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わたしはシュン君の親に会った事がなかった。

そしてわたしがシノを迎えに行くと、いつもいた。


「リノちゃん、今日もシノちゃんのお迎え?」

「あ、はい」

シノの保育園の先生に声を掛けられた。

「いつもお姉ちゃん、偉いね」

「家族ですから」

まあ、習い事やクラブ活動とかしてる訳じゃないし、別にこれぐらい。

友達はもちろんいるけど、みんな忙しそうで放課後遊びに誘うのは気が引けるんだよね。

「ほら、シノ。帰るよ」

「んー? ちょっと待って」

昔は素直だったシノも最近は口ごたえを覚えた。わたしに待てと言う。

「お姉ちゃん、もうちょっとだけ。お願い」

と、こちらも昔よりわたしに対して図々しくなったシュン君。ただコチラは上目遣いでのお願いなのでまだ可愛げがある。

「もう。仕方ないなぁ~?」

と、わたしは二人を放置して送迎確認の用紙にわたしの名前を書き込んだ。

棚からシノの荷物を担いで戻ってくると、未だに積み木に夢中だった。

「そろそろイイ?」

「もうちょっとー」

「いつ終わるの?」

「もうちょっとなのー!」

教室の床に広々と並べられた長方形の積み木たち。

「もういいんじゃない?」

と、シュン君もようやく折れてくれた。

「もーしょうがないなー」

まだ不服そうだけどもシノも諦めてくれる。

「どっちがする?」

「シノちゃんでいいよ」

「じゃ、やるね」

そう言って、シノは一番端っこにある積み木を指先でパタンと倒した。すると、それに押し出されてパタパタと積み木が倒れていく。気持ちよくカタカタと木がかち合う音が響き続け、そして見事最後の積み木までが倒れた。

「おお、シノちゃんシュン君すごいじゃない」

と、それを観ていた保育園の先生が褒めてくれた。

「すごいすごい。最後まで倒れたじゃん」

と、わたしも称賛の声をあげる。

するとシノは得意げに満面の笑顔で胸を張り、シュン君はモジモジとはにかむのだった。

「はい! じゃあ、お片付けだね。おもちゃ箱に積み木を片づけて」

「え~~」「はーい」

文句を言ったのはシノで、返事をしたのはシュン君だった。

わたしと先生も手伝って、すぐに積み木は片付いた。

「それじゃあ、また明日ね」

「うん。じゃあねシノちゃん、お姉ちゃん」

「うん。バイバイ、シュン君」

手を振って別れの挨拶を終えると、シュン君は絵本を読み始めたのだった。

先生もシュン君が手に取った絵本を一緒に読む。

外は真っ暗だ。わたしたちの他に子供たちの姿もない。

わたしはまだシュン君の親を見かけたことがない。

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