放課後の告白

風使いオリリン@風折リンゼ

放課後の告白

「マコト、もうホームルームも終わったよ」


 不意に聞こえた声に、僕はがばっと身体を起こした。


 そこは、放課後の教室だった。どうやら授業どころか帰りのホームルームまで寝過ごしてしまったらしい。長時間、机に伏せていたせいで背中が痛い。


「……おはよう」


 僕は声をかけてきた相手に、欠伸交じりに目覚めの挨拶をした。


「おはようって……」


 彼女はユウ。幼稚園から高校までずっと一緒の幼なじみ。そして――。


 僕の好きな人でもある。


「あのさ……悪いんだけど……今日はマコト一人で帰って」


「え?何で?」


「実は、彼氏が出来て、今日は一緒に帰ることになっちゃって」


「何……だと……」


 僕は突然、自分が失恋していたことを知った驚きで、思わず立ち上がった。


 ……いや、そんなはずはない。


 だって、ユウは……。


「男性恐怖症なのに?」


「そうなんだけど……」


 ユウは写真に写った男すら直視できない程、男が苦手なのだ。


 そんなユウが彼氏なんて……。


「……相手は?」


「二年生の先輩。委員会で一緒なの」


「なんでつき合う事に?」


「委員会に男の子の友達がたくさんいるレンちゃんって子がいるんだけどね……。私、いい加減男の子苦手なのを直したくて、レンちゃんに相談してみたらさ……」


 ユウの話を三行でまとめるとこうだ。


 一、レンに男性恐怖症を相談する。


 二、男に慣れる為だと、男の先輩と委員会の度に会話の特訓をさせられる。


 三、それが嫌になってきたので、慣れてきたと嘘をついて特訓をお終いにしようと思ったら、特訓の成果を確かめるためだと告白するように言われる。


 四、断られること前提で、昨日の放課後、その先輩に告白したらOKを貰ってしまった。


 ……四行になってしまった。


 それにしてもレンちゃんとやら。随分と余計なことをしてくれたな……。


 でも、どうやらユウはその先輩のことが好きって訳じゃないみたいだ。


 なら、僕にもチャンスがあるじゃないか。


 いつか告白しようと機会をうかがっていたけど、今がそのときな気がする。今を逃すと永遠に機会を失ってしまいそうだと思った。だから――。


「……ねえ、ユウ」


 僕はユウを真っ直ぐ見据えた。


「僕はユウの事が好きだ。僕と付き合ってくれ」


「……え?」


 ユウは困惑していた。


「でも、私たち……」


 一呼吸置いてから、ユウは言った。


「女の子同士だし」


「関係ないよ」


 僕は戸惑うユウを抱きしめて、キスをした。


 僕は女で、ユウも女だけど……。


 そんなの関係ない。


 僕はユウが好きなのだから。


 教室に、僕たちのキスの息遣いが響く。


 廊下から、誰かの足音が近づいてくる。

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