第56話 明かされる真実


麻由は、パンダの尻と屁から猛攻撃を受けていた。


「麻由ーーーー!!」


 そこに、8本腕と触手の生えた宏明が走り込んでくる。


「パパ!! ……パパ!?」


「なんだ貴様は!!」

 

 お尻が、宏明を睨んだ。


「よくも娘を! とう!!」


 宏明は、ブラウン元捜査官のサスペンダーと、ズボンを下ろし、上半身を露出させた。


「やめろ! エッチ!!」


「ええいうるさい! お前の『下の口(!?)』に用があるんだ!」


 すると、丸裸になったパンダの上半身が弱々しく喋った。


「宏明さん……」


 ようやく喋ったパンダの上半身に麻由が詰め寄る。


「パンダちゃん! ねえさっきなんて言おうとしたの!? 神社のおじいちゃんは何者なの!?」


「あの人は……君ーーーそれ以上は危ないーー!!」


 途中から下半身のブラウン元捜査官が割り込み、麻由に向き合おうとしたので、

がっしりと、宏明はパンダの尻を押さえた!


「(ぷうう!!)すまん!!」


 至近距離から汚いものを浴びせられ、宏明の顔は歪む。

しかし! 宏明はパンダの尻から手を離さなかった!


「ねえパンダちゃん! 教えて!」


「あの人は……貴様ーーー離しなさい!!」


 興奮したブラウン元捜査官から、常識の範疇を越えたガスが噴射される。それを至近距離で正面から受ける宏明。

するとそこに、ブラウン捜査官からのニオイにつられて、『バユ』が数匹飛んできた。

『バユ』とは、松原に生息する、成人の拳大の大きさのアブだ。

それだけ聞くと恐ろしい生き物だが、

『バユ』は刺しもしなければ、噛んだり、生き物の血を吸ったりもしない。

ただ……『バユ』は人間が好きすぎるのだ。

人間を見つけると、気をひくためになんでもする。


「バユン、バユン、バユン」


 数匹のバユが、宏明にたかり、気をひくために自ら潰れ、シュルシュルと音を立てて自己再生した。

宏明側に危害はないが、これがなにぶん臭い!!


「パパ!!」


「パパは……大丈夫だ!! 臭いけど大丈夫だ!! 麻由はパンダから話を聞き出すんだ!」


 宏明の8本の腕が尻を掴んで離さない。

麻由は必死に呼びかけるが、パンダの方は目を閉じてしまって応じない。

どうやら片方が起きている時は片方が寝てしまうようだ


「おい! おい離せ貴様!!(プスプスプス。プップクプーピー……あ、ちょっと実が……)すまん」


「パンダちゃん! パンダちゃん!」


 カオス。カオスである。しかしこのカオスを乗り越えなければ真実に辿り着けないのが、このカオスの辛いところである。

そして、宏明の身体中にバユがたかり、「バユン、バユン」とやかましい求愛行動の音を出して、

宏明の鼻が物理的に曲がったとき、ようやく麻由の祈りは通じた。


「あのご老人は……黒鉄様です!!」


「……親父? 嘘だ! 親父は……」


「ご存命です!! 今も、地下にいらっしゃいます!」


「どこ!? どこに行けば会えるの!?」


「それは……。鈴木家の犬小屋の床からです!!」

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