13

「どーよ!」


「うんうん似合ってるよお姉ちゃん」

パシャパシャ写真を撮り続ける両親は脇に置いておいて、得意げに真新しくてちょっとブカブカしたセーラー服に身を包み、腰をフリフリしてポーズを取り続ける私。

「ぷ。お姉ちゃん、いい歳して恥ずかしぃ」

「去年のあんたのマネだよ、シノ?」

とはいえ、さすがにシノから冷静に言い返されると私もこれ以上続ける気にはなれなかった。私がはしゃいでるポーズを止めるとお父さんは残念がった……まあ、私もちょっと楽しかったけどさ?

「すっごく似合ってるよお姉ちゃん。大人っぽくてカッコイイ」

シュン君は背負っていた青いランドセルを大切そうに床におろすと、そう言った。

「ありがとう、シュン君」

シュン君の優しい励ましに思わずホロリときてしまう。

私の制服が届いて初お披露目の瞬間にたまたま居合わせたシュン君。でも少しだけ寂しそうだった。

「でも、もう一緒に学校行けないんだよね……」

「っっっ!?」

と、あまりに可愛い事を云うものだから思わず感激してシュン君を抱きしめる。

「わ!?ちょっとお姉ちゃん!?」

「大丈夫だよ!!放課後は真っすぐおうちに帰るから、ココに来ればいつでも会えるよ!」

私はシュン君の頬っぺたに顔を擦りつける。スベスベで柔らかくて温かくて気持ちいい。

「わ、わかったから。恥ずかしいよ、お姉ちゃん」

必死で私の腕の中でもがくシュン君。それでも小学生と中学生じゃ力の差は歴然で。全然抜け出せる気配がしなかった。

「か、顔が近いよお姉ちゃん……」

「もういい加減離してあげたらお姉ちゃん?」

「ちぇ」

と、私はシュン君を手放した。

「でも、これから放課後は二人で大丈夫そう?なるべく早く帰るようにするけど」

私は中学にあがってしまうので一緒に帰れなくなってしまった。部活動はしないつもりだけど、どうしても小学の低学年よりは下校時刻が遅くなってしまう。二人が心配だった。

「大丈夫だよ」

「その、危ない事はないようにするから」

「うんうん、悪いけどお願いねシュン君」

「ちょっと! シノは!!」

うん、君が一番心配なんだよ。

「うん、頼りにしてるよシノ」

すると一変して、照れくさそうに困り顔で赤らんだ。

「え、うん。ちゃんとするから。任せてよ、お姉ちゃん」

そのシノの様子を観て、私とシュン君は互いに見合わせると思わず微笑むのだった。


「ね、お姉ちゃん」

「なに?」

「ありがとう」

「どういたしまして」

「大事に使うよ」

「うん、私も嬉しい」

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