第3話 脳内に直接話しかけてくる不審者
「…空から降ってくるとは、思わないじゃん?」
舞空術でも使えるのかコイツ…。
あと、気の所為だったら良いんだけど、
…なんか、纏っているオーラが禍々しくなってません?
それと
刀もなんか、サビだらけに見えるんですけど。
あれかな、怪物界隈のイメチェンかな。
そんな事を考えながら、現実逃避していると。
「あれ、なんだ?コスプレか?」「女の子を襲ってるように見えるぞ。」「警察を呼んだほうが良いんじゃない?」「…空から降って来てなかった?」「っていうか、刀めっちゃ錆びてるじゃん。」「面白そう、写真とか撮っとこーぜ。」
周りがざわつき、人が集まり始める。
怪物は何を思っているのか、その場から動かない。
(…しめた!この隙に周りの人に紛れて逃げよう!)
この人混みの中、私を見つけることは難しいだろ!
…まぁ、私アルビノで髪が真っ白なんで、場所関係なく目立つんですけどね。
それでも、少しは追いにくくなるはず。
そうと決まれば今のうちに、
そう思い、私が動き出した瞬間。
怪物もまた、動き出していた。
「ユルス マジ…!」
肌を切り裂くような殺気が全方位に放出される。
切られたと錯覚するような恨みと殺意に満ちた世界。
「…シン ガン ノ ミコ…」
紅いオーラが刀に纏わりつき、刀身が伸びていく。
怪物はその刀を上段に構え、私に狙いを付ける。
…え、
「…殺 ス…!」
振り下ろされた刀身は見えなかった。
ただ、私のすぐ横を風が通り抜けた。
「………は?」
え?
今、何がおきたの?
私のすぐ横をなんか、通り抜けていったけど?
恐る恐る、後ろを確認してみると。
数メートル先まで続く深い亀裂。
頭から両断されている人々。
飛び散る鮮血。
その光景を見て、固まった私に向かって
「っ!冗談きついって!?」
私はなんとか体の硬直を解き、怪物から逃げる。
(何なんだよ!?あんな特殊能力あるなんてズルじゃん!?!?)
チートやん、チーターやん、あんなの。
斬撃飛ばしてくる相手からどうやって逃げれば良いんですかねー?
「…殺 ス…」
「っ!ヤバっ!?」
私はヤマ勘で横に飛ぶ。
また私のすぐ横を風が通り抜ける。
(ヤバいヤバいヤバい!このままじゃ死ぬ!!!)
マジで死ぬ!このままじゃ私死んじゃうよ!?!?
丸腰の相手に遠距離武器を使うとか、恥ずかしく無いのか!?
武士の誉れはどうなってんだ、誉れは!
(どうにかして、
そんな事を考えながら走っていると、視界に写ったのは某スカイなツリー。
…あ、あれだーーー!!!
あそこに逃げ込むしかねぇ!
あそこで斬撃なんか放ったら、
「…そう思っていた時期が私にもありました。」
上へ、上へと全力で逃げる。
私の後ろには、某スカイなツリーの内部にもかかわらず、斬撃をスパンスパン飛ばしてくる怪物の姿があった。
…バカかな?
お前、自分が何やってんのか分かってんのか?
下手したら私達、生き埋めになるんだぞ!?
(…怪物に知性があると思った私が馬鹿だった。)
ヤバい、本当にヤバい。
…あぁー!もうどうしよう!?
私が頭を抱えていると、ズキリと左目が痛みだした
(痛い痛い痛い!めっちゃ痛い!?)
またかよ!?またこの目潰し攻撃?
嫌がらせにも程があるだろ!?
痛みに耐えかねて、一瞬目を瞑った。
だが、それは目の前の怪物には致命的な隙に写ったのだろう。
目を開けた私の眼前には、錆びた刃が迫っていた。
(……あぁー、終わった…。)
さよなら人生。また来て来世。
私は自分に迫るその刃を見て――避けた。
自分の顔スレスレを刃が横切る。
(!?!?!?!?!?)
逃げ場が塞がれた私に向かって
「…死 ネ…!」
怪物は私へと刀を振り下ろした。
普段の私なら絶対に避けられない速さの斬撃。
当たれば、体が真っ二つになるだろう斬撃を、私の目は捉えていた。
「っ!?」
転がるようにして斬撃を避ける。
…あっぶねー!なんで生きてんだ私!?
当たれば一瞬で細切れになるその斬撃を、私は避け続けた。
怪物の動きが手に取るように分かり、周囲の状況が鮮明に見える。
あれだけ恐ろしかった怪物の攻撃に当たる気がしない。
…なんで?どうなってんの!?
怪物も急に動きの良くなった私を警戒してか、動きを止める。
私が自分の身に起こった変化に戸惑っていたその時。
『…おい、聞こえるか!』
私の脳内に突如、甲高い声が響いた。
「………は?」
『は?じゃねーよ!俺の声が聞こえてんのか!?』
「…え?あ、はい。」
『ヨシ!』
勢いに押され返事をすると、声の主は焦ったように話を続ける。
『いいか!?俺が
「…は、はぁ。」
『だから限界が来る前に、俺が
「…はぁ?」
『その隙に、お前の全霊力を込めた必殺技をぶち込め!』
「…………。」
…何を言ってるんだ?この不審者は???
俺が怪物の力を封じたとか、霊力の話とか。
あれかな、電波ちゃんかな?
『おい!分かったか!?』
「ごめん、ちょっと何言ってんのか分からない。」
『なんで、分かんねーんだよ!』
電波系が話してることなんて分かるわけねーだろ!
っていうか、アンタ誰よ、どっから話しかけてんの?
『んなことを話してる暇は無いんだよ!お前は霊能力者だろ?だったらこの状況がどんだけ悪いか分かってるはずだ。』
…全然わからん。
そもそも霊能力者ってなに?
『俺を疑う気持ちも分かるが、本当にヤバい状況なんだ。言う通りにしてくれ!』
その言葉からは、必死さと焦りが伝わってきた。
…嘘とは思えないな。
これが演技だったらハリウッドで主演を張れるレベルだ。
…まぁ怪物が斬撃飛ばしてきたり、空を飛んだりしてたからなぁ。
霊能力者がいても、不思議じゃないか。
モノクロ世界の怪異譚 灰頭巾 @syagenabeibe
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