第4話 side小鳥
目が覚めたのは…
「ん…?」
自分のベッドの上だった。
私は自分がどうやってここへ戻ってきたのかさっぱり覚えていない。
どうしようもない不安だけがザワザワと胸を騒がす。
本当に私はどうやって戻ってきたの?
え?ちょっと待って?
蓮様と一緒にいたよね?
ピコン!
スマホの通知音がしたからスマホを見ると…
ー
おはよう
体調は大丈夫?
ー
ちょっと待ってほしい。
確かに名刺はもらったよ?
でもRINE登録した覚えが全くない。
とりあえず返信しないと…。
***
大丈夫です、ありがとうございます。
ご迷惑をかけたと思います、本当にすみません。
***
私の返信は一瞬で既読がついた。
そして、返信もすぐにくる。
***
謝らないで、昨日は本当に楽しかったから。
また行こう。
***
また行こう、その一言で舞い上がる自分がいた、私は馬鹿だ。
これ以上、蓮様に会ってもいいことなんて一つもないのに。
この人のことは今すぐにでも忘れるべきよね。
なんて返そう、きっぱりもうあなたの誘いには乗らないと言うべき?
ご馳走してもらった上に、恐らくここまで運び込んでくれた相手に失礼な断り方はしたくない。突然拒絶したらおかしく思うかもしれない。
自然にフェードアウトするのが一番かも。
***
ありがとうございます、是非。
***
これでいい。
これで誘われたら予定があると全て断ろう。
自分の心を守るためにね。
私はもう思い出したくないの。
人生で一番、一人の人を求めたあの感情を。
どんなに二日酔いが酷くても、どんなに眠たくても仕事には行かないといけない。
私は血を吐いてでも稼がないといけないから。
吐き気と倦怠感を気合いで堪えてメイクしていつものように家を出た。
そしてふと思う。
「蓮様に見られたのよね…。」
このお世辞にも綺麗と言えないボロアパートを。
蓮様にとっては信じられない光景だったかもね。
蓮様の実家の玄関よりも狭い部屋に住んでいるんだから。
子供の頃が懐かしい。
両親が生きていて、蓮様の実家の使用人をしていた頃、私はよくあの豪邸に遊びに行かせてもらっていた。
遊び相手は蓮様とたまに西園寺梨花様。
蓮様は大好きだったけど、西園寺様は嫌いだった。
西園寺様は陰湿だった。
物を壊して私のせいにしたり、蓮様がいない所で罵られたり、突き飛ばされたり、とりあえず性格は残念だった。
子供特有の強い嫉妬心だと思うけど、当時の私は西園寺様が怖かった。
そのせいもあるだろう、私が蓮様に溺れていくのに時間はかからなかった。
蓮様はずっと優しかったから。
ふと胸の傷を思い出す。
この傷のせいでいろいろ複雑になってしまったのよね。
電車に揺られながら私はあの日を思い出していた。
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