side蓮

運がいいことに、小鳥ちゃんはお酒にあまり強い訳じゃなかった。

アパートの場所はもう突き止めた。

まだまだ小鳥ちゃんの情報が足りない。


「そう言えばどうしてクラブで働いてるの?」


俺がそう聞くと小鳥ちゃんはぽやっとした表情で答えた。


「おきゅーりょーがいいんれす…

馬鹿なぎけーが作った借金を返さなきゃいけなくて。」


またかなりいい情報が飛び出してきた。


「借金ね、いくらあるの?」

「三千万くらい?だったかなぁ?」


俺はこんなにもついてていいんだろうか。


「そう、それは大変だね。」


たった三千万の端金で小鳥ちゃんを手に入れる事ができる。


それからは簡単だった。

酔いで警戒心が薄れた子から情報を引き出すのは訳ない。これだけ聞き出せたら十分かな。


「小鳥ちゃん、家まで送るよ。ほら、おいで。」


フラフラで立てない小鳥ちゃんの腕を引くとその細さに驚く。

うっかり折らないようにしないと、人間の骨は本当に脆いから。


「ん〜、蓮様ぁ…。」


小鳥ちゃんは俺の気も知らないで、俺の胸に額をそっとつけた。

小鳥ちゃんの首筋が見えた途端、強烈な飢えが俺を襲う。


普段はどこの誰が血を流そうが欲しいとは思わないけど小鳥ちゃんは別だ。


この子の血が欲しくて欲しくて堪らない。


ふとグラスに映った自分と目が合った。

首筋を見ただけでこんなにも化け物じみた姿になるなんて。俺はずっと飢えてきた。


幼い頃からずっと、小鳥ちゃんの血だけが欲しかった。

小鳥ちゃんさえいればそれでいい、そう思う日も多かったし今もそれは変わってない。


ようやく見つけた。

この俺がいくら探しても見つからなかったのには理由があるはず。

それはこれから調べていくとして、鳥籠を作らないと。


やっぱり、大切な鳥は鳥籠に入れて可愛がるのが一番だと思うから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る