side小鳥

蓮様は突然聞いてきた。


「小鳥ちゃん。俺の家でした話覚えてる?」


頭がガンガンする中記憶を辿るけど集中して考えられない。

頭痛を堪えて首を横に振ると蓮様は座り込んでいる私に視線を合わせるように膝をつくと、私の首筋にそっと触れた。


「ここ、今もらってもいい?」


その意味に気付いた私は戸惑いを隠せない。

だって、今まさに蓮様に首筋を咬んでいいか聞かれているのだから。


「酩酊していれば痛みなんて感じずに済む。」


痛みを感じないの…?

それなら…


「ダメだ。小鳥を咬むなんて…。

小鳥はハニーブラッドなんだぞ、逆にあんたが酩酊して小鳥を殺すかもしれない。」


すぐさま反対の意思を見せたのは私の背をずっと支えてくれている煌牙だった。    


「酩酊しない。だいたい、俺が小鳥ちゃんの血に狂ったらその場で殺せばいい。

ハンターでしょ?君。」


蓮様はとんでもない事を言い出した。


「血に狂ったと俺が判断したら本当に殺しますよ。いいんですか?」


煌牙は即座に聞いた。


「だ…ダメ、蓮様を殺さないで!」

「いいよ、君が判断すればいい。

ただ本人からまだ答えを聞いてないからね。」


蓮様は煌牙から視線を外し私の目を真っ直ぐに見た。


「小鳥ちゃんの初めて、もらってもいい?」


初めて、それはもっとロマンチックなものだと思ってた。


こんな頭痛を紛らわす為に使うものじゃなくて、もっとこう…恋人のような雰囲気で渡すものだと思っていた。


ほんの少し悲しいけど、あの強烈な痛みを一分も我慢できない。


この際贅沢は言わない、いいじゃない、相手が蓮様なんだから。


「蓮様……お願いします。」


どんな形でもいい、初めては蓮様。

その事実は死ぬまで変わる事はないわ。


蓮様は優しく笑った。


「任せて。」


煌牙は私の側を数歩離れて蓮様に場所を譲った。

蓮様に後ろから抱きしめられて一気に緊張する私。

カチカチになった私を見た蓮様は私の耳元で優しく囁いた。


「小鳥ちゃん、力抜いて。

優しく咬むから。」


私が頷くと蓮様が私の額に手を回し右側に首をかたむけさせた。

露わになった左の首筋に優しくキスする蓮様。


「/////////」


「いい?いくよ?」

「は……はいっ/////」


私の返事を聞いて、蓮様が私の首筋に優しく咬みついた。

ゆっくり、ゆっくり、牙を皮膚の中に入れる蓮様。


「うっ…///////」


咬まれたところがジンジン痛んで熱くなってきた。

だけどいつしか痛みは消えて…


「はぁ…はぁ……ぁっ…///////」


全ては快感に変わっていた。

蓮様の牙の毒が入り込んだ途端、意識が酩酊していく。

肌の全てが敏感になって、体温が上がるのがわかった。

頭の中まで麻痺する強烈な快感。


蓮様と一つになりたいとすら思うこの感覚はとても普通とは思えない。

私が快感に悶えていると、蓮様が私の首から牙をそっと抜いた。


「蓮様ぁ……//////」

「よかった、俺との相性はいいみたいだね。」


蓮様の牙、いつもより鋭くなってる。

あの牙で咬まれたんだ…。


「ほら、サクッとやって。」


蓮様は如月さんに愛想なく指示した。


「はい。」


呆気に取られていたみたいで如月さんは慌てて返事をすると私の頭に触れた。


不思議、さっきは痛くて堪らなかったけどもう快感しか感じない。

何をされても気持ちいい。

目を閉じていると…


「はい、終わりました。」


あんなにも怖がっていた魔法の処置はすぐに終わっていた。


「優秀だと言い張る理由が分かったよ。」

「えぇ、そうでしょう?」


蓮様と如月さんが話している中、私は蓮様の顔ばかり見ていた。

真っ赤な目が素敵、薄い唇もセクシーだなぁ…。


「で、何の魔法がかかってた?」


「姿を隠す魔法ですね。

指名手配犯がよく使ってる類いの物だけど、ここまで強くかけられているのは珍しい。」


あぁ、この唇にキスできたらどんなに幸せだろう。


「小鳥、平気か?小鳥?」


煌牙が私と蓮様の真ん前に来た。

すごく心配しているみたい。


「うん…へいきらよ?」


あれ?呂律回らない。


「あまり咬んでないからすぐに意識がはっきりしてくるよ。」


あぁ…どうしてだろう。

蓮様とキスしたい。

キスした後はめちゃくちゃに抱かれたい。


私、変だ。


今まで男の人に抱かれたいとか、そんな積極的に思った事はなかったのに。

今の蓮様に全てを捧げたい。


「蓮様…/////」


だけどまず先に……あなたにキスしたいの////


「大丈夫だよ、落ち着くまでンッ」

「「え。」」


堪らなくなって、煌牙の横を通り過ぎ私は人目も憚らず、蓮様にキスをした。

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