side煌牙
突如入った連絡、小鳥遊蓮がハンター協会に女を連れてきた。念のため本部で待っていてよかった。
が……
「その…はぁ、はぁ…はぁ……小鳥遊様が…医者か…魔女かを呼んで来い…とのことで…。
後……少し…はぁ…はぁ…怒らせて…しまったようで…。」
俺の部下じゃない奴が息を切らしながらそんな報告をしてきた。
「あんた、どこの部隊ですか。
怒らせたから後は俺に丸投げなんて虫が良すぎる。」
俺が文句を言うとスーツを着た誰か知らん奴は気まずそうに答えた。
「ぼ…僕は、護衛部隊の……才賀です。」
あぁ、護衛部隊、通りでスーツなんて着てるわけだ。
ハンターはいろんな仕事がある。
俺の率いる人狼部隊のように理性をなくした奴らを狩る仕事と、お偉いさんの護衛をする護衛部隊、医療部隊、魔法部隊、とまぁ豊富にあるわけだ。
その中でも一番嫌いな部隊が護衛部隊だった。
コイツら、護衛部隊は権力に擦り寄り個人個人で権力者の後ろ盾を使い好き勝手やってるやつが多い。
で、都合が悪くなればこうして俺らに仕事を回してくる。
コイツ、今俺が殴り倒したらなんて言うんだろな。
「怒らせたんならあんたが謝りに行けばいいだろ。隊長には関係ないし、お前ら護衛部隊はペコペコすんのが得意だろ?」
口を挟んだのは人狼部隊副隊長の
ちなみに、勉強は死ぬほどできないがハンターとしてのセンスは天才と言ってもいい。
「昴、そう噛みつくな。
どうせ俺らに回ってくる仕事だった。
とりあえずお望み通り医者か魔女の空いてる方を俺が探してくるから、この事を尋問部に知らせてくれ。」
「はーい、了解です。」
ちなみに昴は俺の言う事は本当によく聞く。
如月千夏に会うために、医療部隊のフロアへ行く。
彼女は魔法も使うが基本的には医療部隊の方にいると聞いているからだ。
エレベーターで医療部隊のフロアへ上がるとすぐに受付がある。
「お疲れ様です。」
愛想のいい同い年くらいの女だ、ただの受付嬢に見えるがここで働いていると言う事は彼女もハンターだと言う事。
受付嬢兼、用心棒って所だな。
「こちらは医療部隊フロアですが、どこかお怪我をされましたか?」
「お疲れ様です。
人狼部隊隊長の白狼です。
怪我とかじゃないんですけど、如月千夏さんに診てほしい人がいて。
小鳥遊蓮関係なので彼女が適任かと思っています。彼女が無理なら手の空いてる医者を一人手配してください。」
「かしこまりました、少々お待ちください。
…もしもし、こちら受付の柴崎です。」
女はそう言うと受付の電話で連絡して俺の言ったことをそのまま伝えていた。
通話が終わり1分もしないうちに受付の奥から一人の女が出てきた。
「お疲れ様です。」
予想外にも如月千夏本人が来た。
真っ赤に染まった長い髪にキツめのメイク、身長は170はありそうだな。
何となく、怒ったら怖そうな女だ。
「お疲れ様です。急に呼び出してすみません。
行きながら話すんで着いてきてもらっていいですか?」
「えぇ、もちろん。
案内してください。」
話し方にも気の強さが現れていた。
口喧嘩したら100%俺が負ける、この女を敵には回したくない。
そう思わせる何かが如月千夏にはあった。
広いエレベーターの中で何の愛想もない会話が繰り広げられた。
「俺もよく分かってはいないんですけど、小鳥遊蓮が医者か魔女かを呼びつけたと聞いたので優秀そうなあなたに来てもらいました。」
「わかりました、状況はこの目で見て確認します。」
はい、会話終了。
これが楽でいい、色目なんか使われたら面倒くさくて堪らない。
それは彼女の方もそうだろう。
仕事は淡白に尽きる。
「一つ聞きたいんですけど、誰がその話を白狼さんに持ってきたんですか?」
これは正直答えたくなかったが聞かれたから仕方ない。
「護衛部です。」
「あぁ…。クソ部隊ね。」
そう、彼女は護衛部が死ぬほど嫌いだ。
「このエレベーター監視カメラついてますよ?」
「えぇ、知ってます。」
再び沈黙が流れた。
中々に気が強い女だ。
やっぱり口喧嘩は避けた方がいいな。
そもそも俺は口喧嘩はかなり弱い。
沈黙の中エレベーターは一階に付き、エレベーターの扉が開いた瞬間に彼女はスタスタ歩き出した。
開くボタンを押そうとしていた俺を置き去りにして。
案内しろとか言っててグイグイ進むタイプか?
いや、もう場所は分かってるんだろうな。
エレベーターに乗っていた時から感じていた強いヴァンパイアの気配。
それを辿るのは簡単だ。
彼女も一応はハンター、小鳥遊蓮の居場所くらい朝飯前ってことか。
俺も彼女に続き置き去りにされたエレベーターから降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます