第10話 side煌牙
ヴー、ヴー、ヴー。
慌ただしく鳴るスマホに違和感を覚える。
何か緊急事態か?
庭の血を水で流してる最中だって言うのに。
スマホを見ると協会からだ。
何となく、休日出勤の匂いがするな。
「はい。」
俺が出ると…
「こちら尋問部の伊藤です。
休日のところ申し訳ありません、少し問題がありまして……。」
尋問部で問題?
尋問できないくらいの凶暴なヴァンパイアでもいるのか?
それとも、尋問対象がそれなりに血筋のいいヴァンパイアか…。
後者の予想に小鳥遊蓮が浮かんでくるのがどうしても嫌だった。
まぁいい、聞かないと始まらない。
「問題って?」
「それが…〇〇市の築40年のアパートが倒壊して、その倒壊に関わったヴァンパイアがとある人間の女性に指示されてやった事だと自供しました。それで、ここからが問題なんですが…
その女性を尋問するためハンター協会へ出頭するよう連絡を入れたらかなりの大物が出てきまして…。」
あぁ、もういい、聞きたくない、もうわかった。
「大物って小鳥遊蓮とかですか?
で、尋問対象って俺が昨晩護衛していた一宮小鳥とか?」
俺に電話がかかって来た時点でもうそういう事だよな?
「はい、おっしゃる通りです。」
ほらな、はいはいはい。
「小鳥遊蓮は何と言ってるんですか?」
「それが…出頭理由を教えろとの事で、教えた上で小鳥遊蓮様を同行者として受け入れなければ一宮小鳥を自宅から外へ出すことはないとの事です。
それから、一宮小鳥のスマホにもう一度でも連絡を入れたら、小鳥遊蓮からのハンター協会の支援は一切打ち切ると言うことでした。」
思ったよりも深刻だな。
支援を一切打ち切ると言うことは、完全決別を意味する。
正直ハンター協会はヴァンパイアの助けなしでは成り立たない。
狩るヴァンパイアの情報提供や資金援助がないと難しい場合が多いからだ。
その辺のペーペーのヴァンパイアならともかく、小鳥遊家は始祖の一族。
そのパイプを断ち切られたら問題なんて一言では片付けられない程の被害が出るだろう。
出頭内容の公開は規律違反、かと言ってこのままにしておくのもな…。
「分かりました。
この一件俺に預けてください、どうにかします。
あ、それと小鳥遊蓮の電話番号を送っておいてください。」
俺がそう言うと尋問部の伊藤とやらは安心したように言った。
「ありがとうございます、本当に助かります。
連絡先は送っておくので後はよろしくお願いします。では、失礼します。」
なるほど、丸投げな。
それから1分もしない内に小鳥遊蓮の電話番号が送られてきた。
さて、あのぶっ飛んだ野郎をどうやって説得するかな。
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