第2話 忠義拳奥義

 義貞が足利直人を討ち果たし、梨花の犠牲のもとで忠義を貫いたのも束の間。戦いの後、世は再び平穏を取り戻したかに見えた。しかし、その影には更なる悪しき力が潜んでいた。新たな勢力「影縫かげぬい」は、かつて足利家の配下にあり、黒き術を操る者たち。彼らは義貞を新たな脅威と見なし、静かに彼の抹殺を企てていた。


「我らの支配に忠義など無用。この世を闇に覆うのが我が使命だ」


 影縫の頭領、夜叉丸やしゃまるが義貞に対峙する日が迫る。



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 戦いのため再び拳を握り直した義貞は、新たな試練に備え、己を鍛え上げるために秘境・鳳凰山ほうおうざんへと向かう。そこにはかつての仲間たちが残した修行の痕跡があり、彼はその地でさらなる「忠義拳奥義」を磨き上げることにした。


「忠義を貫くには、更なる強さが必要だ…」


 義貞は岩を砕き、滝の下で自らの肉体を極限まで鍛える。彼の精神もまた、忠義の道を歩む覚悟により研ぎ澄まされていく。そして、義貞は新たな奥義「雷鳴断空拳」を会得する。これにより、影縫の忍びたちの術さえ打ち破る力を得たのだ。



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 義貞が山から降りた頃、影縫の手下たちが彼の前に立ちはだかる。手下たちは影を自在に操り、闇の中で義貞に襲いかかるが、義貞は新たな技を駆使して彼らを次々に倒していく。彼の「雷鳴断空拳」による一撃が、影縫の術さえも粉砕していった。


 しかし、その時、頭領・夜叉丸がついに姿を現す。彼は鋭い目つきで義貞を見据え、冷笑を浮かべた。


「忠義の拳など、もはや時代遅れよ。お前のような旧時代の亡霊が、我が闇の力に敵うとでも思うか?」


 義貞は一歩も退かず、拳を構える。その瞳には、仲間たちへの誓いと、梨花への想いが宿っていた。


「我が忠義は永遠だ。お前の闇がどれほど深くとも、この拳で貫き通してみせる!」



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 夜叉丸は「闇葬連爪あんそうれんそう」という技を使い、義貞に襲いかかる。暗黒の爪が幾重にも重なり、義貞の周囲を包み込む。しかし、義貞は「雷鳴断空拳」を炸裂させ、暗闇を切り裂きながら夜叉丸に立ち向かう。


 二人の拳がぶつかり合う度、周囲の大地が震え、雷鳴が轟く。夜叉丸の爪が義貞の身体をかすめ、深い傷を負わせるも、義貞は決して倒れない。彼の忠義心が拳に宿り、夜叉丸の闇を徐々に浄化していくかのようだった。



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 激闘の末、義貞の最後の一撃「天衝雷鳴斬てんしょうらいめいざん」が夜叉丸を貫く。義貞の拳が触れた瞬間、夜叉丸の闇は一瞬にして光に包まれ、彼の内にあった悪しき力は消え去った。夜叉丸は崩れ落ち、義貞に向かってかすかに微笑む。


「お前の…忠義の拳…俺にも少しばかり…感じられたようだ…」


 夜叉丸は静かに目を閉じ、闇の中に消えていった。義貞は彼の亡骸を見つめながら、心の中で梨花と仲間たちに感謝を捧げた。



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 戦いが終わり、義貞は再び拳を休めることを決意した。だが、彼の背には忠義の炎が絶えることなく燃え続けている。


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