第5話 妖華し

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↓「やらかしてもうた…」

――「ええかい?もし、灯籠に色のちゃう火ぃ灯っとってもじいっと見つめたらあかんよ?」


「なんでなん?」


「その火ぃはな、お狐様のもんやねん。せやから、翔ちゃん連れてかれてまうからな」


「どこに連れてかれるん?」


「妖かし様の住むところや」


「あやかし?」


「妖怪みたいなもんや」


「悪いやつらなん?」


「そんなこと――」


「翔ちゃーん!もう寝る時間やでー!おばあちゃんも変なこと言わん!怖がってまうやろー」


「大丈夫やもん!!怖いなんて思わんし!」―――







昔の頃の思い出がふっと頭をよぎる。




「でもなぁ、今ちゃうねん…


あと1分前によぎっとって欲しかったぁ…」




そう、俺は全くもって覚えていなかった。




華やかな夏祭りの雰囲気にテンションが上がり、


普段とは違う珍しい色のフワフワと揺れる火に魅せられとった。


某アプリのストーリーに載せるからぁ、言うて写真を撮るために友達と少し別れただけやったのに、このザマや。




周りは先程と変わらない祭り囃子が鳴り響き、


出店から聴こえる威勢の良い声も話し声も変わらない。




かんっぺきに気づかへんかった…




「…い、おい、あんた大丈夫か?」




あー、どうしよ。


周りにいるのは人外。しかも二足歩行で、みんなイケメンか可愛い。


猫又に烏天狗に狛犬って、あぁぁぁどないしよ。


なんなんこの世界。


今なんならイケメンな狐に話しかけられとるし…




「話しかけられとる!?」


「お、おう。話しかけてる。あんた大丈夫か?


……ってひとぉ!?!?」


「え、あんたは狐やんな!?」


「そうだが!?ヒト!?!?」




待て待て待て。


そない驚かれたら頭もっと混乱してくるわ。




「え、俺、ちゃんと人やんな!?」


「あんた、ヒトじゃないのか?」


「いや、たぶん人やねん!!!!!」


「僕は九尾だ!!よろしく(?)」


「俺は人だ!よろしゅう!!!!」




ん?


今、自己紹介終わったん?


え、そもそも自己紹介だったんか?




「「……えっ?」」


「「えーと、」」


「「あっ、」」


「「先」」「ええで」「いいよ」


「おおきに」「ありがとう」


「「…」」


「…俺から先に言うな?」


「はい、どうぞ…」






***********




【次回 「食べものの怨みは誰でも強い…」】




「なんなんこのイケメンな九尾は…」


「いや、あんたこそヒトだろ…」


______________________________________

↓「食べものの怨みは誰でも強い…」

「俺から先に言うな?」


「はい、どうぞ…」




妖かし相手にこんな漫才みたいなる思てへんかったわ。


まあ、そらええとして…




「お互い一回冷静になろか」


「僕は今ので落ち着いたよ」


「ほな質問すんで、


 じぶんは九尾なん?」


「は?あんたはヒトなんだろ?」




…??




「だから、『じぶんは?』聞いてねん」


「あんた何言ってんだ??」


「『あんたは九尾ですか?』って言っとんのや!」


「そうだが…?」




あ、もしかして通じてへんかったんか。




「あー、ハイハイ。悟ったわ。」


「…何を?」


「ほんで、ここはどこ?ヤバそうな空の色してはるなぁ」


「……ここは僕らの世界だ。


あんたらのとこでは『異世界』だの『隠り世かくりよ』だの言ってるよな。


あんたはどうやって此方こちら側に来た?」




『異世界』なぁ。


確かに空の色は紫水晶みたいに透き通ってるし、でもすこぉし柘榴石が入ってんなぁ、


雲はムーンクオーツとギベオンで木ぃは…




「…」


「なぁ、聞いてるのか」


「翡翠…、いや橄欖石かんらんせき…」


「おい、質問に答えろ」


「……ん?」


「僕の話をちょっとくらい聞け!!!!!!」


「なんでおこッ――」




これ言ったらあかん気するわ。


何言っとった…?


なんて質問されてそうや…?


考えろ、考えろ俺…




「…俺は






キツネ好きやで…?」


「はぁ…?」


「めっちゃキツネ好きよ!俺も油揚げ好きやし」




反応怖すぎてあいつの顔見れへん…




「…」


「そんで子どもの頃なぁ、油揚げ好きすぎてこの神社の境内に供えてあったやつ食べてしもたんよw」


「ザワザワザワ…」


「ほんでな?」




え、ざわざわ言うとる??


なんかの毛並みが逆だっていくようなこの音ぉ…


なんの音やr――




「…ば、ばっ、化け狐ぇ!?


なんやじぶん!?俺の話つまらなかってそうなったんか!?」




あいつ、おっきな化け狐に成りよった!?


でも、綺麗な毛並みしてんなぁ。目ぇも人形ひとがたの時とおんなじ赤やし。


ってそんな事考えてる間ぁ無いって!




『違う。


お前が僕の話を聞かないまでは我慢できた。


だが許せん……




あのときの美味しい僕の油揚げを食べたのはお前だったのか!!!!』


「そんなことかいっ!!」


『そんなこととはなんだぁぁ!!!!!!!!!』


「うわっ、またおっきくなりよった…


 道頓堀のグリ◯くらいあるんちゃうか…」


「なんなんだそれは?」


「もとに戻りよった…」




こいつほんまによぉ分からへんなぁ。


めっちゃ好奇心旺盛やし。


まあ、飽きひんけど。




「道頓堀の◯リコっちゅーのは…」


「「「せーんしょーさまー!!尖晶様せんしょうさま、どこにいらっしゃいますかー?」」」


「もうそんな時間か。迎えが来たんだがあんたも一緒に来るか?」


「…え?」





***********




【次回 「ちっちゃい三人組」】




「じぶん、尖晶って名前なんやな。瞳とおんなじ色の宝石やわ」


「そーゆーあんたの名前はなんなんだよ。」


______________________________________

↓「ちっちゃい三人組」

「「「尖晶さまぁー!」」」




尖晶の小さい版みたいなやつが3人が尖晶に抱きついてきた。


小さい版×3体が大きいやつに抱きついとる…


あの尻尾しっぽは絶対にもふもふやん…




「尖晶さまぁ、ほんとどこいたんですかぁ」


「「いっぱーい探したんですよ!」」


「すまなかったな、ヒトを見つけたんだ。


それで、この男もつれて行きたいんだが……」


「「「ヒト!?!?!?」」」




ここまで揃うんやなぁ




「早く返してあげないと。」


「えっ!?なんでヒトがこんな所にいるんですかぁ!?」


「ヒ、ヒ、ヒトぉ……。怖い……」




あ、性格は全員ちゃうんやな




「えー、はじめましてぇ。人ですぅ……


……ってちゃうわ!!『人』っちゅー名前はまちごうてるからな!?


翔やわ、翔!S・y・o・u 、で翔や!」




「「「「……」」」」


「尖晶さま…、ヒトって全員こんな感じなんでしょうか……?」


「いや、僕も会ったとき焦ってたからよくわからん。」




び、微妙な状況生み出してしもた…




「でも、とりあえずお前らも名前を教えてあげなよ」


「分かりましたぁ」「……」「はーい!」




「えーと、では僕から。『翠すい』といいます。一番上です!」


「……ら、『藍らん』。です。」


「三番目の『緑りょく』です!『みー』ってよんでねぇ!!」


「みんなよくできたな〜!偉いぞー」




そう言うと尖晶は三人(匹?)の頭をなでていく。


俺も尻尾モフモフしたい……




でもなぁ、それにしても似とる…


ちゃうのは尻尾の柄と、目ぇの色。


『翠』と『藍』は目の色やけど、『緑』なのに綺麗な黄色しとんよな。


名前忘れんとええけど……




「ということで僕の兄妹たちだ!」


「あ、あのー。」


「はぁ。きょうだい。


……お、お前!!あの子たちパシリにしよるんか!?」


「え?」


「藍、もっと大きな声で言わないと、」


「だって『様』付けってそうやろ!?」


「違う違う!!この子達は事情が――」


「……お、お話を聞いて下さい!!!」


「「!?!?」」




二人で一斉に振り返る。


……今の誰や?




「あ、、ああ、ああぁ ……⤵」


「藍よくやったね!!いい子いい子ぉ〜」




藍の声やったんか。どっか強制力のあるような迫力のある声やな。




「藍ありがとう、後は僕が。尖晶様、そろそろ行かなくては大変です。」


「しょう、でしたっけぇ?ヒトも連れて行ってもいいので行きましょう?


お父様は怒りますけどねー」


「みー、やっぱみえてしまうか。」


「とりあえず…、行かないと……」







俺は馬車みたいなものに乗りながら話を聞く。


やっぱ空、駆けてるんよな。


空、飛んでんなぁ。


せやから馬車ちゃうことは確かなんよ。




「百歩譲って飛んでるっちゅーのは無視してするんやけどさ。


そんで、俺は今どこにむこうてるん?」


「今向かっているのは――」





***********




【次回 「色んな事情」】は、こちらから!

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