side蓮

ハンターが来ただけでも面倒なのにどうして白狼の長男が来た?

コイツにだけは小鳥ちゃんを近付けたくない。

コイツは小鳥ちゃんに好意を持ってる。

それが子供の時の物だったにしろ関係ない。


小鳥ちゃんを近づけまいとあの日釘を刺したはずなのに。

それなのにどうして?

何で小鳥ちゃんがアイツに惚れてるの?


小鳥ちゃんを見た時のアイツの目を俺は見逃さなかった。

子供の頃に一目惚れした、なんて目をしてない。アイツは完全に小鳥ちゃんに惚れてる。

同じ男だから尚のことよく分かった。


「久しぶり、小鳥。」


白狼が小鳥ちゃんの名を呼んだ瞬間、その頭をもぎ取りたい衝動に狩られた。

気安く呼ぶその声も気に食わない。


何よりも一番応えたのは小鳥ちゃんの心音だ。

白狼に名前を呼ばれた瞬間、小鳥ちゃんの心臓が一度大きく跳ねた。

その後も小鳥ちゃんの心臓は忙しなく動いている。


「お久しぶりです。」


白狼に向ける笑顔が憎くて仕方ない。

何でこうなる…絶対に認めたくない。

俺はずっとずっと、小鳥ちゃんのことが好きなのに。


「蓮様、白狼さんとは知り合いなので大丈夫ですよ。彼と行きます。」


嫌だ…嫌だ嫌だ…。


「…分かった。」


行かせたくない、二人きりになんかさせたくない、俺の方がずっと小鳥ちゃんの事好きなのに。

心の中でどす黒い何かが広がっていく。

それを表に出せば小鳥ちゃんは怖がって逃げてしまうだろう。


だから俺は食い下がる事なく小鳥ちゃんから一歩離れた。


「小鳥ちゃんがそう言うなら俺が引き止める理由はないね。」


冷静になれ、ここで少しでも俺の気持ちが悟られたら小鳥ちゃんに逃げられる。

それに最悪、気持ち悪がられるかもしれない。


「ありがとうございます、蓮様。

今度何かお礼させてください。」


「いいよ、お礼なんて。

俺たちそんな堅苦しい仲じゃないでしょ?」


俺の言葉を聞いて小鳥ちゃんが困ったように笑った。


「冗談でも嬉しいです。じゃあ…私は行きますね。今日は本当にありがとうございました。」


小鳥ちゃんは一度俺に頭を下げて白狼の元へ小走りで向かう。


いっそ…あの細い首に咬みついて、俺の毒で動けなくさせてやりたい。

俺の毒が完全に回り切って快感に喚く姿を見てみたい。

今にも手を伸ばしそうだった。




他の男の元へ向かうその背中に。

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