side煌牙
「っ!!くそ!!犬風情が!!!」
なかなか吐かないからとりあえずボコボコにしてみたがやっぱり吐く気配がない。
そろそろ爪を剥いでみるか?
「俺を犬呼ばわりする元気があるみたいでよかった。次はもっと痛いことをしてみるか?」
ガチャ。
尋問室の扉が開いたからチラッと振り返ると…
「おいおい…。」
何でお前がいるんだよ、小鳥遊蓮。
「そんな怪訝そうにしないで。休憩してきたら?」
何が休憩だ、そもそもどうやってここまで来た?
まさか尋問部の人間を皆殺しにしてないよな?
「仕事中なんで出てください。」
俺がそう言うと小鳥遊蓮は整った顔に少し笑みを浮かべた。
「俺に3分くれる?3分後には絶対に出ていくから。」
小鳥遊蓮はそう言ってシャツの袖を捲り始めた。
「何する気ですか。」
「カメラで見てて。
お手本見せてあげる。」
手本って何だよ、俺らの仕事をナメてるのか。
「たった3分だよ。いいでしょ?」
「…………はぁ。」
規則違反どころの騒ぎじゃない。
下手したら俺や尋問部の首が飛びかねない。
が、手詰まりな事は認めないといけない。
ヴァンパイアはどうしてこうもルールを守れない奴が多いんだ。
「分かりました、きっかり3分です。
これ以上は譲歩しません。」
「うん、それでいいよ。」
その笑みの下に何を隠してやがる。
不信感いっぱいのまま俺は尋問室を後にしてカメラ映像が観れる部屋へ移動した。
カメラ映像から流れる小鳥遊蓮の声。
その声はひたすら落ち着いている。
「さて、悪いけど3分しかないからね。
頑張らないと。」
「っ……あっ…た…っ小鳥遊…様っ…!!」
ヴァンパイアの表情がガラリと変わった。
俺には見せなかったあの表情。
心底怯えているように見えた。
「お…お助けくださいっ…!俺はただ…ぐっ!!!」
小鳥遊蓮は一瞬で男の前に移動して首を掴み上げた。
何をするかと見ていれば、ガン!ガン!ガンッ!!といかにも痛そうな音がする。
どんな腕力をしているか知らないが、小鳥遊蓮は犯人の男の額を尋問室にあるテーブルの角に何度も打ちつけた。
あれはかなり痛いはずだ。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
真っ白な尋問室が血の海になっていく。
掃除がかなり大変そうだ。
「これがレベル1だけどもう話す気になった?
ちなみに俺はレベル50くらいまでは考えてあるよ?」
とても、えげつない暴力を振るっている男の声とは思えなかった。
きっと、何とも思っていないんだろうな。
他人を痛めつけるという行為を。
「あっ…あがっ…あっ…」
犯人の男は白目を向いて痙攣してる。
「え?何?ちょっとよく分かんないから次行こうか。」
次に何をするかと思えば、小鳥遊蓮は内ポケットからボールペンを取り出した。
そしてそれを容赦なく男の目に突っ込んだ。
「ギャァァァァアア!!!!!!」
耳をつんざく男の悲鳴、この映像を見ている誰もが顔を顰めた。
「あ゛ぁっ…!!ごめんなさいっ…ごめんなさいっ!もうしません!もうしません!!!!」
「まぁ、そう言わずに。
まだ片方あるんだからもう少し頑張ろう?」
楽しそうだな、本当。
小鳥遊蓮が目に突き刺したボールペンを勢いよく抜いてもう片方の目に突き刺そうとした瞬間…
「闇サイトです!!!!
闇サイトで応募して指示通りやっただけなんです!!!!!!!」
犯人はあっさりと犯行を吐いた。
犯人が吐いても小鳥遊蓮は容赦しなかった。
「だっ…だからもう……ギャァァァァアアッ!」
冷酷極まりない、吐いたにも関わらずもう片方の目にボールペンは突き刺さっていた。
「だから、何?やめないといけないの?お前の指示で?」
「ぢっ…ちがいまず……」
犯人は涙と血で顔がぐちゃぐちゃになっていた。
「そうだよね?お前ごときが俺に指図なんかできないよね?」
小鳥遊蓮は涼しい顔して笑って今度は犯人の髪を掴み上げて顔面を何度も殴打した。
グチャッ!グチャッ!バキッ!バキッ!!
「あぁ、そうそう。
誰の指示?連絡先くらい覚えてるんじゃない?」
ぐちゃっ!ぐちゃっ!!!ぐちゃっ!!!
「ゔぅ…うっ……おぼえで…まぜん……」
「本当に?そうは見えないけど。」
殴打するのをやめたら、次は耳を掴んで…
「い゛っぃぃっ!!!痛い゛ぃい!!!
い゛ゃぁあ゛ぁぁっ!!!!!」
ゆっくりゆっくり耳を頭から剥がしていった。
「スマホッ…スマホにっ…ありまず…
ひぐっ…うっ…うぅっ……」
「スマホのロックの番号は?
すぐに言えば耳を失わずに済むよ?」
犯人は完全に小鳥遊蓮の手の中だ。
「ぜ…ぜろ…なな…ぜろ……なな………」
0707か。
「ロック解除できました!」
スマホを押収していたハンターがそう叫ぶ。
犯人のスマホを押収していたが暗証番号が分からずに困っていた。こうも簡単に吐くなんて。
「後は個人的な質問なんだけどいいかな?」
小鳥遊蓮はまだ何か続ける気だ。
ここまで分かればもう何も必要ないのに。
「は…はいっ………」
犯人はもう意識も絶え絶えで体の力も入っていない。
「何で人間の女性を婚約者だと偽った?」
「…はい?」
まさかの質問が飛び出したのか、犯人はとぼけた声を上げた。
「だから、何で小鳥ちゃんを婚約者だなんて言ったの?あの子は俺のなのに。」
小鳥遊蓮が初めて殺意を露わにした。
犯人の顔色が真っ青になっていくのが分かる。
死を悟ったんだろうな。
ヴァンパイアの上下関係ほど厳しいものはない。
目上の者の女を自分の物だと偽って生きていられるはずはないからな。
「しっ知らなかったんですっ…!
指示通りにしただけで…俺は…何も知らなくてっ…本当です…!バレて捕まったらそう言い張れって…」
犯人は嗚咽しながら喚いた。
カメラ越しでも伝わってくる氷のように冷たい殺気。
小鳥遊蓮はあの男を殺す。
俺は急いで尋問室へ走った。
今殺されたら困るからだ。
小鳥の無罪は証明された。
あの馬鹿から聞き出したい事は山程ある、殺されてたまるか。
バン!!!とノックもせずにドアを開けると小鳥遊蓮が振り返った。
中を見ると犯人はまだ生きてる、よかったどうにか間に合ったな。
「3分経ちました。」
嘘だ、絶対に3分も経ってない、そもそも測っていない。小鳥遊蓮はパッと犯人から手を離した。
その瞬間、男は俺に飛びついてくる。
「たっ…助けて…!助けてくれ…!!」
さっきまで俺に犬とか何とか言ってたくせに随分と調子がいいな。
「彼に敬意を払って洗いざらい全部話せ、それができないなら俺がまたここへ来る。分かった?」
男は俺に縋りつき何度も何度も頷いた。
「全部コイツの出鱈目だったから小鳥ちゃんの疑いは晴れたよね?早く解放してあげて。
さっき映像で見たけどかなり緊張してたみたいだから。」
そんな事は百も承知だ。
「言われた通りにお願いします。」
俺がカメラに向かって言うと小鳥遊蓮は何事もなかったかのように尋問室を出て行った。
心底安心しているであろう犯人。
余程怖かったのかまだ俺に引っ付いて震えている。
「男とくっつく趣味はない、さっさと離れてくれ。」
俺がそう言うと犯人は真っ青な顔をして尋問室の角に行き膝を抱えて震えていた。
命はあってもこれじゃあ使い物にならないな。
少し休憩するか。
「休憩する、しばらくそこにいろ。」
放心する男に言い放ち俺は尋問室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます