第6話 踊り明かした夜
襖を開けてKが入って来た。
「あの……ちょっといいですか」
「ん? どうした?」
「やっぱり、他の人がいる状況でってのがダメみたいなんです」
「うんうん、それがたぶん普通だよ。気にしなくていいから、ね。綾乃もそう言ってただろ?」
「はい。ただ、ほんとは自分もしたいんです……」
亮介の頭に何かひらめくものがあったが、とりあえずKを静かに送り出す。襖の隙間からの観察を再開した。
いつの間にかMのポジションはYに代わっている。綾乃の声があまり聞こえないと思ったら、塞がっていたからだった。
D以外にも復活組が出てくる時間帯。これから先の三周目、四周目には綾乃はいったいどんな
◆
綾乃の声が聞こえる。普段より少し低いトーン。
(朝か――)
襖がいつの間にか閉められていたのは自分の
外は曇天模様なのか白み始めた外の光。爽やかな朝日でないのがその淫靡さを引き立てる。Dの上で動く綾乃。他の学生たちは帰ったようだ。
「今度は横になってみてください」
Dが綾乃をしっかりと抱きかかえながら寝かせる。
「う……うん……」
朦朧の極みにいる綾乃。眠気ゆえかそれとも――。
激しい動きの時代はとうの昔に過ぎ去り、ゆっくりと慈しむような、春の海にたゆたうような二人の今。嫉妬というよりも、綾乃をこうまでにしてくれたDに対する感謝。亮介は想像を超えたこの体験に胸を熱くしていた。
「眠いですね……」
ことを終えてDが言う。綾乃は半開きの目を更に細めて微笑む。亮介が二人の側に歩み寄り、声をかける。
「D君、ありがとう。最高の経験をさせてもらったよ」
「あたしもよ……足がガクガクで大変だけど」
「俺もです。こんなことってあるんですね……」
しばらくの間お互いに感謝の言葉を交わし、Dは帰っていった。綾乃は亮介と久しぶりに二人きりになったと思ったその瞬間、ドアノックの音がした。
「最後のデザートってとこかな。いや、ラストスパートか」
言うと亮介は立ち上がり、綾乃に布団を掛けてあげた。
「複数はどうしてもダメだったらしくてね。改めてさっき俺が呼んだんだ」
Kが綾乃の横に正座する。
「そうなのね……。いいわ、おいで」
綾乃の一言でスイッチが入る。Kは襲い掛からんばかりの勢いで綾乃に飛び込んでいく。亮介はうしろ手でそっと襖を閉めた。
綾乃と亮介 3 熟れていく妻 宿羽屋 仁 (すくわや じん) @jsrm
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