったら、なし崩しで受け入れてくれた。母性を感じさせる大きな胸、吸いつくような白い肌は、大変、美味でございました。




「ネイシュは愛を知らなかった… だから、愛を教えてもらった。今、お腹の中に愛の形がある。だから、嬉しい…」




 普段の口調は無感情であるが、少し嬉しそうに言うのが、スカウトのネイシュ。


ネイシュは暗殺者として、特殊な育成機関で育てられていたらしいので、普通の年頃の女の子が持つ恋愛感情と言うものを全く知らなかった。なので、愛を教えてやるといって迫ったら、驚く程簡単に落とすことが出来た。小ぶりで敏感な胸に、小柄で華奢な、少し犯罪臭と背徳感を感じさせる身体は、大変、珍味でございました。




「イチロー・アシヤ。僕はね、君の剣術と魔法の腕を高く評価していた… だから、多少の事は目をつむっていた… だがしかし!この現状は看過できない!」




ロアンは整った顔を怒りで歪め、怒声をあげる。




俺の名はイチロー・アシヤ。日本語でちゃんと言うと、『芦屋一郎』だ。




そう、俺はこの世界の人間ではない。日本人だ。つまり、俺は異世界転生者だ。




 俺は自慢のゲーミングPCでVRヘッドとヘッドホンをしながら、ゲームをしていた所、火事に気付かず、そのまま焼け死んで、この世界に来たようだ。この世界に来るに当たって、肉体は再構築されたようで、いわゆるチート能力と新しい見た目を持って転生した訳だ。




「だから、最初にも述べた様に、君にはこのパーティーから脱退してもらう…追放だ!!」




再び、ロアンの追放の言葉が、部屋の中に響き渡る。




 俺はこの有り余る力を持って、この世界でリアルな狩りを楽しんでいた所、このパーティーのロアンに目を付けられ勧誘された訳だ。




 最初はソロで活動する事を望んでいたのだが、ロアンの話を聞くところ、世界は今、魔族と王国連合との戦争状態で、危機的状況にあり、王国連合軍が軍事的に魔族の進行を押さえている間に、魔族側の将軍などの重要人物の殺害を目的に、幾つもの勇者パーティーが設立されたそうだ。ロアンのパーティーもその一つである。




 そんな人類の状況を聞かされて、手を貸すことにやぶさかではないと考えたが、一番の理由は勇者特権である。勇者特権とは、魔族との戦時下、その魔族の勢力下に少数で侵入し、そして、重要目標を倒すという、非常に危険な任務を任される者たちに与えられたものだ。


 例えば、どこに行っても最高級の宿に泊まれ、物資が乏しい中、最高の食事をタダでする事ができる。また、王族や貴族との面会も容易くできて、その支援を受けれたり、情報を共有する事ができる。そして、まぁ… 頼めば幾らでも女を抱く事もできた。




 だから、パーティーを追放され、勇者特権を失うのは痛すぎる!




 特権を失えば、美味い飯を食う事も、女を抱きまくる事ももう出来なくなる! 




俺は背中に脂汗を掻きながら、頭をフル回転にして、必死に追放されない言い訳を考える。




 何かないか!何かないか!




必死に言い訳を考えていると、こんな状況でありながら、俺の事を心配する三人の姿が見える。




 これだ!




俺は三人の姿を見て、ある言い訳を考え付き、慣れない演技をしながら口を開く。




「お、俺は…アソシエ、ミリーズ、ネイシュ。三人の事が心配だったんだ! これ以上彼女たちを死地に向かわせたくなかった… だから、前線から身を引いてもらう為に、はらませたんだ!」




 自分で言っていて、かなり無茶苦茶な言い訳であるが、これ以外の言い訳が思いつかなかった。しかし、皆はその言い訳を聞き入っており、言い訳を言い終えると部屋が静まり返る。




 そして、暫くしたのち、俺の言い訳を、目を閉じて聞いていたロアンが、ゆっくりと目を開き、真剣な趣で言い放つ。




「イチロー君。例えそうであってもだ… 決戦の近い、この人類の命運がかかった時期に、私情で、貴重な戦力である彼女達を前線から下げる事は、人類としては許されざる行為なのだよ… 僕は本当に君を高く評価していた… だから、残念で仕方ない… だがしかし、君の追放は決定事項だ。これに変更はない」




俺の追放が確定した瞬間である。


______________________________________

↓「第03話 孕ませる前に考えろとか無理だわ」

「ふぅ、これだけあれば暫くは食いつなげれるか…」




 俺は財布の中の金額を見て呟く。と言っても、この金は俺の金ではない。俺自身は勇者特権を当てにしていたので、殆ど稼ぎを残していなかった。だから、無一文で追い出される所であったが、こんな俺に対して、アソシエ、ミリーズ、ネイシュの三人はそれぞれ、こっそりとお金を渡してくれたのだ。




「行き倒れたら、わ、私が困るんだからっ!」




そう言って、ツンデレしながら持ってきたのが、アソシエ。




「一人で行かれるのは大変です。これを持って行ってください」




俺の身を案じて、心配そうに言うのがミリーズ。




「付いていけないから、これを… ネイシュ、待ってるから…」




俺の事を信じて言うのがネイシュ。





 三人と事に及んだのは、何日も続く冒険中に、持て余す性欲を押さえきれなかった為で、つまり、若気の至りである。がしかし、何度も身体を重ねれば情も映るし、こうして、旅立つ俺に自分の金を惜しみなく渡してくれる思いは、自分でもゲスだと思う俺でも、その情は拭い去る事はできない。




「さて…行くか」




そう言って、俺は街のはずれから、魔族の勢力下に向けて足を進める。




何故、魔族の勢力下に向かうのかは、先程の追放時に話は遡る。






「で、イチロー君。君はこれからどうするんだい? 彼女達の故郷へ一緒に帰るのか?」




俺の事を追放したロアンであるが、俺の今後を訊ねてくる。




「お、俺は…」




そう言いながら、俺は頭の中で必死に考える。




 どうする?このまま追放されては、もうあのやりたい放題、贅沢三昧の日々を過ごすことは出来ないし、この戦争が終結しても、追放された俺には恩賞は出ない。しかも、三人の女と三人の子持ちになるんだぞ? どうして食っていくんだよ、いや、アソシエとミリーズの実家なら金があるから生活の心配はないな…それに恩賞があるから、ネイシュとでもやっていけるだろう。でも、ヒモ生活? それは、カッコ悪すぎる! そんなのは嫌だ!




では、どうするか…




「俺は一人でも魔族と立ち向かう!」




俺はロアンに言い放つ。




「イチロー君! 本気なのか!」




ロアンは俺の言葉に、目を丸くして訊ねる。




「あぁ、本気さ。これから生まれてくる子供たちの為にも、追放者ではなく、魔族と立ち向かった勇者でありたいんだ! それに、もともと彼女たちを下げて、俺とロアン、お前と二人で戦うつもりだったからな」




 俺は、そうカッコよく告げるが、実の所は別の理由である。それは、勇者特権である。今現在、勇者特権はロアンとそのパーティーメンバーに与えられるが、追放された俺には無くなる。では、どうすればよいか?それは俺自身が手柄を挙げ、勇者と認められることである。そうすれば、再び勇者特権を手に入れる事ができる。




「…本気なんだね…」




冗談ではない事を理解して、ロアンは瞳を元に戻す。




「あぁ、本気だ」




俺はロアンに短く返す。




「分かった… 君の実力はよく分かっている。君であれば、そんな無謀な話ではないだろう… しかし、彼女達三人の為にも無茶はしないでくれよ…」




 ロアンは自分が追放すると言った手前、俺が自暴自棄になっているのではないかと考えていたのであろう。しかし、自暴自棄ではない俺の顔を見て安心した様子である。実際、俺自身も自暴自棄ではないし、それなりに自信はある。




「それより、ロアン。お前自身はどうするんだ?」




俺はロアンに問い返す。




「僕かい? そうだね… どうしようかね… 君は追放したし、残る三人は身重だし…」




ロアンは苦悩した表情を浮かべる。




「俺が仕出かした事とは言え、済まない。で、その済まないついでちょっと頼まれてくれないか?」




「頼み事とは?」




ロアンが訊いてくる。




「三人の身の安全を守って欲しいんだ」




「三人の身の安全かい?」




 本来なら、俺自身がやるべき事であるが、それぞれの実家に送っている間に、終戦にでもなれば、俺は勇者特権を失ったままの追放者だ。それでは困るので、出来るだけ早く手柄を挙げて、勇者として帰り咲かなくてはならない。かと言って三人に死なれては目覚めが悪い。




「そうだね… 妊娠して戦えない体になったとはいえ、まぁ、僕から見て彼女たちは被害者であるわけだから、捨て置く事は出来ない。三人はまだパーティーに在籍したままだ。だから、彼女たちに対する責任は僕にある… 分かった、彼女達三人の身の安全は、僕が引き受けよう」




 ロアンは自分の手柄だけを考える人間であれば、俺だけではなく三人も切り捨てて、新しいメンバーを誘うか、または、俺をパーティーに残して、三人を置いていけば、手柄は立てれる。だが、ロアンはそんな事はしない。




「すまん! ロアン! そして、ありがとう!」




俺は正直に頭を下げる。




「いいよ、イチロー君。僕はただリーダーの役目を果たすだけだ。それに三人の身の安全と言っても、よくよく考えれば、彼女達の立場もあるから、直ぐに実家に送り返すことは出来ないな…」




 追放された俺が言うのもなんだが、こうしたリーダーとしての勤めを大真面目に果たすロアンの誠実さには、頭が下がるし、信用も信頼もできる。




「じゃあ、俺は行くよ」




俺はロアンにそう告げる。




「今すぐに立つのかい?」




「あぁ、こんな話をして何日もここにいたら、気まずいだろ?」




「あはは、それは君らしいね」




ロアンは屈託なく笑う。




「じゃあな、ロアン」




「頑張ってくれ。イチロー君」




 こうして、俺はロアンと別れて部屋を出た。その後、女性三人が金を持って駆けつけたのは、先程述べた通りである。





 そして、話は街はずれを出たところに戻る。




「さてと…よくよく考えれば、あいつら三人も大変な時に孕んでいるんだから、勇者メンバーとして弾劾されたり、実家から追放されたりする怖れがあるんだよなぁ~ 本当に頑張って、勇者にならんと…」




 そう呟くが、そう考えるなら、孕ませる前に考えろとか思い浮かぶが、やっぱ無理だわ、我慢出来んだろうなとも考える。


 


「いずれにしてもやってしまったもんは仕方ねぇ。前に進むか」




俺は加速の魔法を使って、魔族の支配下に向けて駆け出していった。

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「第04話 水で戻らんのか?」以降はこちら!

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