side蓮

朝、ハンター協会から小鳥ちゃんに連絡が入った時はハンター協会を血の海にしてやろうかと思った。


俺の小鳥ちゃんを出頭させて何をするつもりだったんだろう。


昨日電話してきたあの男はおそらく下っ端だろうけど歯切れの悪さからして軽い話ではないはず。


ハンター協会は信用できない。

尋問と言って拷問をかける事がよくあるからね。


そんな野蛮な組織に小鳥ちゃんを1人で行かせるなんて馬鹿な真似はしない。


支援の打ち切りを引き合いに出したから、協会側も強制的に小鳥ちゃんを連れて行くことはないとは思うけど、いつまで時間が稼げるかな。


「蓮様、どうかしましたか?」


次の策を考えていて気難しい顔してたかな。

小鳥ちゃんが不安そうに俺を見てる。


「何でもないよ、目にゴミが入ったんだ。

それより小鳥ちゃん、この距離は何?」


一緒にソファーに座って映画を見ているけど、小鳥ちゃんはソファーの右端で固まってる。

ちなみに俺は左端にいて俺たちの間には妙な距離ができていた。


「…この距離変ですか?」


小鳥ちゃんはおずおずと聞いてきた。


「うん、すごく変だよ。

前はぴったりくっついて見てたのに。

俺がよく小鳥ちゃんを膝の上に乗せてたよね?」


「あ、あれは!子供の頃の話ですよ////

もう大人になったんだから適切な距離を保ちます!」


「久しぶりに俺の膝に乗ってみる?」


「何言ってるんですか!

そんな事、他のヴァンパイアに知られたら私は血祭りに上げられますよ!

蓮様は自覚がないかもしれませんけど本当に偉い方なんですから!」


小鳥ちゃんの言う、他のヴァンパイアが小鳥ちゃんに手を出すわけがない。

そんなことしたら俺が許さない事くらいどんな馬鹿でも分かるだろうから。


「その偉い俺が膝の上に来てほしいって言ってるのに来てくれないの?寂しいなぁ。」


俺が冗談っぽく言うと小鳥ちゃんは真っ赤な顔をしてオロオロしている。


「さ、寂しいなら西園寺様に連絡してください!きっとすぐに来てくれますよ!」


小鳥ちゃんは本当によく梨花の名前を出すね。

俺は昔から小鳥ちゃんだけが好きなのに。


「梨花をこの家に呼んだことは一度もないよ。」


メディアに少し圧をかけようかな、無実無根な情報を垂れ流しにするなって。


「いずれ呼びますよ、婚約者なんだから。」


違うってどうしたら信じてくれるのかな?


「婚約者じゃないよ。

だいたい、婚約者がいるのに可愛い女の人を家に連れ込む最低な男だって思われてる?

それなら心外だよ。」


俺がわざとそう言うと小鳥ちゃんは焦ったように言った。


「蓮様が最低な男だと思ったことはありませんよ!ただ、いろんな人に言い寄られてるイメージがあるだけです…。」


全く遊んで来なかったと言えば嘘になるけどそれ程羽目を外した覚えもない。


「言い寄られたからって誰彼構わず連れ込むような男じゃないよ。自分のテリトリーには特にね。」


俺が言いたい事ちゃんと分かった?

小鳥ちゃんだからこうして家に招き入れたんだよ。


「///////////」


あぁ、よかった。

少しは自覚してくれたみたい。

そうだよ、小鳥ちゃん。

俺は小鳥ちゃんのことちゃんと女として見てる。

嫌になるくらいずっと昔からね。


あまりにも意識してくれないから俺ももう少し頑張らないと。


「小鳥のアパートが倒壊しました。

まぁ、どうせ知ってるんでしょうけど。

で、その倒壊って言うのが故意に起こしたもので、小鳥の婚約者って言い張ってるヴァンパイアが小鳥にアパートの倒壊を指示されたって言ってるんです。

真意を確かめるために出頭してほしいんですよ、小鳥に。」


まさかこんなにも胸糞の悪い話が飛び出してくるとは思わなかった。


「誰が誰の婚約者だって?」


そんな大それたことを言っているのはどこの馬鹿なの?


「怒るのは無理もないですがとりあえず連れてきてください。このままだと小鳥の立場が悪くなる。」


白狼はそれだけ言うと通話を強制的に終わらせた。


スマホを握りしめたままいろいろ考えていると小鳥ちゃんが俺のその手に優しく触れた。


「蓮様、壊れちゃいますよ。

何と言われたんですか?」


小鳥ちゃんに触れられた事で怒りがほんの少しだけ和らいで別の欲求が生まれる。

小鳥ちゃんの首筋を近くで見たからだろうか。


その首に咬みつきたい。


小鳥ちゃんに怪我をさせたあの日からずっと小鳥ちゃんの血だけを求めてきた。


どんなに新鮮な血も珍しい型の血も小鳥ちゃんの血には敵わない。


小鳥ちゃんが欲しい、咬みつきたい、俺の毒で酩酊している所が見たい。


牙の疼きが耐えがたくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る